悩ましいレガレイラの取捨
秋は世代交代の季節だ。天皇賞(秋)はドウデュースが手放しかけた王座を取り戻し、頂点に返り咲いたが、ここから先、11月以降は山から吹きつける冷たい風のように世代交代の流れが強まってくる。そのひとつの要因が三冠を終えた3歳馬たちの去就だ。当然、4歳だって黙っていないが、ここに斤量面で優位な3歳が入り、一層、若い世代の勢いが増す。
今年のエリザベス女王杯にはスタニングローズの名こそあるが、GⅠ級は極めて少なく、3歳レガレイラが注目の的となる。ホープフルSから皐月賞、ダービーといばらの道をくぐり抜けてきた。だが、ローズSでは単勝1.7倍で5着敗退。行きっぷりが悪く、ゴール寸前でようやくエンジンがかかった。休み明けだからなのか、春の激戦が尾を引いているのか。世代交代の象徴として飛びつきたくなるところだが、はたしていいのだろうか。
秋の牝馬は難しい。かつて波乱上等だったエリザベス女王杯。今年はひと昔前のそんな香りさえ漂う。以降は過去10年分のデータを使用して分析していく。なお、20~22年は阪神開催だったので、注意したい。
1番人気【2-2-2-4】勝率20.0%、複勝率60.0%も、2番人気は【0-0-1-9】複勝率10.0%と頼りない。一方で3番人気は【4-0-3-3】勝率40.0%、複勝率70.0%。堅いか荒れるか、どっちつかず。7番人気【0-2-0-8】複勝率20.0%以下も好走馬が出ており、簡単には終わらない。
注目の3歳は【2-3-3-26】勝率5.9%、複勝率23.5%と案外伸びない。馬券圏内だった8頭のうち、6頭は前走秋華賞組。残りはローズS2着から勝ったブレイディヴェーグとオークス勝利以来で3着だったラヴズオンリーユーだ。
レガレイラもローズSから秋華賞をスキップし、ここへというローテは前例もあり、悪くないが、ローズS5着がどうにも引っかかる。さして強くないメンバーとはいえ、世代限定戦で見せ場をつくれなかったことはどう影響するだろうか。
ハイレベルだった府中牝馬S
今年、主軸を形成するのは府中牝馬S組。2着シンティレーション以下7頭が登録した。牡馬を向こうにまわし、新潟記念を制したシンリョクカ、GⅠ馬スタニングローズなど、古馬勢にも脈ありの馬は多い。
前走クラス別成績は極端で、GⅠ【1-3-5-24】勝率3.0%、複勝率27.3%、GⅡ【9-8-3-64】勝率10.7%、複勝率23.8%に対し、それ以外は【0-0-1-53】。さすがにGⅠレースとしての格を感じる結果だ。
前走レース別では府中牝馬Sが【4-6-2-38】勝率8.0%、複勝率24.0%と頭数も多く、さすがに前哨戦といった感じだ。凡走も多く、絞りにくいが、3着以内は【3-3-1-14】。ただ、5着【0-2-1-3】など負けた組から巻き返す馬もいて、ややこしい。
また、府中牝馬Sが休み明け初戦だった馬は【4-2-2-31】勝率10.3%、複勝率20.5%。このうち3着以内は【3-1-1-11】、5~9着は【1-1-1-8】。始動戦と割り切っていた馬も怖い。休み明けで府中牝馬Sに出走し、9着以内となると、5着ルージュリナージュが該当する。春のヴィクトリアマイルでも5着。東京専用なので、京都に替わって着順をあげるイメージが湧かなく、なんともいえないが、データ合致はこの馬だけ。二桁着順だったライラックやハーパーまで頭に入れないといけないだろうか。
今年の府中牝馬Sは前半1000m通過58.7。12.7-10.9-11.5-11.8-11.8と進み、後半も11.9-11.7-11.4-11.0と毎日王冠を凌駕するハイレベルなラップ構成だった。後方から追い込んだルージュリナージュも混戦向きの末脚に魅力を感じるものの、前で流れに乗って大敗したハーパー、ライラックは流れが向かなかった。ハーパーは昨年3着、ライラックは阪神だった2年前2着、昨年4着。どちらも2200m替わりでパフォーマンスをあげてくる。
他路線では、前走が牡馬相手の重賞だった場合【4-2-3-35】勝率9.1%、複勝率20.5%。GⅢに限ると【0-0-1-7】と厳しい成績であり、新潟記念を勝ったシンリョクカに飛びついていいか迷うが、牡馬相手の重賞で3着以内なら【3-2-3-10】勝率16.7%、複勝率44.4%、GⅢでも【0-0-1-0】。メンバーレベルを考えると、シンリョクカも評価しないといけないのではないか。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
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