ポイントは内枠
2013年、夏の福島の開幕は2週間繰り下げられ、ラジオNIKKEI賞は開幕週になった。かつては“残念ダービー”なんて言われ方もしたが、近年はフィエールマン、パンサラッサ、レーベンスティール、エルトンバローズとその年の秋以降に飛躍する馬たちの名が並び、立ち遅れて春には間に合わなかった好素材が遅れを取り戻すきっかけの場でもある。その特徴としては、たとえ勝利を飾れずとも出世する馬がいること。しっかりレースをチェックし、そんな将来性ある馬を探そう。競馬の夏は秋に向けた序章でもある。データは過去10年分を使用する。
1番人気【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%、以下5番人気までで9勝と上位人気は安定しているものの、5番人気以内は上位拮抗の状態。3歳戦唯一のハンデ重賞だけあり、上位人気も絞りにくい。さらに8番人気【1-2-0-7】勝率10.0%、複勝率30.0%ら伏兵陣が3着以内に入る可能性もあり、安易に目数は絞れない。開幕週とはいえ、小回り福島重賞だけに決めつけは禁物だ。
開幕週らしいデータといえば枠番別成績だ。1枠【3-1-2-10】勝率18.8%、複勝率37.5%など3枠から内が7勝で内枠勢が断然。5、6枠の2着が多く、外枠は人気馬の好走が目立つ。伏兵は距離ロスを軽減できる内枠から選びたいところ。梅雨時期であり、最近は少し馬場を軟らかく作る方針もあり、開幕週でも先行一辺倒ではなくなったが、それでも最短距離を通れる内枠は目立つ。脚質に関係なく、内を通るアドバンテージを生かせる馬を選ぼう。
前走重賞と条件戦の傾向とは
今年は青葉賞など春のトライアル敗退組が多い。皐月賞、ダービーに間に合わなくても、ここから反撃の狼煙をあげる。そんなイメージにハマる馬はいるだろうか。前走成績を中心にデータから探っていく。
まずは前走重賞【2-3-4-37】勝率4.3%、複勝率19.6%から。GⅢは【0-0-0-8】で、格が高いトライアルないし本番組が中心だ。その内訳をみると、青葉賞【1-0-1-4】勝率16.7%、複勝率33.3%など5月の重賞が目立つ。一見、間隔をあけたほうがよさそうに思えるが、ダービーを意識した戦いに身を投じた経験は大きい。
青葉賞からの出走例はすべて6着以下馬であり、4着サトノシュトラーセ、5着ウインマクシマムはハンデを背負うかもしれないが、ラジオNIKKEI賞では格上の存在。小回りを苦にしなければ上位争いだろう。青葉賞掲示板以内の馬は期間を広げると2010年1着アロマカフェ、6着リリエンタールがいる。なお、相性がよさそうな前走1800m重賞は【0-0-0-11】。スプリングS10着ジュンゴールドは引っかかる。
前走オープン・Lは【5-2-1-25】勝率15.2%、複勝率24.2%。目立つのはやはり5月のトライアル・プリンシパルS【3-1-1-6】だが今回は該当馬が不在。一方、白百合Sは【2-1-0-13】。ダービー当日のオープンでメンバーランクは落ちるためか、ここは3着以内【2-1-0-7】で好走が条件。ミナデオロ、オフトレイルはこれをクリアしている。
さらに格下の前走条件戦は【3-5-5-53】勝率4.5%、複勝率19.7%。オープン以上を経験してきた馬には見劣りはするが、2、3着の数字を見れば決して軽視はできない。
その距離内訳は1800m【2-1-1-13】勝率11.8%、複勝率23.5%、1800m未満【1-2-2-22】勝率3.7%、複勝率18.5%、1800m超【0-2-2-18】複勝率18.2%。重賞と違い、1800mを経験した馬が優勢だ。距離短縮より延長の成績が若干上回っており、小回りの開幕週らしくスピード重視でいきたいところだ。東京芝1800mで2勝目をあげたショーマンフリートが合致する。山藤賞を勝って駒を進めたヤマニンアドホックは、1800mの勝ち鞍もあり悪くないが、前走2000m戦を逃げ切ったという経歴は気になるところ。距離が短くなってもすんなり先手を奪えればいいが、展開によっては厳しい形になるかもしれない。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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