レコードで勝利したアイドルホース、メイケイエール
今週はセントウルSが開催される。今年はテンハッピーローズやママコチャ、モズメイメイ、テイエムスパーダと有力牝馬が多く集まった。過去にも牝馬の勝利は多く、2000年ビハインドザマスクから2003年テンシノキセキまで牝馬が4連勝。現在も、4歳牝馬が3連勝中である。一方で牡馬もマイネルラヴやビッグアーサー、ダノンスマッシュといった実力馬が勝利を収めてきた。今回はセントウルSの記録を振り返る。
通算成績では、牡馬が22勝で牝馬が16勝。さすがに牡馬の勝利数が多いものの、牝馬は大善戦と言えるだろう。勝ち馬の単勝オッズが低い順に見ても、1位メイケイエール(1.7倍)、2位レシステンシア(1.9倍)、3位ミスターボーイ、ビリーヴ(2.0倍)と、4頭のうち、ミスターボーイ以外の3頭が牝馬という状況だ。
前記のビリーヴは当時、重賞未勝利馬。3歳シーズンは重賞を2戦して8、9着と壁を感じる結果。古馬となって重賞3着に入ったものの、その次走ではオープン競走で7着と惨敗していた。その翌月、翌々月に条件戦を連勝するとセントウルSに挑戦。ファンは2.0倍の1番人気に支持した。評判馬だったとはいえ、結果を知る今になって、当時のファンの慧眼に感服する。
カルストンライトオやテンシノキセキ、ネイティヴハートなど骨のあるメンバーがそろっていたが2着に4馬身差をつけて圧勝すると、次走スプリンターズSでも1番人気で勝利し短距離女王の座まで一気に駆け上がった。驚くべきはそのローテ。なんと、同年2月中旬から9月末までの間に10戦するというハードなスケジュールを乗り切っての栄冠だった。
古馬になって一気に才能を開花させたビリーヴとは対局的とも言える道のりを歩んできたのが、単勝配当ランキング2位のレシステンシアだ。
デビューから3連勝で阪神JFを制して2歳女王になり、3歳シーズンでも桜花賞、NHKマイルCで連続2着など存在感を見せつけた。4歳になってからも阪急杯1着、高松宮記念2着、ヴィクトリアマイル6着と活躍。下半期はセントウルSから始動し、1番人気に支持された。
ピクシーナイト、ジャンダルムといった未来のスプリント王者を相手に2番手から押し切る強い競馬で勝利。これがレシステンシアにとって現役最後の勝ち星となったものの、引退までにスプリンターズS、香港スプリントで2着など短距離界をけん引し続けた。2歳から古馬まで見事な戦績を残し続けた名牝だ。
そして最も人気を集めてセントウルSを勝利したメイケイエールも早くから才能を見せた1頭だ。
白毛馬の一族にうまれた鹿毛のメイケイエールは、デビュー3連勝(うち重賞2勝)で阪神JFに挑戦。同じく白毛馬一族であるソダシに敗れはしたものの4着と、世代上位の才能を示した。桜花賞で18着に敗れた頃からメディアでも気性面などの課題が取り上げられることが増えたが、かえって彼女の人気を高めたようにも思う。
3歳シーズンはスプリンターズSの4着で切り上げ(そのスプリンターズSでは発走後すぐにハミ受けが不良となり外側に逃避したため平地調教注意を受けた)、4歳シーズン初戦となるシルクロードSを勝利。次走の高松宮記念は出遅れてしまい5着に敗れたものの、続く京王杯SCはしっかりと勝ち切った。
4歳夏を超え、GⅠタイトルに向けて再始動したメイケイエール。セントウルSでは強敵ソングラインと激突。この二強対決を、上がり最速&レコードタイムで見事に勝利した。上がりタイム32.9は勝ち馬としてはレース史上最速である(中京開催での記録)。GⅠ制覇こそ叶わなかったが、その後も6歳まで現役を続けたメイケイエールはファンを楽しませ続けた。