6月2週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は上位2頭が重賞級の指数を記録したハイレベル戦勝ち馬クロワデュノールや、東京芝で古馬を含め同日最速タイの上がり3Fを記録したコートアリシアンなどが出た、6月8、9日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
6月8日(土) 東京5R 優勝馬 コートアリシアン 指数-6 評価AA
レースは大外8番枠から出遅れた。直後に内の馬に寄られて外へ逃げ、態勢を立て直すロスがあったが、徐々にポジションを取りに上がっていった。3角手前では前を射程圏に入れた中団中目。3~4角ではコントロールして我慢し、直線で外に誘導するとラスト2Fで一気に先頭列に並びかけ、そこからは独走。結果、5馬身差で圧勝した。
ラスト2Fは10秒9-11秒4。最後にギュンと伸びた感じではなかったところは数字にも出ているが、評価できるのは上がり3Fタイムの33秒3。この日の東京芝では古馬を含めて最速タイの数字だった。
新馬戦としては優秀な指数。出遅れを挽回していくロスのある競馬だったことから、全能力を出し切った競馬ではないだろう。次走以降での上積みが期待できる。重賞でもいきなりの好走もありそうだ。
6月9日(日) 東京5R 優勝馬 クロワデュノール 指数-9 評価AAA
この新馬戦で1番人気に支持されたのはアルレッキーノ。一昨年6月の東京芝1600m・新馬戦を好指数勝ちしたノッキングポイントや、昨年6月の東京芝1600m・新馬戦で好指数を記録しながらもボンドガールの2着に惜敗したチェルヴィニアの半弟だ。
このレースでは6番枠のクロワデュノール、8番枠のアルレッキーノが好スタート。クロワデュノールは内から前を主張する2頭を行かせようとしていたが、その外からアルレッキーノが絡んでいった。すると、クロワデュノールはやや行きたがったが、そこからコントロールしてアルレッキーノを先に行かせて2番手を確保した。
クロワデュノールは3角でアルレッキーノに取り付き、4角で同馬に並びかけると半馬身差で直線へ。序盤で馬場の良い外に誘導し、そこから2頭で叩き合い。アルレッキーノ鞍上のC.ルメール騎手は逃げても押し切れる相手だと見ていたのかもしれないが、この形になるとどうしても追う側が有利となる。
2頭の長い追い比べは外のクロワデュノールが2馬身半差をつけてゴール。新馬戦ながら1クラス上の優秀な指数を記録し、現2歳世代の新馬戦の最高値の指数を記録した。2着アルレッキーノもノッキングポイント、チェルヴィニアの新馬戦指数にはわずかに及ばなかったが、優秀な指数を記録。かなりハイレベルなレースだった。
順調に成長すれば、今回の上位2頭は重賞級と言って良いだろう。ただ、今回のラスト2Fは11秒1-11秒5。そこまで余裕を感じさせる数字ではなかったことから疲労残りが懸念される。クロワデュノールは間違いなく能力が高い馬で、今後は大事に使ってほしいところ。使い方次第で一流馬にも、故障しやすい馬にもなってしまう可能性がある。
アルレッキーノは半姉チェルヴィニアと同様に逃げたことで能力を出しきれなかった感がある。意図的に、能力を全開にさせないための逃げだったのかもしれない。よって次戦以降の上昇はこちらの方が計算しやすい。ただ、昨年のボンドガールが勝利した新馬戦よりは明らかに落ち、AAにするかAAAにするか悩ましかったがAAA評価とした。
6月8日(土) 京都5R 優勝馬 サニーサルサ 指数-2 評価B
減量騎手起用で斤量53kgでの出走。スタート直後は外のベルビースタローンの方が速かったが、斤量が軽かったこともあり7番枠から加速がついて、本馬がハナを奪った。しかし、そこからベルビースタローンに突かれる苦しい形になり、そのまま緩みないペースを刻み、5F通過は57秒5と新馬戦としては異例のハイペースとなった。
それでもサニーサルサは抑えたまま。3~4角半ばでベルビースタローンを振り切り、4角では後続を引き離して2馬身半差で直線へ。そこから独走態勢で6馬身ほど差を広げたが、ラスト1Fで甘くなり後続に迫られるも、なんとか押し切ってクビ差で勝利した。
レース内容としては着差以上に強い内容だった。次走、差す競馬で大きな上積みがある可能性もあり、その点は面白い。ただ、減量騎手起用で新馬戦を好内容で勝った馬は、その後伸びないことも多い。好材料を生かして走りすぎたダメージが残ってしまうからだろうか。次走で今後が見えてきそうな馬だ。
6月9日(日) 京都5R 優勝馬 ポートデラメール 指数-3 評価A
大外7番枠からやや出遅れ、そこから促されてもあまり加速せず、コントロールしながら徐々に前との差を詰めていった。3、4角ともにやや外に張り気味で外々を回る形。苦しいかと思われる瞬間もあったが、直線序盤でオンザブルースカイの後ろから追い出されるとフットワークが大きくなり、グングンと伸びた。ラスト1Fで前3頭をかわし、最後にオンザブルースカイをきっちりアタマ差捉えたところでゴールした。
ラスト2F11秒3-11秒3は悪くなく、上がり3Fタイム33秒8はこの日の京都芝で古馬を含めて2位タイの数字。これは高く評価できる。
半兄に芝中距離で活躍中のアルナシームがいる血統で、兄同様に本馬もエンジンが掛かってからが強く、芝中距離以上で良さが出そうな走り。となれば、今回の芝1200m戦では能力を出し切れていないことになるので、芝中距離路線にシフトする際に上積みが期待できそう。成長力が楽しみな馬だ。
6月8日(土) 函館5R 優勝馬 ヒデノブルースカイ 指数-2 評価B
北海道開幕日恒例の芝1000m・新馬戦。意外とハイレベルな好指数決着となる年も多く、今年はどうなるのか注目していた。スタートは減量騎手が鞍上の7番枠ワイルドゴーアが速かった。それを3角手前から交わしに行ったのが本馬。こちらも減量騎手が鞍上で、6番枠から五分のスタートながら加速がついた。
よって、ペースが緩むところがなく、ヒデノブルースカイとワイルドゴーアが後続を大きく引き離して直線へ。最後は残り100mでヒデノブルースカイが抜け出して2馬身差で勝利。結局そのまま前を行った2頭のワンツー決着となった。
ラスト2Fは11秒4-12秒4と大きく落ち込んだ。走破タイムの57秒6は例年との比較では悪くないが、余力を残せたかというと、何とも言えない。ただ、北海道シリーズを順調に使われることで徐々に力をつけていく馬が例年出現する。その点で開幕日にデビューできたことは大きなアドバンテージだ。
6月9日(日) 函館5R 優勝馬 エメラヴィ 指数-3 評価B
4番枠から五分のスタートだったが、促されると加速がついて2列目の内目を追走。3角手前で最内に入れ、最短距離を通って直線へ向いた。序盤でスムーズに前2頭の外に誘導され、追われて伸び始めた。残り100mで前2頭をかわし、2馬身半差で快勝した。
新馬戦としては悪くない指数だが、函館開幕週で明確に内が有利な馬場状態だった。ただ、操作性が高く、距離ロスなく運べたことで有利になったのは確か。レースがとても上手な馬で、今後、多頭数戦になった場合は優位になりそう。しかし、もうワンパンチ欲しかったところではある。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)クロワデュノールの指数「-9」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.9秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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