傾向解説
フェアリーSの舞台である中山芝1600mは、上級条件が行われるマイルコースでは唯一直線距離が短く、さらに前半は下り坂が続くことからハイペース戦になりやすい点も大きな特徴です。そのため、多くの中山マイル重賞はハイペース戦に強い血統馬の活躍が目立ち、逆にディープインパクト系などの主流血統馬が持ち味を発揮しづらい舞台でもあります。
しかし、3歳牝馬限定重賞であるフェアリーSでは古馬重賞のような激流になることは少なく、後傾ラップを刻むことも少なくありません。そのため、芝中長距離に強い主流血統馬も能力を発揮しやすく、さらに2~3歳牝馬路線は「1500m以下で戦ってきた馬」より「1600m以上で戦ってきた馬」が優勢になる傾向にあります。フェアリーSでも前走1600m以上から臨戦してきた馬が優秀な成績をあげています。
<前走距離別成績(過去10年)>
~1500m【1-3-4-45】
勝率1.9%/連対率7.5%/複勝率15.1%/単回収率10%/複回収率53%
1600m【8-4-5-70】
勝率9.2%/連対率13.8%/複勝率19.5%/単回収率168%/複回収率72%
1700m~【1-3-1-13】
勝率5.6%/連対率22.2%/複勝率27.8%/単回収率39%/複回収率128%
血統面でも前述の通り日本の主流血統馬の活躍が目立ち、その代表格が大種牡馬ディープインパクトです。直仔がいなくなった近年も後継種牡馬や繁殖牝馬の仔が多数好走しており、一昨年には該当馬が上位独占し、三連単51万7,430円の波乱を演出しました。
また、Kingmamboの血を持つ好走馬も多く、2015年11番人気1着のノットフォーマル(父ヴァーミリアン)や2017年10番人気1着のライジングリーズン(母父キングカメハメハ)など穴馬の好走も多数あります。特にディープインパクトの血を併せ持つ馬は5頭中3頭が馬券圏内に好走しており、フェアリーSでは大注目の二大血統といえるでしょう。
<血統別成績(過去10年)>
ディープインパクト内包馬【4-2-4-19】
勝率13.8%/連対率20.7%/複勝率34.5%/単回収率187%/複回収率141%
Kingmambo内包馬【3-4-4-30】
勝率7.3%/連対率17.1%/複勝率26.8%/単回収率190%/複回収率106%
有力馬の血統解説
・ジャルディニエ
母ヘアキティーはダート7Fの米3歳GⅠラブレアSの優勝馬。アドマイヤマーズ産駒の本馬も父母譲りの仕上がりが早いマイラーで、若駒時からマイル前後でのスピード勝負に対応できる資質を備えています。Tom Fool血脈を豊富に持つ馬らしいピッチ走法で、俊敏性が求められる中山コースもピッタリ。前走以上のパフォーマンスに期待したい一頭です。
・ミーントゥビー
タップダンスシチーなどが出るMiss Carmie牝系に属し、リアルインパクト×フジキセキの本馬はスピード強化型の短距離馬。牡馬ならマイルまで守備範囲ですが、牝馬なら1400m以下がベターではないでしょうか。ディープインパクト系リアルインパクト産駒ではありますが、本質的にはもっと短い距離でスピードを生かす競馬が合うでしょう。
・ニシノラヴァンダ
母プルージャはダート1600mの亜GⅡ勝ち馬。半兄エルゲルージもダート1400~1800mで4勝を挙げており、サトノアラジン産駒の本馬も立ち繋ぎ(つなぎ:球節から蹄の間の部分)の芝ダート兼用のマルチランナーに出ています。芝ならソフトな馬場の方が合いそうで、距離も1200m前後がベター。ディープインパクト系サトノアラジン産駒ではありますが、中山芝1600mへの条件替わりはプラス材料とは言えません。
・レイユール
母レイカーラは2014年マイルCS優勝馬ダノンシャークの半妹。本馬はディープインパクト系のキズナ産駒で、3/4同血の姉にはシンリョクカ(2024年新潟記念の優勝馬)がおり、ディープインパクト+フランス牝系らしい末脚が持ち味の主流血統馬です。将来的にはマイルから中距離の大箱コースが得意条件になりそうですが、ディープインパクト系×Kingmambo系はフェアリーSの血統傾向にピッタリでしょう。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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