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【中山記念】シックスペンスは中山芝1800mがぴったり 血統からアルナシームも面白い

2025 2/27 06:00坂上明大
2025年中山記念の注目血統,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

傾向解説

今年で第99回を迎える伝統のGⅡ中山記念。2月の別定GⅡという、本レースを目標とする中山巧者はもとより、GⅠへ向かう強豪馬も使いやすい舞台であり、地力、適性、状態などさまざまな要素が絡み合う一戦です。本記事では血統面を中心に、中山記念のレース傾向を整理していきます。

最初に紹介したいデータは単勝オッズ別成績。先述の通り、中山記念はGⅠ馬も数多く出走するGⅡのため、適性と調子だけで好走できる重賞ではありません。過去10年では単勝オッズ20倍以上の馬が好走したのは4例しかなく、手広く押さえるべきではない重賞といえます。

単勝オッズにこだわる必要はありませんが、ある程度の地力を示していることは最低条件となります。

単勝オッズ別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<単勝オッズ別成績(過去10年)>
9.9倍以下【9-6-4-27】
勝率19.6%/連対率32.6%/複勝率41.3%/単回収率97%/複回収率76%
10.0~19.9倍【1-2-4-12】
勝率5.3%/連対率15.8%/複勝率36.8%/単回収率84%/複回収率158%
20.0~29.9倍【0-0-1-5】
勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率16.7%/単回収率0%/複回収率61%
30.0~49.9倍【0-2-1-8】
勝率0.0%/連対率18.2%/複勝率27.3%/単回収率0%/複回収率197%
50.0倍以上【0-0-0-41】
勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%

また、先行力も重要なポイント。開幕週、かつ1角までの距離が短い中山芝1800mという舞台設定のため、後方待機勢の追込みはなかなか決まりづらい傾向にあります。

単勝オッズ20倍以上で好走した4頭中3頭は初角2番手以内の先行馬で、残り1頭はイン差しの形でした。

初角番手別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<初角番手別成績(過去10年)>
5番手以内【9-6-8-32】
勝率16.4%/連対率27.3%/複勝率41.8%/単回収率94%/複回収率122%
6番手以下【1-4-2-61】
勝率1.5%/連対率7.4%/複勝率10.3%/単回収率13%/複回収率34%

血統面では、Nureyev≒Sadler's Wells=Fairy Kingに注目(いずれも父がNorthern Dancerで、母はSpecial牝系と、よく似た配合系)。ヨーロッパの主流血脈であるこれらの血は中山内回りの中距離重賞に滅法強く、本レースでも好走率、回収率ともに水準以上の成績を残しています。

特に近年は同血脈を複数本持つ馬も多く、2022年は1着馬パンサラッサがNureyev≒Sadler's Wellsの5×3、2023年は2着馬ラーグルフがSadler's Wells=Fairy Kingの4×3を持っていました。

Nureyev≒Sadler's Wells=Fairy Kingと同様に、機動力に優れたFair Trialの血を持つDanzigやLyphardのほか、同じく機動力があるBlushing Groomなどにも要注目です。

血統別成績(単勝オッズ20倍未満・過去10年),ⒸSPAIA


<血統別成績(単勝オッズ20倍未満、過去10年)>
Nureyev内包馬【3-5-5-20】
勝率9.1%/連対率24.2%/複勝率39.4%/単回収率33%/複回収率87%
Sadler's Wells内包馬【2-5-1-5】
勝率15.4%/連対率53.8%/複勝率61.5%/単回収率157%/複回収率171%
Fairy King内包馬【0-1-1-3】
勝率0.0%/連対率20.0%/複勝率40.0%/単回収率0%/複回収率118%

有力馬の血統を解説

シックスペンス
母フィンレイズラッキーチャームはダ7Fの米GⅠマディソンSの勝ち馬で、Cryptoclearanceの4×3やDanzigの4×4などが中心のスピード馬でした。

初仔の本馬も母譲りのスピードが持ち味のマイラー体型に出ています。LyphardやDanzigなどからFair Trial血脈を豊富に受け継いだ機動力型で、スプリングSを制した中山芝1800mはピッタリの舞台。素質、適性ともにメンバー中屈指の一頭です。

ソウルラッシュ
母母キャットアリの快速血統を武器にマイル路線で堅実な走りを見せるルーラーシップ産駒。苦手条件の少ない優等生タイプで、香港遠征でも4着、2着と結果を残しています。

今回は1800mへの距離延長が課題となりますが、操縦性の高さと先行有利のレース傾向を考慮すれば条件替わりはマイナスにならないでしょう。蹄底が厚く道悪の馬場が得意でもあり、雨が降った方がいい結果に繋がりそうです。

アルナシーム
母ジュベルアリは不出走馬ですが、アルアイン=シャフリヤールの全姉という超良血。モーリス産駒の本馬も母の仔らしい小柄な馬体でしたが、徐々に体を増やしつつ、気性面の課題もしっかりとクリアしてきました。

モーリス産駒は中山記念で【1-1-0-2】と好相性。本馬は立ち肩の馬体で、ピッチ走法からも中山内回りコースは得意条件のひとつです。父と母父からFair Trial血脈を増やした配合形でもあり、今年のメンバーであればある程度のポジションも取れるのではないでしょうか。

2025年中山記念の有力馬と評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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