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【天皇賞(秋)】武豊騎手とエアグルーヴが達成した17年ぶりの偉業 伝統の秋盾を「記録」で振り返る

2024 10/21 17:00緒方きしん
天皇賞(秋)の記録,ⒸSPAIA
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エアグルーヴが17年ぶりの牝馬V

今週は天皇賞(秋)が開催される。1937年からはじまったとされる伝統の一戦で、マイル路線から長距離路線の幅広いメンバーが2000mという距離で激突。実力馬同士が火花を散らすレースになりやすく、ここ10年では1番人気が7勝と人気決着も多い一戦だ。ここでは1986年以降のデータを使用して当レースを振り返る。

低配当となった馬連オッズをランキング化すると、3位が2000年(1着テイエムオペラオー、2着メイショウドトウ)の4.9倍、2位が2021年(1着エフフォーリア、2着コントレイル)の3.9倍、1位が1997年(1着エアグルーヴ、2着バブルガムフェロー)の2.9倍となる。

3位から見ていく。テイエムオペラオーは2000年にGⅠ・5勝を含む8連勝を達成。その6連勝目が天皇賞(秋)だった。同世代からはナリタトップロード、ロサードなどが出走し、他にもステイゴールド、イーグルカフェなどがいる豪華メンバーのなか、2着に2馬身半差をつける快勝をおさめた。

2位の2021年は馬連3.9倍にもかかわらず、実は1・2番人気の決着ではない。1番人気コントレイル、2番人気グランアレグリア、3番人気エフフォーリアという人気順となっており、3→1番人気での決着だった。3番人気までが単勝3倍台、4番人気のカレンブーケドールは19.6倍という完全なる「三強」の構図。結局、2番人気グランアレグリアも3着に食い込み、三連複のオッズは3.5倍と期間内で最も低い記録となっている。

1位の1997年は牝馬のエアグルーヴが優勝。前年にオークスを制した実力馬が古馬となってマーメイドS、札幌記念と連勝。天皇賞(秋)では2番人気に支持された。そのエアグルーヴをおさえて1番人気となったのが、前年覇者のバブルガムフェロー。前年は毎日王冠3着→天皇賞(秋)1着という流れだったが、この年は前哨戦の毎日王冠を勝利する万全の体制で、単勝1.5倍という支持を集めた。

皐月賞馬ジェニュインをはじめ、サイレンススズカやロイヤルタッチなど強豪が集結するなか、レースは上位人気2頭によるデッドヒートに。好位からメンバー中2位となる上がり3ハロン35.1の末脚を繰り出したバブルガムフェローを、同最速34.7をマークしたエアグルーヴがクビ差で撃破。3着ジェニュインとの着差は5馬身ということからも、強者2頭による見事な決着だったと言える。

17年ぶりとなる牝馬による天皇賞(秋)制覇を成し遂げたエアグルーヴは、同年の年度代表馬にも選出された。これも1971年のトウメイ以来、26年ぶりという偉業であった。

また、引退後は数々の名馬を輩出。産駒にはアドマイヤグルーヴやフォゲッタブル、ルーラーシップ、グルヴェイグらがいて、さらに孫やひ孫にはドゥラメンテ、ジュンライトボルト、レッドモンレーヴ、ローシャムパーク、グルーヴィット、アンドヴァラナウトと多くの重賞馬たちが並ぶ。

種牡馬となったドゥラメンテやルーラーシップの産駒まで含めると、数えきれないほどの活躍馬にエアグルーヴの血が流れている。そんな名牝が衝撃的な強さを示した一戦が、1997年の天皇賞(秋)だった。

現役レジェンド2人による最多勝争い

古くは保田隆芳騎手が7勝をあげている天皇賞(秋)。1986年以降では、複数勝利をあげている騎手はほとんどおらず、騎手勝利数をランキングすると3位タイは2勝。O.ペリエ騎手、岡部幸雄騎手、柴田善臣騎手の3人となる。

柴田善騎手は1993年にヤマニンゼファーで1勝目をあげ、サイレンススズカに悲劇が起こった1998年はオフサイドトラップで2勝目をあげている。また、岡部騎手は2002年、ペリエ騎手は2003年に、それぞれシンボリクリスエスとのコンビで天皇賞(秋)を制した。

勝利数ランキングのツートップが3位に大きく差をつけており、2位のC.ルメール騎手が5勝、1位の武豊騎手は6勝と、現役レジェンド2人によるマッチレースとなっている。

ルメール騎手の当レース初勝利は、レイデオロとコンビを組んだ2018年。以降、アーモンドアイ(2019、20年)、イクイノックス(2022、23年)で勝利を挙げ、ここ6年間で5勝の固め打ち。敵なしと言っていいほどの好成績だ。

勝利数トップの武豊騎手は、1989年にスーパークリークで制してからもコンスタントに勝利をあげてきた。上述した1997年エアグルーヴでの勝利ほか、スペシャルウィーク(1999年)、メイショウサムソン(2007年)、ウオッカ(2008年)、キタサンブラック(2017年)と、名馬とともに歴史を築き上げている。

また、調教師の勝利数も見ていくと、期間内で2位タイとなるのが国枝栄調教師や池江泰寿調教師、白井寿昭調教師、木村哲也調教師などの2勝。そして1位は藤沢和雄調教師の6勝となっている。

藤沢師は先述したバブルガムフェローやシンボリクリスエス、レイデオロなどで勝利。2002年から2004年にかけて3連勝を記録しており、またペリエ騎手やルメール騎手の起用も印象に残る。

今年も武豊騎手はドウデュース、ルメール騎手はレーベンスティールとそれぞれ有力馬を確保。今秋のGⅠ戦線では、秋華賞で1着ルメール騎手・2着武豊騎手、菊花賞は1着ルメール騎手・3着武豊騎手とどちらも好成績を残している。天皇賞(秋)の舞台でも、レジェンド2人による上位争いとなるのだろうか──。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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