GⅠで休み明けの馬は走るのか?
今週末は東京芝2000mでGⅠ・天皇賞(秋)が開催される。三冠牝馬のリバティアイランド、GⅠ・3勝馬ドウデュース、C.ルメール騎手とのコンビでGⅠ獲りに挑むレーベンスティールなど、秋の盾をかけた伝統の一戦に豪華メンバーが集結した。
なかでもリバティアイランドは前走のドバイシーマクラシックから約7ヶ月ぶりの実戦となる。ここで「GⅠにおいて、休み明けの馬は好走するのか」という疑問が生じる。
かつて、休み明けは割引要素だったが、最近は数ヶ月の休養からGⅠへ直行するケースが増えてきた。この背景には外厩の発展など、仕上げ技術の向上がある。
そこで今回は、「GⅠで休み明けの馬は本当に好走するのか?」をテーマにデータ分析を行う。なお、本記事での休み明けの定義は、「前走からの間隔が中16週以上(=約4ヶ月)」とする(参照するデータは2019年1月1日〜2024年10月20日のGⅠレース)。
休み明けは割引にならない!
<GⅠレース 出走間隔別成績>
中15週以内【127-133-134-1824】
勝率5.7%/連対率11.7%/複勝率17.8%/単回収率62%/複回収率68%
中16週以上【19-14-11-105】
勝率12.8%/連対率22.1%/複勝率29.5%/単回収率90%/複回収率59%
「GⅠで休み明けの馬は本当に好走するのか?」この疑問の答えを探すべく、この章では「中15週以内」の馬と「中16週以上」の馬の成績を比較する。
結論から述べると休み明けの馬はGⅠで好走する。上記のように、中16週以上の馬は、中15週以内の馬に比べて、勝率、連対率、複勝率で上回り、単回収率も高い。
ここ2年は特に休み明けの馬の活躍が顕著で、2023年【3-5-2-15】複勝率40.0%、2024年【3-1-1-11】同31.3%となっている。休み明けはもうトレンドといっていい。
冒頭でも述べた通り、外厩や調教技術の発展により、休み明けでも高いパフォーマンスを発揮しやすくなった。休み明けはもはや減点材料ではなく、フレッシュな状態でレースに挑めるという点で加点材料なのだ。
前走GⅠ組が圧倒的
<中16週以上でGⅠに出走した馬 前走クラス別成績>
前走GⅠ【18-12-10-62】
勝率17.6%/連対率29.4%/複勝率39.2%/単回収率119%/複回収率76%
前走GⅡ【0-1-1-6】
勝率0.0%/連対率12.5%/複勝率25.0%/単回収率0%/複回収率66%
前走GⅢ【1-0-0-18】
勝率5.3%/連対率5.3%/複勝率5.3%/単回収率64%/複回収率12%
前走海外【0-0-0-11】
勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単回収率0%/複回収率0%
この章ではGⅠの休み明けの馬たちについて、もう少し詳しく見ていく。
まずは前走クラス別の成績について。やはり前走GⅠ組が圧倒的な成績を残している。複勝率は40%近くあり、単回収率は119%と妙味も十分だ。
休み明けかつ前走GⅡ、GⅢで馬券に絡んだのは、19年大阪杯のワグネリアン、21年大阪杯のレイパパレ、22年皐月賞のイクイノックスの3頭のみ。レイパパレとイクイノックスは年の瀬のGⅢ、GⅡで賞金を積み、年明け初戦のGⅠで馬券に絡むというパターンだった。なお、秋競馬では好走馬がいない。
また、前走が海外のレースだった馬は1頭も馬券に絡んでいない。現状は国内GⅠに限られる点に注意だ。
<中16週以上でGⅠに出走した馬 前走GⅠ組の着順別成績>
前走1着【7-4-3-4】
勝率38.9%/連対率61.1%/複勝率77.8%/単回収率75%/複回収率109%
前走2着【5-1-4-9】
勝率26.3%/連対率31.6%/複勝率52.6%/単回収率108%/複回収率75%
前走3着【2-6-1-6】
勝率13.3%/連対率53.3%/複勝率60.0%/単回収率56%/複回収率110%
前走4〜9着【2-0-2-22】
勝率7.7%/連対率7.7%/複勝率15.4%/単回収率13%/複回収率39%
前走10着以下【2-1-0-20】
勝率8.7%/連対率13.0%/複勝率13.0%/単回収率330%/複回収率73%
前走GⅠ組のなかでも好成績を残しているのはどんな馬なのか。ここでは前走GⅠ組の前走着順に注目して分析していく。
やはり前走GⅠで馬券に絡んだ馬たちの成績は良好だ。【14-11-8-19】複勝率63.5%、複回収率97%と非常に高水準である。特に前走GⅠを勝った馬の信頼度は頭ひとつ抜けていて、複勝率は77.8%となっている。複回収率は109%とプラス域で、3連複の軸には最適だ。一方、単回収率は75%で100%を下回っているため、単勝で狙う場合はよく検討した方がよさそうだ。
前走4〜9着馬の成績は低調。基本的には前走で馬券に絡んだ馬を中心に狙っていく方がいい。ただし、前走10着以下の馬は単回収率350%でプラス域となる。この条件でGⅠを勝利した馬は、21年安田記念のダノンキングリーと24年スプリンターズSのルガル。この2頭には「GⅠで1番人気に支持された」という共通点があった。
「GⅠで1番人気に支持された経験あり」×「前走GⅠで10着以下」×「休み明けでGⅠに出走」した馬の成績は【2-1-0-4】。GⅠで1番人気に推されるほどの実力馬が適性から外れた条件を使われるなどの理由で大敗し、人気を落としている場合は狙い目ということだろう。今週の天皇賞(秋)ではジャスティンパレスがこの条件に該当している。
<中16週以上でGⅠに出走した馬 前走GⅠ組の「プラス条件」>
牝馬限定GⅠ×前走3着以内【8-4-4-5】
勝率38.1%/連対率57.1%/複勝率76.2%/単回収率143%/複回収率113%
国枝栄厩舎【5-1-1-2】
勝率55.6%/連対率66.7%/複勝率77.8%/単回収率195%/複回収率112%
ドゥラメンテ産駒【3-1-2-1】
勝率42.9%/連対率57.1%/複勝率85.7%/単回収率445%/複回収率202%
ここでは、「休み明けにGⅠ出走」かつ「前走GⅠ」の馬の「プラス条件」をいくつか紹介する。
まずは「今回牝馬限定GⅠに出走」×「前走3着以内」。単複の回収率はともに100%を超えている。これは「阪神JF→桜花賞」や「オークス→秋華賞」といった直行ローテで結果を残す馬が増えたことが関係している。今年の桜花賞ではステレンボッシュとアスコリピチェーノが、秋華賞ではステレンボッシュとチェルヴィニアが休み明けで馬券に絡んだ。
「休み明けに強い調教師」についてもピックアップする。勝利数トップは国枝栄調教師。成績は【5-1-1-2】勝率55.6%、単回収率195%と素晴らしい成績を残している。5勝のうち3勝はアーモンドアイだが、その時の経験が21年秋華賞のアカイトリノムスメや24年桜花賞のステレンボッシュに生きている。
ほか、木村哲也調教師は【3-0-0-2】勝率60.0%、単回収率124%、杉山晴紀調教師は【2-1-0-0】連対率100%。リバティアイランドを管理する中内田充正調教師は【2-1-0-4】複勝率42.9%、複回収率67%とまずまずだ。
最後は種牡馬別の成績について。休み明けかつGⅠのドゥラメンテ産駒は妙味十分。【3-1-2-1】で単回収率445%、複回収率202%となっている。その他、ディープインパクト産駒【4-5-3-21】勝率12.1%、単回収率183%やエピファネイア産駒【3-0-1-2】勝率50.0%、単回収率151%が好成績となっている。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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