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【AJCC】本命は能力値上位のダノンデサイル、調教本数も豊富で上積み期待 穴馬はチャックネイトとエヒト

2025 1/25 17:30山崎エリカ
2025年AJCCのPP指数,ⒸSPAIA

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逃げ~中団までが有利な舞台

過去のアメリカジョッキークラブカップを振り返ってみると、タフな馬場でネコパンチが大逃げした2013年こそハイペースが発生しているが、それ以降でハイペースになったことは一度もない。多くは極端なスローペースで決着している。

これは前半で急坂を上るコース形態によるものが大きく、基本的にペースが上がりにくい。このため過去10年では逃げ~中団が9勝。2着は先行~好位5回、差し追込5回。展開上は前に行く馬が有利だが、馬場の内側が悪化することで、外からの差し追込が浮上することもある。

ただし、今年に関しては馬場の内側がそこまで悪化していないので、中団より前が有利と見て予想したい。


能力値1~5位の紹介

2025年AJCCのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 レーベンスティール】
昨年はエプソムCとオールカマーを連勝。エプソムCでは6番枠からまずまずのスタートを切り、コントロールして好位の中目を追走。道中もペースは緩まなかったがそのままの位置を維持し、3角でワンテンポ待ってから外の馬を行かせ、その後ろから進出を開始する。

4角出口でラケマーダの外に誘導し、中団で直線へ。序盤で軽く肩鞭が入るとすっと伸び始め、ラスト2Fでは一気に先頭付近まで上がり、ラスト1Fでそのまま抜け出して2馬身差で完勝した。

エプソムCは東京開催16日目、Cコース使用6日目で馬場の内側が悪化しており、外差し有利の馬場。最後の直線は馬場の良い外を走らせていたとはいえ、コースレコードが出るほどの緩みない流れを、前半で位置を取りに行って完勝したことは評価できる。

2走前のオールカマーは4番枠からまずまずのスタートを切り、コントロールして好位の中目を追走。2角までは掛かっており、道中は折り合いに専念する形で進めた。

3角で前にスペースを作り、4角出口でスピードに乗せて3列目まで上がる。直線序盤でそのまま内に切り込んで3番手に上がったが、前のアウスヴァールが壁になった。ラスト1Fでも進路がなかったが、残り100mで外のリカンカブールを押しのけて進路を作ると、半馬身抜け出し先頭でゴールした。

最後の直線でスムーズに進路が作れていればもっと楽に勝っていたと見ているが、3角でスペースを作り、4角出口から上手くスペースを潰して捌いており、致命的なロスではなかった。

それよりも、ここは2着が逃げたアウスヴァール(10番人気)、3着が2番手のリカンカブール(12番人気)だったように、異様な高速馬場で前有利な展開。折り合いに専念しながらも、前から離されない位置でレースを進めた鞍上の判断は正しかったと見ている。

前走の天皇賞(秋)は休養明け好走後となる、疲れ残りの一戦。かなりのスローペースで前有利の展開を14番枠からやや出遅れ、内の馬と少し接触して中団やや後方からの追走に。2角でダノンベルーガが躓いた余波で外に出され、3~4角で外を回るロスを作る形になってしまったが、ラスト2Fでは追われても伸びを欠いていた。

今回はそこから立て直され、巻き返しを期する一戦。ここも2走前のようにアウスヴァールが逃げる可能性が高く、スローが予想される。

ある程度前の位置で進めたいところではあるが、前走で行きっぷりが良くなかった点がやや不安。また当時よりも相手が強くなることから過信は禁物だが、警戒は必要な馬である。

【能力値2位 ダノンデサイル】
昨年の日本ダービー馬。ダービーでは5番枠からますまずのスタートを切り、軽く押してハナへ行く素振りを見せながらの先行策。最終的には外のエコロヴァルツを行かせて2列目の最内を追走した。

道中はかなりのスローだったが、3角手前でサンライズアースが捲ってきたことで一気にペースアップ。3~4角で外を回るロスがあった馬たちが苦戦するなか、最短距離を通し、直線序盤ではエコロヴァルツの内からすっと伸びる。ラスト2Fで捌いて1馬身ほど前に出ると、ラスト1Fで抜け出して2馬身差で完勝した。

ダービーは内と前が有利な展開。ここは上手く立ち回っての好走だった。これは出遅れて中団中目からの追走となった3着シンエンペラーが後にジャパンCでも2着に入るなど、3~4角で外を回った馬たちのその後の活躍ぶりが証明している。

前走の有馬記念は3着。1番枠から五分のスタートだったが、二の脚で外のベラジオオペラを制してハナを主張。スタンド前でペースを落とし、向正面でじわっとペースを引き上げ、3角から後続を引き離しにかかった。

2番手ベラジオオペラとの差を1馬身に広げて直線へ。序盤で同馬との差はやや広げたが、ラスト1Fで甘くなり、外からレガレイラとシャフリヤールに差されてハナ+1馬身半差だった。

有馬記念当日は向正面が追い風、スタンド前は向かい風の強風。ただでさえ逃げ切るのが難しい状況下だったが、さすがに向正面からの仕掛けは早すぎた。まして本馬はこれまで逃げ経験がなかったことを考えると、この3着は実りある内容だったと見ている。

ただし、前年の有馬記念からここに直行するのはレース間隔が短く、危険なローテーション。前年の有馬記念で3着に善戦し、ここで1番人気に支持された2015年のゴールドシップを含め、過去10年で8頭が出走しすべて馬券圏外に敗れている。

ダノンデサイルも当初はここに出走する予定がなかったが、ここに出走してくるのは菊花賞が馬体重18kg増の太目残りでの出走となり、有馬記念でも馬体がほとんど絞れていなかったからのよう。

菊花賞は成長分を加味しても重く、昨秋の2戦は日本ダービーほどの指数では走れていない。そのうえでこの中間の調教量が豊富なだけに、まだ余力があると見て本命に推す。

【能力値3位 ボーンディスウェイ】
2走前に東京芝2000mで行われたオクトーバーS(L)の覇者。ここでは6番枠からまずまずのスタートを切り、押してハナ争いに加わったが、最終的には内外の2頭を行かせ、3番手で様子をうかがう形。道中でもペースが落ちなかったので3番手外を維持した。

3~4角でペースが落ちると、外からじわっと仕掛けて4角で2番手に上がり、逃げ馬と1馬身1/4差で直線へ。直線序盤で先頭に立ち、ラスト2Fで追われるとしぶとく伸び、ラスト1Fでややリードを広げて1馬身3/4差で完勝した。

2走前は超高速馬場かつ逃げ先行馬がわりと手薄だったこともあって本命にしていたが、前後半5Fが58秒3-59秒1と想定よりもワンランクペースが速かった中でもがんばり抜いた。

3走前の七夕賞では、前半3F33秒6という短距離戦のような展開の中でかなり押して先行し、3番手で進めた本馬にとって、前走の中山金杯程度のハイペースは何の問題もなかったのだろう。最後の直線ではずっと左手前のままで走っていた。

2走前が本格化を感じさせる内容だっただけに、前走の中山金杯でも狙ったが、ここでは3着。ホウオウビスケッツにプレッシャーをかけられてオーバーペースで逃げるクリスマスパレードらに2列目の外から食らいついていったため、最後に甘さを見せてしまった。

それでも、ラスト1Fでクリスマスパレードを捉え切り、先行馬では最先着を果たしたのは地力があればこそだ。ただし、前走がハイペースで2走前以上に消耗度の高いレースとなっているだけに、ここでさらなる前進を見せるかどうかは微妙だ。

【能力値4位 アラタ】
2023年の巴賞を勝利した馬。同レースでは2番枠から好スタートを切り、促して好位の内を確保。道中は前3頭が飛ばして行く展開を、やや離れた4列目の最内で進めた。

3~4角で前のスペースを潰して前3頭を追いかけ、4角で中目から外に誘導して直線へ。直線序盤で3列目からしぶとく伸びたが、前もしぶとくまだ3列目。ラスト1Fでも伸び続け、先頭のドーブネを捉え切って3/4差で勝利した。

ここでは上手く3~4角の最内を通しての勝利だったが、レースが平均ペースで流れた中で、中山記念で3着、2着の実績があるドーブネを撃破したことは評価できる。

ただし、今回は休養明けの前走・福島記念で初重賞制覇を達成した後の一戦となる。前走は時計の掛かる馬場でかなりのハイペース。6番枠からやや出遅れ、押しても進んでいかずに後方2番手を追走。3角で中目から大外に誘導し、4角ではロスを作ったが、中団勢が動くのを待ってから仕掛ける、展開に恵まれての勝利だった。

今回は休養明けで好走した疲れが懸念される一戦。また、今回は前走のようなハイペースになることが考えにくい。後方からでは苦しい競馬になると見ている。

【能力値5位タイ ボルドグフーシュ】
2022年の有馬記念2着馬。同レースでは3番枠から出遅れ後方からの追走に。スタンド前でも後方2列目の内で進め、向正面でペースが上がってもそのままの位置で我慢させた。

3角手前で外に誘導し、大外から一気に仕掛けて押し上げていく形。2列目付近まで上がり、イクイノックスの後ろから直線へ。序盤でもまだ2列目の外だったが、ラスト1Fでしぶとく2番手に上がり、イクイノックスから2馬身半差でゴールした。

本馬は菊花賞でもかなりのハイペースを後方から徐々に進出し、4角で強引に外に出して2着に善戦しているように、前半から前に行く脚がないステイヤー。ここ3戦はかつてのような出遅れ癖を見せていないが、芝2200mでもまだ追走が忙しい。

時計の掛かる馬場かつハイペースだった前走・チャレンジCのように上がりの掛かる展開になれば、ひと叩きされて善戦するパターンも考えられるが、今回は平均よりも遅いペースで決着すると見て評価を下げたい。

【能力値5位タイ ディープモンスター】
稍重の発表以上にタフな馬場だった2023年のアンドロメダS(L/京都芝2000m)を勝利した馬。ここでは大外16番枠からますまずのスタートを切ったが、前に壁が作れずかなり掛かりながら好位直後の外を追走した。

向正面で馬群の中に入れてからは折り合いがつき、中団中目で3角へ。4角出口で外に誘導すると、外から上がったテーオーソラネルの後ろで直線を迎える。序盤でじわじわ伸びて好位列まで上がり、ラスト1Fで一気に突き抜けて半馬身差で勝利した。

ここでは外枠が響いて前半は折り合いに苦労していたが、ハイペースになったことで前が甘くなり、差し切る形に。このように本馬も上がりの掛かる展開が向いている。

前走のチャレンジCもハイペースを中団中目から3~4角で外に誘導し、外から押し上げたボルドグフーシュの後ろから追い上げて2着。ここも上がりの掛かる展開だった。

本馬は中距離向きではあるが、ボルドグフーシュと同様にハイペースでこそのタイプで、ここは展開が向かない可能性が高い。くわえて、前走で能力を出し切った後の一戦であることから余力の面でも不安がある。


侮れないチャックネイトとエヒト

【チャックネイト】
ノド鳴り手術や去勢手術を乗り越え右肩上がりで上昇し、不良馬場で行われた昨年のAJCCを優勝した馬。同レースでは11番枠からまずまずのスタートだったが、思い切った先行策で2列目の外まで進出した。

道中は2番手ショウナンバシットの後ろで進め、3~4角でペースが上がっても前2頭に離されずについていく形。4角では前2頭の外に誘導して鞭が入り、外から上がったボッケリーニに併せて3列目で直線へ。

直線序盤では一旦ボッケリーニに先頭を譲り3番手争いとなったが、ラスト1Fで甘くなった馬たちをかわし、最後にボッケリーニを差し返してハナ差で勝利した。

重馬場の6走前・六社Sで3勝クラスを突破しているように、道悪が得意で最後までしぶとく伸び続けるスタミナがある。本馬は不良馬場でラスト1F13秒1も要した消耗度の高いAJCCで能力を出し切ったことでその後はスランプに陥ったが、立て直されていれば得意舞台のここで巻き返しがあっても不思議ない。

重馬場や不良馬場がベストの馬だが、現在の中山芝も標準レベルまで時計を要しており、許容範囲だろう。超高速馬場だった5走前のアルゼンチン共和国杯でも中団中目から最後の直線で外に誘導し、伸び始めは地味ながらもしぶとく伸び3着に善戦しており、復調さえしていれば上位争いに加わってくると見る。

【エヒト】
6走前、一昨年の小倉記念を完勝して重賞2勝目を挙げた馬。その時は3番枠から出遅れたが、かなり押して内目のスペースを拾って好位まで挽回した。

道中は前のマリアエレーナが外に行ってくれたので、その内のスペースを拾って3角を迎える。3~4角で最短距離を通しながら仕掛けて前のスペースを詰め切り、スピードに乗せて4角出口でひとつ外へ。直線序盤で先頭のテーオーシリウスにクビ差まで迫り、ラスト1Fで同馬を突き放して2馬身半差で完勝した。

ここでは完璧に乗られてはいたが、本馬は初重賞制覇となった2022年の七夕賞しかり、3角までに好位やその直後辺りの位置を取った時は毎回のように好走している。ここも好位を取れた時点で勝ち負けが約束されたようなレースだった。

前走の中日新聞杯はスタミナが不足する長期休養明け。12番枠からかなり押してハイペースで逃げるデシエルトの2番手と、同馬を追いかけすぎたために9着に失速してしまった。しかし、ひと叩きされたことで息持ちが良くなるはず。

また、本馬はゲートに甘さがある馬だが、前走では五分のスタートを切って、比較的スムーズに先行していた点も好感が持てる。ここも上手く先行できれば上位争いに加われていい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)レーベンスティールの前走指数「-19」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.0秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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