ナムラクレア、勝負の秋へ
今年のスプリンターズSは9月29日に行われる。昨年に続く猛烈な暑さに支配された夏はいったいいつまで続くだろうか。短距離戦線は残暑と戦いながら本番へ向かうことになる。暑さを避けるという意味でも8月を北海道で過ごせるキーンランドCは頂点を目指すにあたりありがたい存在だろう。
今年もナムラクレアがここから始動する。5歳の秋、ここがGⅠタイトル獲得への正念場だ。かつては北海道から本州へ移動し、中4週でGⅠに向かう忙しさを気にかけた陣営だったが、心身の充実とともに自信をもって送り出せるローテーションになった。
ナムラクレアのここまでの歩みを振り返ると、休み明けに走りすぎるきらいがある。当然、陣営も重々承知。今年はどんな雰囲気でキーンランドCを迎えるだろうか。今秋の短距離路線を展望するうえで見逃せないレースだ。データは過去10年分を使用する。
1番人気【3-2-1-4】勝率30.0%、複勝率60.0%、2番人気【1-4-1-4】勝率10.0%、複勝率60.0%、3番人気【2-0-2-6】勝率20.0%、複勝率40.0%と上位は堅実に走る。秋を意識した馬と夏の勢いそのままにという上がり馬の対戦は、人気を背負う実績馬が優勢のようだ。
人気薄は6番人気以下3勝、9番人気【0-1-3-6】複勝率40.0%と馬券圏内に入る可能性がなくはない。人気馬を中心に組み立てつつ、人気薄も買い目に入れ、高めの配当も狙える。
ナムラクレアの5歳は【3-2-3-35】勝率7.0%、複勝率18.6%と悪くないが、主力はひとつ下の4歳【4-4-4-22】勝率11.8%、複勝率35.3%で、3歳も【2-3-0-18】勝率8.7%、複勝率21.7%といい。3、4歳と5歳の戦いはデータ上では若い組に分があるが、はたして今年はどうだろうか。エトヴプレ、オオバンブルマイ、ビッグシーザーらはナムラクレアを超えられるか注目だ。
穴は前走札幌のOP出走馬
昨秋、豪州のゴールデンイーグルを勝ったオオバンブルマイは、これがはじめての1200m戦出走となる。マイル前後で実績をあげており、距離短縮への不安もないわけではないが、母ピンクガーベラの母はルシュクルであり、近親にはキーンランドCを制したブランボヌールやスプリント戦線で活躍した快足ビアンフェもいる。むしろ1200mで覚醒していい血統だ。
前走GⅠ【2-1-2-12】勝率11.8%、複勝率29.4%。高松宮記念は【0-0-2-3】複勝率40.0%で連対がない。だが、該当5頭はすべて前走7着以下で、高松宮記念2着ナムラクレアに当てはめるのは早計な気もする。
昨年のこのレースでは前後半34.3-35.6のハイペースをシナモンスティックが逃げるなか、ナムラクレアは3コーナー過ぎから動いて、1馬身差。重馬場を苦にしない力強い走りが印象に残った。高速決着も苦にしないものの、時計が要する馬場に強いのも確か。馬場状態は問わない。
前走サマースプリントシリーズでは函館SSが【3-2-3-27】勝率8.6%、複勝率22.9%。着順の内訳では、3着以内【2-2-3-8】に対し、4着以下【0-0-0-18】と好走が大前提。ただし、1着【0-0-1-3】複勝率25.0%、2着【1-1-0-4】勝率16.7%、複勝率33.3%、3着【1-1-2-1】勝率20.0%、複勝率80.0%で惜敗馬が雪辱を果たすケースが多い。函館から札幌へのコース替わりも影響しているだろうか。サマースプリントチャンピオンに王手をかけたいサトノレーヴにとっては気になるところ。
ちなみに函館SSから連勝したのは、2010年ワンカラット、11年カレンチャンの2頭。ワンカラットはサマースプリントシリーズを優勝し、カレンチャンは次走スプリンターズSを勝った。サトノレーヴも続きたい。データ上、頼りになる2、3着はウイングレイテストがアイビスSDへ、ビッグシーザーは青函S6着経由でここにきたのでデータに合致しない。
前走札幌のOP・Lからここに来た馬は【2-3-1-46】勝率3.8%、複勝率11.5%。しらかばSとUHB賞がある。評価したいのは勝った馬【0-2-1-5】複勝率37.5%と6~9着【2-0-0-9】勝率、複勝率18.2%。キーンランドCの穴馬はここから出現する。今年はしらかばS勝ちのゾンニッヒ、UHB賞1着のプルパレイ、6着のダノンマッキンリーがいる。ぜひ買い目に入れよう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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