データで見る「穴候補3頭」
今週末は札幌記念が行われる。1着7000万円の高額賞金と比較的涼しい開催地、そして定量戦という条件が相まって、毎年のようにGⅠ級の好メンバーが集結するレースだ。夏競馬最大の呼び物といって差し支えない。
少数精鋭の今年は連覇を狙うプログノーシスが抜けた人気になりそうだが、ほかの各馬も決して侮れない実力の持ち主ばかり。様々な切り口のデータを駆使し、3頭の穴候補を導き出した。
今週末は札幌記念が行われる。1着7000万円の高額賞金と比較的涼しい開催地、そして定量戦という条件が相まって、毎年のようにGⅠ級の好メンバーが集結するレースだ。夏競馬最大の呼び物といって差し支えない。
少数精鋭の今年は連覇を狙うプログノーシスが抜けた人気になりそうだが、ほかの各馬も決して侮れない実力の持ち主ばかり。様々な切り口のデータを駆使し、3頭の穴候補を導き出した。
まず1頭目はチャックネイト。年初のGⅡ・AJCCを勝って天皇賞(春)に駒を進めたが14着に敗れ、その後は函館記念6着からここへ続戦してくる。
冒頭に触れた通り札幌記念は定量戦だ。古馬重賞の定量戦は(GⅠ以外で)阪神Cとここだけという特殊条件。GⅠやGⅡをいくつ勝っていようが、賞金をいくら持っていようが斤量が加増されない。つまり実績馬に優しいレース条件といえる。
それはデータにもしっかり表れていて、過去10年の当レースでは「同年古馬GⅠかGⅡの勝ち馬」が【3-5-3-5】複勝率68.8%、複回収率141%とよく走る。直近で格の高いレースを勝った馬は信頼できる。まずは同年の実績を素直に受け取るのが基本のアプローチだ。該当馬はプログノーシスとチャックネイトの2頭だが、さすがに前者を「穴候補」と呼ぶわけにはいくまい。
チャックネイトの前走はトップハンデタイの58.5kgを背負っての出走。最終週でも函館芝は内有利のトラックバイアスがあり、15番枠では競馬が難しかった。斤量面が好転しつつ人気も落とすだろう今回こそ絶好の買い時だ。
2頭目はドゥラエレーデ。芝とダート、国内と海外を縦横無尽に駆け巡り「二刀流」とも「変態ローテ」(念のため書くが褒め言葉である)とも言われる唯一無二の足跡を刻んできた。エルムS2着から中1週で札幌記念。この発想はなかった。
札幌記念の好走馬を振り返ると「中山巧者」の活躍が散見される。2度穴を開けたペルシアンナイトは皐月賞2着馬、17年に6番人気で勝ったサクラアンプルールはそれまでJRAでの3勝全てが中山、同年に中山記念2着という典型的な中山巧者だった。
データで言えば「中山芝GⅠで連対経験のある馬」が過去10年で【1-4-1-7】複勝率46.2%、複回収率142%の好成績。ここがひとつヒントになる。なお余談……でもないが、同じ右回り1周の芝2000mでも「大阪杯の好走馬」はあまり走らないので要注意。同年大阪杯5着内の馬は【1-0-2-6】単回収率51%、複回収率47%と人気に応えられていない。馬場質の違いだろうか。
登録馬のうち中山芝GⅠの連対実績持ちは3頭。ジオグリフは大阪杯5着がデータ的に逆効果で、トップナイフは手術明けの前走が内容的に目立たなかった。
ドゥラエレーデは2歳時にホープフルSで中山芝GⅠ勝ち。「ダートがベター」と思っている方も多いだろうが、それはちょっと早計かもしれない。昨年の宝塚記念は1000m通過58.9秒のハイペースで追い込み勢が上位に台頭したレースだが、ドゥラエレーデは2番手追走から1.1秒差の10着。今回戦うボッケリーニとは0.6秒差、ジオグリフと0.4秒差で展開不利を加味すればそれほど負けていないのだ。
続くセントライト記念も1000m通過60.1秒。これは前半1000mのほとんどが上り坂かコーナーで構成される中山芝2200mとしてはかなりのハイペースで、やはり展開不利に泣いての大敗だった。そもそも芝ダート問わず2200mはひとハロン長いように思う。2000mなら芝でも十分戦えるはずだ。
ラストはノースブリッジ。香港のQE2世Cでプログノーシスと対戦し、同馬とは0.2秒差の3着と健闘した。注目ポイントは鞍上。継続騎乗の岩田康誠騎手は、先週の関屋記念(ディオ)でも8番人気2着と穴をあけた。
岩田康騎手はかつてのようにGⅠで有力馬に乗りまくる立場ではなくなったが、重賞での勝負強さはなお健在。過去5年でJRA重賞18勝、単回収率166%と妙味も兼ね備え、「芝のGⅡとGⅢ」に限れば【17-10-17-101】複勝率30.3%、単回収率240%、複回収率131%とさらに頼もしさが増す。
ノースブリッジ自身、3走前はイクイノックスの歴史的レコードに沸いた天皇賞(秋)で、相手が強すぎた上にペースも厳しかった。2走前は2400mで距離が長く、前走は香港GⅠでロマンチックウォリアー、プログノーシスに次ぐ3着と善戦した。前でロスなく立ち回り、Cコース替わり初週の馬場も味方につければ一発あっていい。
<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。
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