リバティアイランドVSドウデュース
変則的なコース設計の東京芝2000mは他場のコーナー4回のコースとは異なる。序盤の攻防に難しさを残しつつ、向正面に入ってからはスピードの持続力がなければ乗り切れない。コーナーで緩む場面は少なく、終盤まで一定のラップで進み、そして最後はもっとも速い脚を繰り出さないと勝てない。息を入れるというより、息を続けるイメージに近く、マイルの感覚に近い2000m戦だ。
舞台が現在の芝2000mに変わった1984年以降、中山で行われた2002年を除き、39回で5歳馬は14勝。対して4歳は20勝をあげた(※2000年以前の馬齢も満年齢表記で集計)。このうち該当年に未勝利だった5歳馬はヤエノムテキ、エイシンフラッシュの2頭だけだ。たとえ5歳であっても、2000mの天皇賞を勝つには充実を示していないと難しい。
しかし、上記2頭は皐月賞、ダービーを制したクラシックホースで、ドウデュースとの共通点はある。クラシックホースの5歳時の優勝は、ほかにダイワメジャー、キタサンブラック、アーモンドアイと5頭。まだまだ活力は衰えない。
対して19勝を挙げる4歳馬のうちクラシックホースはミスターシービーをはじめスーパークリーク、エアグルーヴ、スペシャルウィークなど10頭。牝馬4勝はエアグルーヴ(オークス)、ウオッカ(ダービー)、ブエナビスタ(桜花賞、オークス)、アーモンドアイ(牝馬三冠)。4歳牝馬の勝ち馬はすべてクラシックホースからとなっている。
リバティアイランドとドウデュースの2頭を比べると、歴史上はリバティアイランドに分がある。また、4歳牡馬は16勝のうち6勝がクラシックホース。タスティエーラ、ソールオリエンスも意地を見せてほしい。以降のデータは過去10年分を使用する。
1番人気【7-1-1-1】勝率70.0%、複勝率90.0%が強力で、勝ち馬はすべて5番人気以内。近年はそう狂いはない。1番人気のうち、4歳【2-1-0-1】、5歳【4-0-0-0】。下馬評ではリバティアイランドが1番人気になりそうだが、馬券を買う側がドウデュースを上と見立てた場合、勝率100%データに当てはまる。脂がのった4歳実績馬より上に評価される5歳は強い。最終的な人気には注目だ。
年齢のデータでは4歳【3-6-4-31】勝率6.8%、複勝率29.5%、5歳【5-4-4-36】勝率10.2%、複勝率26.5%と複勝率は互角も勝率は若干、5歳が上だ。マイル感覚に近い2000m戦とはいえ、5歳の底力は侮れない。
リバティアイランドの気になるデータ
クラシックを制していない馬もレーベンスティール、ベラジオオペラ、ダノンベルーガ、ジャスティンパレス、ノースブリッジなど多彩。さすがは天皇賞。3歳ジャスティンミラノの名こそないが、絢爛豪華だ。
前走クラスを見ると、前走国内GⅠは【6-7-4-19】勝率16.7%、複勝率47.2%。トライアルを経由しない流れは古馬も同じ。しかし、前走海外は【0-0-0-5】で春シーズンの遠征から時間をかけて立て直すという臨戦過程は結果が出ていない。ドバイから約7カ月ぶりの出走となるリバティアイランドには気になるデータだ。最近ではルガルが約半年の休み明けからスプリンターズSを制しており、一概にはいえないところだが、長期休養明け、ぶっつけのGⅠで一発回答は簡単ではない。
前走GⅠの内訳はマイルに近い2000mという見立ての通り、前走安田記念が【2-2-1-3】勝率25.0%、複勝率62.5%と強い。ただし、今年は不在。ダービー組もいないので、前走宝塚記念【2-3-2-11】勝率11.1%、複勝率38.9%に注目。着順内訳は1、3着馬【1-2-1-2】(2着馬出走なし)、6~9着【1-1-0-1】。6着ドウデュースにとって悲観材料ではない。
ドウデュースは良馬場以外だとフランス遠征を含め、【0-0-0-3】、良馬場は【6-1-1-3】。後者で複勝圏を外したのは昨年の天皇賞(秋)、ジャパンCとドバイターフだけ。4歳秋以降に集まっているのは気になるものの、良馬場で迎えられれば、不安はなさそうだ。
宝塚記念2着ソールオリエンスは対照的で良馬場以外【1-1-0-1】、良馬場【2-2-1-2】。重馬場のGⅠで1、2着と道悪巧者であり、天候悪化で急浮上しそうだ。この2頭は馬場状態によって、どちらかが好走するというイメージでいい。
前走GⅡ組は札幌記念【1-2-1-17】勝率4.8%、複勝率19.0%から確認していく。2着以内なら【1-2-1-3】で、年齢的には苦しいが、6歳ノースブリッジは甘くみてはいけない。3代母モガミヒメはローレルゲレイロ、ディープボンドが出た牝系で、年齢を重ねても活力は落ちない。ノースブリッジも札幌記念で完成した印象がある。
毎日王冠【1-1-4-34】勝率2.5%、複勝率15.0%は1着【0-0-0-3】、2、3着【1-0-3-7】。逃げて2着に粘ったホウオウビスケッツは展開のカギを握る。オールカマーは【1-0-0-17】で中山から東京替わりでつながりは薄い。勝ったのは18年レイデオロ。オールカマーと連勝を飾った。
レーベンスティールには厳しいデータだが、東京では鮮やかだったエプソムC勝ちがある。走破時計は1:44.7。セントライト記念、オールカマー2:11.4、2:11.8で速い時計は苦にしない。母の父トウカイテイオー、その父シンボリルドルフは天皇賞(秋)を勝てなかった。昭和の因縁が令和に甦る。勝って断ち切ることができるか。中高年の競馬ファンにはたまらない。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
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