傾向解説
3歳牡馬クラシック最終戦の菊花賞。2021~22年は阪神競馬場での開催となりましたが、舞台設定よりも全馬が経験のない「3000mへの大幅距離延長」の方が適性面での影響力ははるかに大きく、結果に直結する要素だったのではないでしょうか。本記事では血統面を中心に、菊花賞のレース傾向を整理していきます。
超長距離戦で重要なのは馬体重。牡馬クラシックレース別に、3着内馬の平均馬体重を比較すると、皐月賞>日本ダービー>菊花賞の順となり、成長分も加味すると数字以上に菊花賞の好走馬が小さいことがわかります。人間の短距離ランナーとマラソンランナーの体格を見てもわかる通り、長い距離を走るうえで過剰な筋肉は重荷でしかありません。
もちろん、フレームが大きければ馬体重は重くなるため一概に馬体重だけで判断できるものではありませんが、筋肉量が少なく低燃費な馬体に注目することは長距離適性を測るうえで重要なヒントになるのではないでしょうか。
※牡馬クラシックにおけるレース別3着内馬の平均馬体重(2014~2023年)
皐月賞:489.3kg
日本ダービー:480.9kg
菊花賞:480.8kg
<馬体重別成績(単勝オッズ49.9倍以下・過去10年)>
~459kg【1-1-1-5】
勝率12.5%/連対率25.0%/複勝率37.5%
460~479kg【3-4-4-18】
勝率10.3%/連対率24.1%/複勝率37.9%
480~499kg【5-4-4-36】
勝率10.2%/連対率18.4%/複勝率26.5%
500kg~【1-1-1-16】
勝率5.3%/連対率10.5%/複勝率15.8%
血統面で注目したいのはディープインパクト。同馬の種牡馬入り直後は「芝のマイラーが多い」「もって中距離まで」と言われた時期もありましたが、現在は菊花賞5勝、天皇賞(春)4勝という素晴らしい成績を挙げています。
ディープインパクトはミオスタチン遺伝子型がT/T型(長距離型)であり、骨格も大きくなかったため「スピードがあり」「大柄で」「早熟気味」の繁殖牝馬と多くつけられてきました。そのため、産駒の多くがマイル~中距離で強さを発揮したことは事実ですが、ディープインパクト自身は競走成績の通り、芝長距離戦で優れたパフォーマンスを発揮する種牡馬というわけです。
ただ、後継種牡馬の多くはスピードを強化して成功しているため、超長距離戦においては父ほどの信頼感はありません。ディープインパクトの母母Burghclereを刺激してスタミナ面を強化している産駒を探したいところです。
また、ヨーロッパの大種牡馬Sadler's Wellsにも注目。日本ではパワーとスタミナに寄っているきらいがあり、特に日本ダービーでは敬遠されがちな欧州の名血ですが、ひと夏を越し、距離が延びる菊花賞では強い味方となってくれます。
特に近年ではエピファネイアが同馬の血を内包するため超長距離戦で好成績を挙げており、さらに本レースで好走したアリストテレスとオーソクレースはSadler's Wellsのインブリード(近親交配)馬。Sadler's Wellsを中心にヨーロッパのスタミナ血統には要注意です。
<血統別成績(単勝オッズ49.9倍以下・過去10年)>
ディープインパクト内包【6-4-4-18】
勝率18.8%/連対率31.3%/複勝率43.8%
Sadler's Wells内包【1-3-3-12】
勝率5.3%/連対率21.1%/複勝率36.8%