内面に課題残すメイショウタバル
2025年1月19日に中京競馬場で開催された日経新春杯はロードデルレイが待望の重賞初制覇。軽い競馬のイメージから脱却したことで、いよいよGⅠ挑戦の機運が高まる。
今年の中心は昨年クラシックに出走した4歳勢と、出走が叶わなかった上がり馬ヴェローチェエラ。新春のGⅡらしく、2025年の活躍への期待を込めて4歳が人気に推された。
そこに割って入ったのが5歳ロードデルレイ。昨年1月の白富士Sを好時計で快勝、中距離戦線での飛躍を予感させたが、好走の反動もあり春は全休。6月の鳴尾記念で出直しとなったが、そこで競走除外になり再び休養へ。
それでも、復帰後はオープン、重賞2着と再始動に成功。結果として1年間回り道をすることになったが、これが競馬の難しさ。サラブレッドは決して人間が描いた絵の通りにならない。何度も仕切り直しになった分、精神的に逞しくなったように映る。
以前は高速決着の軽い競馬向きだったが、日経新春杯は上がり600m37.4と時計を要し、全体的にタフな競馬になり、芯の強さがないと最後に伸びてこられなかった。ロードデルレイの変貌ぶりはすなわち、進化の証だ。
展開のカギを握ったのは4歳メイショウタバル。菊花賞で揉まれる競馬になり、リズムを乱してしまった。有馬記念への出走が叶わず、仕切り直しのここはどんな逃げの手に出るか注目を集めた。
ラップを並べると、残り800mまで12.2-11.0-11.3-11.8-11.4-11.2-11.4。先行争いを制した序盤600m34.5はまだしも、そこからペースを落とせず800m通過後から再上昇。向正面で11.4-11.2-11.4と飛ばし、当然ながら先行勢は追いかけず、大逃げの形になった。
もちろん、後ろを引き離していくのはメイショウタバルのリズムではあるが、それにしても中盤が速すぎた。加速ラップを描いてしまう点に課題がみえる。同じ飛ばす形であっても、精神的な余裕がほしい。
内面が能力発揮を阻む状況に進展なく、陣営もかなり工夫して調整しているが、なかなか結果としてあらわれない。さぞもどかしいだろう。
役者が違ったロードデルレイ
前半1000m通過が57.7で、1200m通過が68.9では直線失速もやむなし。しかし、いくら離れた逃げ馬とはいえ同舞台でGⅡを勝っており、放っておくわけにもいかない。最下位サンライズアースら先行勢には苛烈なレースになった。
後半800mは12.1-12.2-12.7-12.5で、中団より前は末脚を使える状況になかった。それだけに中団から真っ先にメイショウタバルをとらえたロードデルレイは強い。
残り400mでも止まらず、追い込んだショウナンラプンタを寄せつけることなく3馬身差だから、役者が一枚違った。消耗戦に対応し快勝したことで、着実に成長した跡を示した。反動さえ出なければ、今年こそ飛躍の年になる。
母デルフィーノはいかにもその父ハーツクライらしい戦歴だった。東京や新潟で好走するわりに瞬発力勝負でもろい。持続力勝負を勝ち切るところがあり、ここにきて母のよさが出てきた印象がある。とにかく無事に春戦線を乗り切ってほしい。中距離戦線は主役なき状況。ロードデルレイが一気に頂点に立つチャンスはある。
天皇賞(春)もみえたショウナンラプンタ
2着ショウナンラプンタは4歳勢で唯一圏内にきた。青葉賞2着、神戸新聞杯3着と中距離のトライアルであと一歩足りないのは、いかにもステイヤーっぽい。
菊花賞では4コーナーで押し上げ、粘り強く走り長距離への適性を示した。今回も前が速すぎて、追い込むにはスタミナを問われたことが好走を呼んだ。天皇賞(春)での狙いが立った。中距離ではなく、長距離を選択してほしい。
3着マイネルエンペラーも、ゴールドシップ産駒特有の持続力が、急流で上がりを要する競馬にマッチした。
直線では後ろからきたヴェローチェエラと併せる形になり、脚色は劣勢に映ったが、坂を上がってから逆転。ゴールまでつかまりそうでつかまらなかった。残り200mでみせた粘り腰にスタミナを感じる。終始インを立ち回って抜け出したように器用さもあり、混戦向き。GⅠでは地力の差が出そうだが、GⅢやGⅡの長距離戦なら通用しそうだ。
4着の1番人気ヴェローチェエラは上位3頭と比べると、中距離寄りの適性を感じる。
比叡Sで先着したマイネルエンペラーに振り切られ、最後はスタミナで劣った。とはいえ、厳しい展開だったことを考えれば、昇級でも一定の感触はつかめた。ここまで上がりがかかる競馬でなければ、逆転の目はみえる。今回のような競馬になるのは稀であり、巻き返しの機会はすぐ来るだろう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
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