3連単19303.5倍の大波乱を演出したトーホウシャイン
今週は京都競馬場でマーメイドSが開催される。昨年は3着に10番人気ホウオウエミーズが食い込み、一昨年には同じく10番人気のウインマイティーが制覇しているが、今年も二桁人気馬の激走が見られるのだろうか。そんな波乱の牝馬限定重賞を記録で振り返る。データは新設された1996年以降のものを使用する。
過去、最も高い単勝オッズで勝利したのは2008年のトーホウシャイン。オッズは116.3倍と単勝万馬券になった。この年は重馬場での開催となったなか、前年のオークス2着馬ベッラレイアをはじめ、同年の牝馬限定重賞を2、3着と好走したザレマ、2連勝中のブリトマルティスなど実力派が揃っていた。しかし重馬場が大得意なトーホウシャインが直線一気。逃げて2着に粘ったピースオブラヴも上がり3位となる37.5を出したが、トーホウシャインはそれを1秒上回る36.5を叩き出した。上述した人気馬3頭も4~6着と大崩れはしなかったものの、12→10→5番人気という波乱の決着を阻止できなかった。馬連は740.0倍、3連単は19303.5倍という記録的な波乱劇となった。
2番目に単勝オッズが高かった勝ち馬は、翌年の2009年コスモプラチナで9番人気22.1倍。その次に2021年シャムロックヒルが10番人気20.5倍で続く。荒れる重賞として知られたこともあり、近年はオッズが割れて10番人気といえど20倍前後に収まることが多い。実際、10番人気で勝利した馬は2018年アンドリエッテ以降3頭いるが、14.6~20.5倍に収まっている。
逆に単勝オッズが低い勝ち馬としては、1位が2004年アドマイヤグルーヴの1.5倍、2位が1997年エアグルーヴの1.9倍、3位が2012年グルヴェイグの2.3倍。アドマイヤグルーヴとグルヴェイグはエアグルーヴの娘でもあり、この一族の強さを示す結果となっている。また、昨年勝ち馬のビッグリボンは、6位となる3.7倍での勝利だったが、こちらも父ルーラーシップはエアグルーヴの産駒である。
今年ならドゥラメンテ産駒のゴールドエクリプスとセントカメリアがエアグルーヴゆかりの血統といえる。
ノーザンファーム生産馬が7勝と最多勝も2016年がラストの勝利
波乱含みの重賞ではあるが、生産牧場別で勝利数を見ると1位がノーザンファームの7勝、2位が社台ファームの6勝、3位が下河辺牧場の2勝と大手牧場が占める。ノーザンファームは上述のアドマイヤグルーヴ、グルヴェイグに加え、フサイチエアデールやローズバド、ディアデラマドレと良血馬がズラリと並ぶ。直近の勝利は2016年リラヴァティとやや遡るが、同馬もオークス馬シンハライトの半姉という良血馬である。
2位の社台ファームは第1回マーメイドSの勝ち馬シャイニンレーサーを輩出。続く第2回をエアグルーヴで制するなど、黎明期から活躍を続けてきた。直近の勝利は2021年のシャムロックヒル。こちらは前走の条件戦14着からの逆転劇で、斤量50キロを生かしたマーメイドSの醍醐味と言える勝利だった。3位下河辺牧場の2勝はロンドンブリッジの娘であるダイワエルシエーロ、ロンドンブリッジの孫娘であるビッグリボンで、血統の強さを見せる勝利といえる。
種牡馬成績では、サンデーサイレンス産駒が4勝、ディープインパクト産駒3勝と父子でワンツー。そこに2勝のキングカメハメハ産駒、ステイゴールド産駒が続く。今年はディープインパクト産駒ならジュリアバローズ(除外対象)、キングカメハメハ産駒ならエリカヴィータ、タガノパッションが登録している。ほか、ロードカナロア、ドゥラメンテ、エピファネイアの産駒は未勝利で、母父としてはTapitが3戦2勝と勢いがある。牝系や種牡馬で、今後新たな“マーメイドS血統”は出現するのだろうか。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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