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【共同通信杯】Sadler's Wells内包馬が単複回収率100%超え 良血馬レッドキングリーは理想の配合形

2025 2/13 06:00坂上明大
2025年共同通信杯の注目血統,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

傾向解説

過去10年の出走馬から12頭のGⅠ馬が誕生している出世レース・共同通信杯。昨年も1着馬ジャスティンミラノが皐月賞を勝ち、2着馬ジャンタルマンタルがNHKマイルCを制した。今後のGⅠ戦線に向けても大注目の一戦です。本記事では血統面を中心に、共同通信杯のレース傾向を整理していきます。

最初に紹介したいポイントはノーザンファーム生産馬が強いということ。同週に行われるクイーンCでも目下9連覇中という圧倒的な成績を挙げていますが、共同通信杯においてもノーザンファーム生産馬の勢いは止まりません。毎年、紛れの少ない東京開催のステップレースに照準を合わせてくる傾向にあり、ノーザンファームグループの素質馬にはいつも以上に注意が必要です。

ノーザンファーム生産馬の成績,ⒸSPAIA


<ノーザンファーム生産馬の成績(過去10年)>
該当馬【6-6-6-22】
勝率15.0%/連対率30.0%/複勝率45.0%/単回収率100%/複回収率102%

血統面ではサンデーサイレンス系の産駒が中心。東京芝1800mという直線勝負になりやすい日本の主流条件のひとつのため、日本の主流血統が中心という血統傾向は当然の結果でしょう。

該当馬も多いため全体での成績は水準よりやや上といった程度ですが、力が足りない可能性が高い単勝オッズ50倍以上を除けば、回収率ベースでも非常に優秀な成績となっています。何より過去10年の3着内馬30頭中19頭がサンデーサイレンス系の産駒ですから、曾孫世代に変わりつつある現在においても中心の血統であることは間違いありません。

父サンデーサイレンス系の成績,ⒸSPAIA


<父サンデーサイレンス系の成績(過去10年、単勝オッズ49.9倍以下)>
該当馬【6-6-6-25】
勝率14.0%/連対率27.9%/複勝率41.9%/単回収率108%/複回収率115%

ただ、細かく見るとSadler's Wells=Fairy KingやNureyevといった欧州の主流血脈の好走も目立つのが本レースの大きな特徴です。3頭の種牡馬はいずれもNorthern DancerとSpecial牝系という血統構成で、Sadler's WellsとFairy Kingは全兄弟、Sadler's Wells=Fairy KingとNureyevは3/4同血という間柄です。

特に5番人気以下の好走馬は9頭中8頭が同血脈を内包しており、唯一同血脈を持たない2016年5番人気2着馬イモータルは母父にドイツの名種牡馬Acatenangoを持っていました。日本の主流系統であるサンデーサイレンス系を中心としつつも、Sadler's Wells=Fairy King≒Nureyevなどの欧州の主流血脈で底力を補うような配合形が本レースの最適血統といえるでしょう。

Sadler's Wells=Fairy King≒Nureyevの成績,ⒸSPAIA


<血統別成績(過去10年)>
Sadler's Wells内包馬【4-3-3-17】
勝率14.8%/連対率25.9%/複勝率37.0%/単回収率146%/複回収率109%
Fairy King内包馬【1-0-0-1】
勝率50.0%/連対率50.0%/複勝率50.0%/単回収率680%/複回収率195%
Nureyev内包馬【3-5-5-35】
勝率6.3%/連対率16.7%/複勝率27.1%/単回収率53%/複回収率126%

有力馬の血統解説

・レッドキングリー
母レッドエルザはGⅠ・6勝馬English Channel(2006年WRターフクラシック、2006、07年ユナイテッドネーションズS、ジョーハーシュターフクラシック招待S、2007年BCターフ)の全妹。競走馬としては未勝利に終わりましたが、Smart Strike産駒の牝馬は繁殖牝馬としても優秀で、レッドエルザ自身も2020年日経新春杯2着馬レッドレオンやオープン馬レッドアステルなど複数の活躍馬を輩出しています。

サートゥルナーリア産駒の本馬は柔軟でバネの利いたフットワークで走る瞬発力型で、東京芝1800mは得意コースのひとつ。サンデーサイレンス父系ではありませんが、日本血統+Nureyev≒Sadler's Wellsの血統要件をしっかりと満たす好配合馬です。

・マスカレードボール
母母ビハインドザマスクは芝1200~1600m重賞3勝馬で、母マスクオフはLyphardの4×4を持つ機動力型ディープインパクト産駒。本馬の3/4同血の姉には秋華賞2着馬マスクトディーヴァ(2023年ローズS、2024年阪神牝馬S)がおり、ドゥラメンテを父に配した本馬も立ち肩かつ柔軟性に優れた馬体で、高い将来性を感じさせる素質馬です。

ただ、現状は気性面での難しさがあり、コーナリングにも課題あり。姉同様に本当に良くなるのは3歳秋以降になりそうです。

・サトノカルナバル
母リアリサトリスは2002年ジャンプラ賞勝ち馬Rouvresの半妹で、本馬の全兄には2023年洛陽S勝ち馬ジャスティンスカイがいます。本馬はミオスタチン遺伝子がCC型(短距離向き)であると公表されており、芝1200mの函館2歳Sを制して現3歳世代最初の重賞勝ち馬となりました。

ただ、父譲りのフレームサイズを考慮するとベストは1600m前後。キタサンブラック+Number≒Nureyevを持つ配合形でもあり、距離不安が囁かれるなら配当妙味に期待できそうな素質馬です。

2025年共同通信杯の有力馬と評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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