波乱イメージも実際は
福島の重賞は年間4つ。かつては秋にカブトヤマ記念があったが、廃止され、春の福島牝馬Sが新たに組まれた。カブトヤマ記念は父内国産限定芝1800m。もうこんな条件を目にすることはない。俗にいうマル父は2008年に廃止され、条件戦からも消えた。最後の父内国産限定重賞は2007年中日新聞杯。最後の勝ち馬はステイゴールド産駒のサンライズマックスだった。
秋のカブトヤマ記念は02年が最後。アンバーシャダイの仔カンファーベストが降着になり、メジロライアン産駒のウインブレイズが優勝。同馬は次走福島記念も勝ち、引退後は2013年まで福島競馬場の誘導馬として愛された。ウインブレイズが福島記念を勝ってから22年。あの秋に生まれた子どもはまもなく大学を卒業する年齢だという。時の流れは早い。データは過去10年分を使用する。
1番人気【1-3-4-2】勝率10.0%、複勝率80.0%、2番人気【4-0-1-5】勝率40.0%、複勝率50.0%と続き、3番人気以内は6勝。5~7番人気が3勝しており、GⅠの裏にあるハンデ重賞らしく波乱のイメージも、上位人気の成績を考えると、必ずしも波乱前提というわけでもない。8、9番人気はそれぞれ【0-0-0-10】だが、比較的どこからでも入れるレースだ。
秋のローカルハンデ重賞とあって、5歳【2-1-3-38】勝率4.5%、複勝率13.6%などベテラン勢が出走馬の中心を担う。だからこそ数こそ少ないが、3歳【2-1-1-10】勝率14.3%、複勝率28.6%、4歳【3-3-1-13】勝率15.0%、複勝率35.0%と若い世代は注目に値する。
サラブレッドは残り2カ月で一斉に年齢を重ねる。上り調子の若い馬は積極的に狙う季節だろう。
ドクタードリトルは小回り対応がカギ
3歳はシリウスコルト、4歳はドクタードリトルの名前がある。オクトーバーS2、3着ギャラクシーナイト、サトノエルドールが相手なら、十分に戦える。
斤量の傾向をみると、前走から斤量が減った馬は【7-6-4-69】勝率8.1%、複勝率19.8%とポイントになる。だが、前走ハンデ戦から斤量減は【0-0-0-6】。重賞では明らかに力が劣るとみられるからだろうか。
ただし、前走重賞の斤量減は【4-4-2-23】。ハンデ重賞からでないかぎり、重賞経由の斤量減はマークしよう。さらに前走非ハンデ戦GⅡで斤量減は【3-4-1-12】勝率15.0%、複勝率40.0%。格上の別定戦からきて、斤量減は好走の合図といっていい。
57kgで京都大賞典に出走し、6着だったドクタードリトルはライバルとの力関係から据え置きもあるかもしれないが、斤量が減るなら狙いだ。前走小倉記念で54kgだったシリウスコルトは9着に敗れたとはいえ、斤量減は考えにくい。ハンデ重賞経由は斤量減でなければ問題ないので、混同しないようにしよう。
前走距離では同距離【2-3-7-58】勝率2.9%、複勝率17.1%と頼りないが、3着7回なので2000m出走馬を軽視すると馬券はとれない。アタマで狙うのは前走2000m超からの短縮【4-5-2-25】勝率11.1%、複勝率30.6%だろうか。特に前走GⅡで距離短縮は【3-3-2-15】勝率13.0%、複勝率34.8%と上昇する。
該当するのはドクタードリトル。京都大賞典ではディープボンドが早めに動き、我慢比べになった。後半800mは11.9-11.5-11.7-11.8。ドクタードリトルは目立った脚を使えなかったが、昇級初戦であり致し方なし。広いコースに良績があるだけに、小回り対応がカギとなる。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
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