格段にレベルアップするダート
かつて芝は海外で通用するが、ダートは砂質などコースの違いもあり難しいとされてきた。ジャパンカップダート、チャンピオンズCに出走する外国馬も少なく、ダートの本場米国と日本の間には距離があった。
だが、ウシュバテソーロがあらわれ、デルマソトガケがいて、フォーエバーヤングの登場など、その距離は瞬く間に縮まった。そうなれば総じてダートで戦う馬たちのレベルも上がっていく。国内に世界クラスがいる。その事実自体が活性化につながり、ダート重賞も全体的に格段にレベルが上がった印象がある。
真夏の札幌エルムSも函館から続く大沼S、マリーンSとのつながりだけではくくれない。春の活躍馬たちも秋に向けて、きちんと賞金を積まないと、ハイレベルなダートGⅠに出走できない可能性もあるからだ。データは21年函館を含む過去10年分を使用する。
大沼S、マリーンSと続くシリーズの最終戦的な立ち位置にあり、これらオープン上位組同士の実力拮抗戦とあって、1番人気【1-1-2-6】勝率10.0%、複勝率40.0%と冴えずも、2番人気【3-1-1-5】勝率30.0%、複勝率50.0%、4番人気【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%と上位人気は手堅く走る。
一方で、重賞を狙ってやってくる実績馬が加わることで、人気の盲点が生まれるケースも。6、7、9番人気1勝ずつ、10番人気以下【0-1-3-42】複勝率8.7%など伏兵が入る余地も残る。札幌ダート1700mの適性と力関係をきっちり見極めよう。
4歳【3-2-1-15】勝率14.3%、複勝率28.6%、5歳【5-4-3-24】勝率13.9%、複勝率33.3%と若い世代が主力。6歳【2-2-5-31】勝率5.0%、複勝率22.5%とベテランはやや勝ち切れない状況にある。スピードが試されるダート1700mらしく、若さと勢いもポイントだろう。
札幌2戦2勝ナチュラルハイ
大沼S1着サヴァ、同2着でマリーンSを勝ったナチュラルハイのほかに23年帝王賞5着プロミストウォリア、平安S1着ミトノオー、ドバイワールドC5着ドゥラエレーデの名前が並ぶ。充実した顔ぶれになりそうだ。
まず目立つのは前走OP/L【7-4-3-47】勝率11.5%、複勝率23.0%。前走大沼S【0-1-1-2】、マリーンS【7-3-2-35】勝率14.9%、複勝率25.5%と大沼Sから直行よりマリーンS経由がいい。滞在で輸送がない北海道は間隔が詰まっても気にならない。
その着順の内訳は1着【3-1-0-4】勝率37.5%、複勝率50.0%、2着【2-2-0-3】勝率28.6%、複勝率57.1%、3着【2-0-0-4】勝率、複勝率33.3%と好走が前提。オープン好走の勢いそのままに重賞挑戦が理想パターンで、ナチュラルハイ、サンテックス、テーオードレフォンが候補に残る。
今年のマリーンSは序盤7.0-10.7-11.6と速く、中盤でわずかに緩み、ラスト600mは12.3-12.8-12.8。中盤までの厳しいペースが後半に影響した。前で粘ったサンテックス、テーオードレフォンはエルムSの並びは微妙だが、少しでもゆったり運べればチャンスはある。勝ったナチュラルハイも好位で厳しい流れを受けて抜け出しており、期待できる。2戦2勝の札幌巧者で自在な立ち回りが武器だ。
重賞組で評価したいのは前走平安S【1-2-2-5】勝率10.0%、複勝率50.0%だ。持久力適性寄りの京都ダート1900mはイメージにないが、データでは相性は悪くない。適度に間隔があり、気力十分で挑んでくる。平安S1、2着は【0-2-0-2】、10着以下【1-0-1-1】。京都ダート1900mに適性がなく、札幌ダート1700mにハマる馬が理想だろう。
逃げ切ったミトノオーは脚質的に問題ないが、平安Sのレースラップを振り返ると、中盤でたっぷり息が入る余地があった。2走前マーチSではマリーンSに似たラップ構成で2着に残っているので適性がないとはいえないが、1700m戦のここは確実に平安Sより忙しくなる。これを乗り切れるかどうか。15着ヴィクティファルスはデータ上優位も1700m未出走で適性が気になる。2走連続で二桁着順とどこかリズムを乱している印象で、きっかけをつかみたいところだ。1700m出走が刺激になるか。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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