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2024年下半期のGⅠデータまとめ レガレイラやフォーエバーヤング、シンエンペラーら3歳馬が古馬相手に躍動

2024年下半期、JRA・古馬混合GⅠの主なデータ,ⒸSPAIA
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盛り上がりを見せた2024年の秋GⅠ

年内最後のJRA・GⅠホープフルSをクロワデュノールが制し、2024年の中央競馬が幕を閉じた。3歳三冠のフィナーレ、ドウデュースが中心となった秋古馬三冠路線など、今年も白熱のレースが繰り広げられた。今後さらなる活躍が期待されるスターホースも出現し、来年以降にも楽しみが広がるところだ。

今回のコラムでは下半期のJRA・GⅠ計13レース(中山大障害含む)と地方JpnⅠやGⅠ、海外GⅠを振り返る。まずはJRA・GⅠから古馬混合戦について振り返っていく。

先行馬や3歳馬が活躍

まずは古馬混合GⅠ・9レースについて確認する。

2024年下半期のJRA・古馬混合GⅠデータ,ⒸSPAIA



<2024年下半期のJRA・古馬混合GⅠ 主なデータ>
4角3番手以内【4-2-3-16】
勝率16.0%/連対率24.0%/複勝率36.0%/単回収率204%/複回収率172%
前走1番人気×前走5着以下【3-0-2-5】
勝率30.0%/連対率30.0%/複勝率50.0%/単回収率432%/複回収率175%
3歳世代【1-1-1-5】
勝率12.5%/連対率25.0%/複勝率37.5%/単回収率136%/複回収率125%
ルメール騎手【0-0-0-7】
勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
※中山大障害含む

パンサラッサやタイトルホルダーといった厳しいペースを刻む「強い逃げ馬」たちがターフを去ったことで、GⅠでもスローペースのレースが増加。天皇賞(秋)とジャパンCを制したドウデュースは別格として、展開に恵まれた先行馬たちの活躍が目立った。

データ上でも4角3番手以内の馬は単回収率204%、複回収率172%とプラス。天皇賞(秋)のホウオウビスケッツやジャパンCのシンエンペラー、ドゥレッツァなどが穴を開けた。

来年以降もこの傾向が続くのか。その鍵を握る一頭が、今年逃げて重賞2勝をあげたメイショウタバルだろう。同馬は年明けの日経新春杯から始動予定。来年のGⅠ戦線を占う上で、この馬の動向はしっかりチェックしておきたい。

今年は前走で人気を裏切ってしまった実力馬たちの「逆襲」も多く見られた。スプリンターズSのルガル(前走高松宮記念1番人気10着)や天皇賞(秋)のドウデュース(前走宝塚記念1番人気6着)、有馬記念のレガレイラ(前走エリザベス女王杯1番人気5着)などが該当する。

上位人気に推されることは実力の証明であり、1度の敗北くらいで見放してはならない。この秋GⅠでは、前走5着以下の馬が複勝回収率106%とプラス域。前走1番人気×前走5着以下だと【3-0-2-5】で単回収率432%、複回収率175%と大幅なプラスを叩き出していた。

また、今年も3歳馬の活躍が目立った。ダービー1着ダノンデサイルは有馬記念3着、同3着シンエンペラーはジャパンC2着、同5着レガレイラは有馬記念1着と、ダービーで上位に好走した馬が次々と古馬GⅠでも好走。ハイレベルなレースだったと見ていいだろう。

皐月賞馬でダービー2着のジャスティンミラノは引退してしまったが、4着サンライズアースは年明けの日経新春杯で復帰予定。ダービー上位組の今後に要注目だ。

中山大障害はニシノデイジーが2年ぶり2回目の制覇。同舞台でオジュウチョウサンに勝利した実力を発揮し、終わってみれば5馬身差の圧勝だった。ニシノデイジーは先日、現役引退と種牡馬入りを発表。種牡馬としてニシノフラワーやセイウンスカイの血を未来に繋いで欲しい。

最後に、昨年の古馬GⅠで無類の強さを見せたC.ルメール騎手についても触れておく。なんと今年は馬券内0という衝撃的な結果に終わった。不利や大外枠など不運があったことは確かだが、7レース中5レースで3番人気以内だったことを考えると、物足りない成績だったと言える。

来年以降の飛躍へ 若駒たちの決戦

次に世代限定GⅠ・5レースを振り返る。3歳三冠最終戦は、牡牝ともにルメール騎手が制覇した。

秋華賞では桜花賞馬ステレンボッシュとオークス馬チェルヴィニアが二冠をかけて激突。レースは1000m通過57.1のハイペースを道中7~8番手で進めたチェルヴィニアが直線で力強く抜け出し、二冠目を奪取した。また後方から猛然と追い込み、2着だったのはボンドガール。「伝説の新馬戦」と同じワンツーで今年の牝馬三冠路線は幕を閉じた。

ダノンデサイルが2冠に挑んだ菊花賞。逃げると予想されていたメイショウタバルが逃げず、レースは道中で次々と先頭が目まぐるしく入れ替わる難解な展開となった。

そんな中でも、勝ったアーバンシックに騎乗していたルメール騎手は冷静だった。向正面でジワッとポジションを上げ、4コーナーではいつの間にか3番手。最後の直線では持ち前の末脚を発揮して、2着ヘデントールに2馬身半差をつけた。

一方、ダービー馬ダノンデサイルは道中でポジションを落とし、最後の直線で猛然と追い込むも6着。不利があり不完全燃焼な結果に終わった。しかし、暮れの有馬記念では積極的な逃げで3着に巻き返している。

2歳女王決定戦・阪神JFはアルマヴェローチェが制し、岩田望来騎手は61回目の挑戦で初のJRA・GⅠ制覇となった。1着アルマヴェローチェ、2着ビップデイジー、3着テリオスララの3頭はいずれも前走からの距離短縮組。例年以上に体力勝負のタフなレースだったと言える。

朝日杯FSで2歳マイル王の座に就いたのはアドマイヤズーム。これで同レース通算4勝目となる「朝日杯の鬼」川田騎手に導かれ、前走の未勝利勝ちから一気にGⅠ馬へと駆け上った。

1着アドマイヤズーム、2着ミュージアムマイル、3着ランスオブカオスは全頭が内枠かつ前走が京都コース。内を立ち回る器用さと京都経験が重要となった一戦であった。また、3着ランスオブカオスに騎乗した吉村誠之助騎手は、初のGⅠ騎乗で馬券に絡むという快挙を達成。これからの活躍に大いに期待したい。

阪神で開催されていた2歳マイルGⅠの前記2レースは今年、京都で行われた。例年は活躍が目立つアルテミスSやサウジアラビアRCといった東京好走組が揃って馬券外に敗れた背景にはその影響もあったか。

来年の桜花賞は阪神マイルでの施行となる。今回敗れた前走東京組がそこで巻き返してくる可能性は十分考えられる。

最後に2歳中距離王決定戦、ホープフルSはクロワデュノールが制した。デビューからコンビを組む北村友一騎手はクロノジェネシスで制した2020年の有馬記念以来、実に4年ぶりのGⅠ制覇。大ケガを乗り越えて掴んだ久々の勲章、レース後の涙のインタビューは感動を呼んだ。

クロワデュノールは新馬戦、東京スポーツ杯2歳S、ホープフルSと無傷の3連勝。これは2020年の三冠馬コントレイルと全く同じ歩みである。来年のクラシック戦線はこの馬を巡る争いとなるのは間違いない。

なお、キタサンブラック産駒は2023年にソールオリエンスが皐月賞を制しているものの、牝馬も含めてクラシックのタイトルはそれが唯一となっている。ダービーはイクイノックスとソールオリエンスの2着が最高成績。産駒初のダービー馬となるか、こちらも注目を集めそうだ。

今年は海外GⅠ勝利なし 日本馬の挑戦は続く

最後に地方、海外のビッグレースについても触れておく。

今年から新設されたJpnIジャパンダートクラシックを制したのはフォーエバーヤング。走破タイム2:04.1は昨年の東京大賞典や今年の帝王賞を2秒以上も上回る破格のタイムだった。

レース自体もハイレベルで、フォーエバーヤングは次走BCクラシック3着、同3着サンライズジパングは次走みやこSを勝利、同2着ミッキーファイトと同5着シンメデージーは名古屋大賞典で1着、3着と好走した。

マイルCS南部杯を勝ったのはレモンポップ。最後の直線では今年のフェブラリーS勝ち馬ペプチドナイルとの一騎打ちに勝利。3着以下に5馬身差をつけ、国内ダートマイル最強を証明した。

初の佐賀開催となった今年のJBC(JBC2歳優駿のみ門別)。JBCレディスクラシックは3歳馬アンモシエラが4馬身差の圧勝。牝馬ながら羽田盃2着、東京ダービー3着と牡馬相手に堂々渡り合ってきた実力を示した。

JBCスプリントはタガノビューティーが悲願のJpnI初制覇。3歳馬チカッパとの激戦をハナ差で制して古馬の貫禄を見せた。

そして、JBCクラシックはウィルソンテソーロがJpnI初勝利をあげ、鞍上の川田将雅騎手は故郷に錦を飾った。滅多に感情を表に出さない川田騎手が、勝利インタビューで見せた涙。佐賀でのJBCにかけていた思いの強さが伝わる名場面だった。

暮れの大一番・東京大賞典はフォーエバーヤングが勝利。単勝1.3倍の圧倒的支持に応え「世代最強」から「国内最強」を証明した。

また、2着こそ国内で抜群の安定感が光る古馬のウィルソンテソーロだったが、3着にはジャパンダートクラシックで4着だった3歳馬のラムジェットが入り、改めて3歳世代の強さが際立つ結果となった。

下半期の海外GⅠへの挑戦は、ドゥレッツァのインターナショナルS5着からスタート。翌月のアイリッシュチャンピオンSではシンエンペラーが3着に入る快挙を達成した。この2頭は後にジャパンCで2着同着。世界を相手に戦った経験が国内でも生きた形だ。

その後、シンエンペラーは凱旋門賞に挑戦。20年の覇者ソットサスの全弟であり、血統的な期待は大きかったが、不良馬場や外枠に泣き12着と大敗した。シンエンペラーは来春も海外遠征を予定。来年も同馬の挑戦が楽しみだ。

アメリカで開催されたブリーダーズカップには、総勢18頭もの日本馬が出走(BCディスタフに出走予定だったオーサムリザルトは出走取消に)。BCクラシックでは、フォーエバーヤングが内枠から先行する厳しい競馬になりながら3着に好走した。同馬はまだ3歳。これからの成長、そしてリベンジに期待したい。

BCターフに挑んだローシャムパークは、春のドバイシーマクラシック勝ち馬レベルスロマンスをクビ差まで追い詰め、大金星まであと一歩だった。

12月の香港国際競走4レースにも、多くの日本馬が出走。結果は2着2回、3着3回と勝利にあと一歩届かなかった。

香港ヴァーズでは、スローペースで大外を回す苦しい競馬になったステレンボッシュが3着。香港スプリントでは、新たなる怪物カーインライジングにサトノレーヴが喰らいつき3着と健闘した。

香港マイルでは、ソウルラッシュが猛然と追い込み2着。香港カップは絶対王者ロマンチックウォリアーが3連覇を達成したなか、リバティアイランドが2着、3着にはタスティエーラが食い込んだ。

今回の香港では、前走の秋GⅠで1番人気を裏切っていたサトノレーヴやリバティアイランドが復調気配を見せる好走。この2頭が来年どのような走りを見せてくれるか楽しみだ。

そして、この香港国際競走の結果をもって、2024年の日本馬の海外GⅠ未勝利が確定。上記で紹介した以外にも、ワープスピードのメルボルンC2着やプログノーシスのコックスプレート2着など惜しい競馬が続いており、決して日本馬のレベルが下がったわけではない。来年以降の海外遠征にも注目だ。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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