「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【プロキオンS回顧】サンデーファンデーが絶妙なペースで後続封じる 不利な形で脚力示したサンライズジパング

2025 1/27 10:48勝木淳
2025年プロキオンステークス、レース結果,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

音無秀孝厩舎の管理馬でワンツーフィニッシュ

解散まであと少し。音無秀孝厩舎がみせた。サンデーファンデー、サンライズジパングのワンツーフィニッシュで自身最後の中京開催を締めた。中京競馬場は2006年にオレハマッテルゼで厩舎初のGⅠ制覇した高松宮記念の舞台。思い出の中京、その最後の重賞を勝ち、厩舎のラストスパートに勢いをつけた。

勝ったサンデーファンデーは昨秋シリウスS、暮れのベテルギウスSと出走し、プロキオンSで冬の大三角を完成させたメンバー唯一の馬。プロキオンSが冬に移された初年の勝ち馬にふさわしかった。

これまで4コーナーを先頭で回ると、【1-1-0-0】。勝利した前走ベテルギウスSでは4角2番手から抜け出したが、今回の対戦メンバーを踏まえれば、逃げが最善手。それだけに1枠1番は気になるところだった。行くしかない状況だが、行けなかったら揉まれてしまいかねない。

だが、鞍上に迷いはなかった。ポイントになるスタートを決め、すぐ外の馬と接触する場面がありつつも、先手主張。好位確保を狙いたいライバルが多く、労せずハナへ立てた。そうなると、序盤はゆったり入れる。遅いと感じても競りかけてこない。2番手オメガギネスは人気を背負っており、後ろにサンライズジパングがいる以上、そうそう前をつぶしにはいけない。

3ハロン目で12.7とペースダウン。コーナーを利用した巧みな押し引きで後続をハメていった。3コーナー入り口の下りからじわりとペースアップするも、オメガギネスやディープリボーンのプレッシャーが厳しくなかったのも助かった。急かされることなく、自分のリズムを守れれば、逃げ馬は簡単には止まらない。

まして、中京ダート1800mは外を回ってしまうと、よほどの脚力やハイペースでないと届かない。1000m通過は1:01.3。前身となる東海S(中京開催時)でこれより遅かったのは過去5回で、逃げ3勝、番手1勝と前優位。逆にこれより速いと差し優位に流れは動く。速すぎず、遅すぎず。サンデーファンデーが刻んだペースは絶妙だった。


父の父ジャイアンツコーズウェイの適性

父スズカコーズウェイはすでに種牡馬を引退している。これまで出世頭はオープン2勝のスズカコーズラインで、総じて産駒はダート1200、1400mのイメージが強いが、1800m(芝・ダ)も【11-7-7-53】勝率14.1%と成績はいい。

これはその父ジャイアンツコーズウェイの影響だろう。1400~2000mのGⅠを勝ち、産駒には日本で繋養されているブリックスアンドモルタルやエスケンデレヤ(24年死亡)がいる。距離の幅もあり、芝もダートも問わない懐の深い種牡馬だった。日本特有の瞬発力戦に苦戦したが、ダート中距離での先行競馬はそれを打ち消してくれる。

サンデーファンデーも決して器用なタイプではなく、今後はかなりマークがきつくなるため、狙いづらくはなるが、この手の逃げ馬は忘れた頃に怖い。優先出走権を獲得したフェブラリーS(※出走するかは未定)は、先手をとるにはペースが速すぎるかもしれないが、それも相手関係による。テンに速い馬が不在で、マイル向きではないと軽視されるなら、逃げ残りも頭に入れたい。


またも3着ドゥラエレーデ

2着サンライズジパングはさすが重賞2勝の実績馬といっていい。サンデーファンデーのマイペースで進む展開は、外を回ってしまっては完全にアウトの競馬。そんななか、外を回って伸びてきた。敗れはしたが、脚力の違いは証明できた。

まだ気性面で芯が入っておらず、馬群に入れての競馬など、どんな形でも流れに乗れないところがあり、自分の形で進めざるを得ない。そうなると、今回のような不利な形になってしまい、勝ちきれなくなってしまう。やはりダート中距離の頂上クラスに挑むなら、その辺の改善は必要だろう。

現状は「外目で気分よく」が条件であり、枠順や流れなど予想する側も気をつかわないといけない。だが、そんな状況でもこれだけやれるのは力の証。本格化したときが楽しみで、調教ではその兆候もある。レモンポップ引退後の王者なきダート界だけに、本格化が待たれる一頭で、王者候補であることは揺らがない。中京ダートで外から猛追する姿に確信をもった。

3着ドゥラエレーデはチャンピオンズC2年連続3着に続き、ここも3着。今回は好位で進められただけに、もう少しなんとかならなかったのかと感じる。どう立ち回っても3着となると、適性の有無など評価はかえって難しい。未だにどんなコースが得意なのかイマイチつかめない。ミステリアスな魅力を感じつつも、勝てる舞台はどこなのか見つからないのはしんどい。相手なりタイプで馬券的に頼れるものの、陣営にとっては勝利がほしい。

2番人気オメガギネスは7着。展開を考えれば、あっさり負けてしまった。間隔を詰めるとよくないため、今回は間をあけてきたが、振るわなかった。スピードを試されるコースがよさそうで、フェブラリーSの東京ダートマイルは合いそうだが、中3週と今回の結果を考えると、難しそう。だからこそ、その裏をかくのもありか。昨年フェブラリーSは1番人気に推されており、今年は人気薄だが、昨年1番人気だったなんて常套句も浮かぶ。

2025年プロキオンステークス、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。

《関連記事》
【プロキオンS】結果/払戻
【シルクロードS】ビッグシーザー、ウインカーネリアンに割引データ ピューロマジックは京都なら一変
【根岸S】「前走カペラS2着以内」は連対率60.0% データで有力なのはクロジシジョーやフリームファクシら