コース紹介
今週末は函館芝1200mで函館スプリントSが開催される。夏競馬の到来を告げるスプリント重賞。阪急杯2着の後にモルガナイトSを完勝し、秋への飛躍に繋げたいアサカラキング、前走の春雷Sを1番人気に応えて勝利したサトノレーヴ、高松宮記念7着からの巻き返しを狙うビッグシーザーなど、粒揃いのメンバー構成となった。
そこで今回は、初夏を彩る電撃の6ハロン「函館芝1200m」をテーマにデータ分析を行う(使用するデータは2019年6月15日~2023年7月16日)。
当該コースの重賞は函館スプリントSと函館2歳Sの2つある。スタート地点は2コーナー奥にあるポケット。ここから最初のコーナーまで約490mの緩やかな上り坂となっている。3~4コーナーはスパイラルカーブで、途中にある坂の頂上から最後の直線にかけては緩やかな下り坂が続く。最後の直線は平坦。函館スプリントSが開催されるAコースや函館2歳Sが開催されるBコースはどちらも直線の距離が262.1m(Cコースは264.5m)。コース全体での高低差は約3.5mとなっている。
「開幕週=内枠有利」とは限らない
<函館芝1200m・過去5年の枠別成績>
1枠【22-24-29-213】勝率7.6%/連対率16.0%/複勝率26.0%
2枠【19-32-22-229】勝率6.3%/連対率16.9%/複勝率24.2%
3枠【23-20-31-241】勝率7.3%/連対率13.7%/複勝率23.5%
4枠【29-23-26-261】勝率8.6%/連対率15.3%/複勝率23.0%
5枠【25-21-25-281】勝率7.1%/連対率13.1%/複勝率20.2%
6枠【39-29-26-282】勝率10.4%/連対率18.1%/複勝率25.0%
7枠【31-37-27-288】勝率8.1%/連対率17.8%/複勝率24.8%
8枠【28-28-30-309】勝率7.1%/連対率14.2%/複勝率21.8%
まずは枠別成績。連対率ベースで見ると、6、7枠の好調が目立つ。馬群に包まれるリスクの小さい外枠のメリットが出ている。しかし大外枠となると、外々を回すロスが外枠のメリットを上回るのか、成績を落としている。一方、複勝率ベースで見ると1、2枠が好成績。馬群さえ捌き切れば、ロスなくコーナーを立ち回ることのできる内枠のメリットは大きいようだ。
こうなると内、外枠、どちらのメリットも享受できない中枠が相対的に不利になる。
過去10年の函館スプリントS(札幌開催の21年を除いた計9回。以下同様)に限定すると外枠に妙味あり。なんと6~8枠は全て複勝回収率100%オーバーだ。特に8枠は【2-2-1-12】で単勝回収率267%、複勝回収率177%。一方、1枠は【1-0-2-12】複勝回収率47%、2枠【0-1-0-14】同16%と買いづらい。「開幕週はインを通った馬が有利」というイメージが先行し、内枠の馬が過剰に人気することで、外枠の馬に妙味が生まれているようだ。ちなみに3枠は【2-1-1-11】で単勝回収率256%、複勝回収率195%。このくらいの内過ぎない枠の方が、開幕週の馬場の恩恵を生かせるということかもしれない。
<函館芝1200m・過去5年の脚質別成績>
逃げ【55-21-13-126】勝率25.6%/連対率35.3%/複勝率41.4%
先行【108-100-87-486】勝率13.8%/連対率26.6%/複勝率37.8%
差し【43-65-93-743】勝率4.6%/連対率11.4%/複勝率21.3%
追込【10-28-23-748】勝率1.2%/連対率4.7%/複勝率7.5%
次に脚質別成績について。とにかく前が優勢。最後の直線が平坦かつ短いとなれば、ポジションを取れる逃げ、先行馬が有利になるのは自然だろう。逃げ馬は単勝回収率170%、複勝回収率120%と単複ともにプラス域、先行馬も単勝回収率103%、複勝回収率102%と非常に優秀だ。
過去10年の函館スプリントSでは、逃げ【2-1-0-6】複勝率33.3%、先行【3-3-2-25】同24.2%、差し【3-3-4-38】同20.8%、追込【1-2-3-34】同15.0%と、全体成績と比較すると後方勢の奮闘が目立つ。ただ、馬券的には逃げ馬が単勝回収率240%、複勝回収率154%でやはり外せない。ちなみに、前走逃げた馬は【0-0-1-14】とほぼ全滅に近い点には留意しておきたい。
迷ったらロードカナロア産駒、面白いのはジョーカプチーノ産駒
<函館芝1200m・過去5年の産駒別成績>
ロードカナロア【20-24-12-111】勝率12.0%/連対率26.3%/複勝率33.5%
ダイワメジャー【11-7-7-86】勝率9.9%/連対率16.2%/複勝率22.5%
ジョーカプチーノ【9-4-1-21】勝率25.7%/連対率37.1%/複勝率40.0%
産駒別成績では、ロードカナロアが2位に9勝差をつけて独走。産駒のキミワクイーンとダイアトニックが函館スプリントSを勝っている。狙い目は新馬戦と重賞。新馬戦では【3-5-0-2】で複勝率80.0%、複勝回収率143%と抜群の安定感を誇っている。重賞でも【2-3-0-8】で複勝率38.5%、複勝回収率113%とプラス域。迷ったらロードカナロア産駒から買うのが無難だ。
2位は11勝でダイワメジャー。新馬戦【2-1-0-5】勝率25.0%は優秀だが、単勝回収率60%、複勝回収率45%と妙味は薄い。重賞では【0-0-0-5】と馬券に絡んだことがない。短距離~マイルが得意と知られているが、このコースの重賞では割り引くべきだ。
3位は9勝でジョーカプチーノ。サンプル数が少ないながら勝率、連対率、複勝率はロードカナロア産駒を上回る。全体の単勝回収率は138%とベタ買いするだけでプラスだ。重賞ではナムラリコリスが函館2歳Sを勝利。狙い目は2歳戦で、着度数は【4-2-0-4】、単勝回収率は255%となっている。
その他、モーリス【9-3-4-43】単勝回収率166%、ジャスタウェイ【5-3-3-29】同141%、トーセンラー【5-3-2-15】同130%などが妙味の面で優秀な数字を記録している。
今週の函館スプリントSでは、ロードカナロア産駒はキミワクイーン、サトノレーヴ、ジュビリーヘッドの3頭、ダイワメジャー産駒のマテンロウオリオン、ジョーカプチーノ産駒からはシナモンスティックが出走予定だ。
<函館芝1200m・過去5年の騎手別成績>
横山武史【20-15-23-71】勝率15.5%/連対率27.1%/複勝率45.0%
武豊【19-15-13-42】勝率21.3%/連対率38.2%/複勝率52.8%
池添謙一【17-11-6-80】勝率14.9%/連対率24.6%/複勝率29.8%
最後に騎手別成績について。トップは毎年夏の北海道シリーズで無類の強さを誇る横山武史騎手。昨年の函館スプリントSをキミワクイーンで制している。単勝回収率157%、複勝回収率101%と単複ともにプラス域だ。枠別で見ると、1枠【1-1-4-3】単勝回収率216%、8枠【4-2-5-11】同583%で、極端な枠に入ったときが狙い目だ。
2位は19勝で武豊騎手。レジェンドの腕は北の大地でも健在だ。過去にはダイアトニックで函館スプリントSを制している。逃げた際は【4-1-1-1】と凄まじく、勝率57.1%、複勝率85.7%。前に行ける馬に騎乗した際は逃げ切りも考慮しておきたい。ただ、前走逃げた馬では【0-0-0-5】と馬券に絡めていない点は注意が必要だ。
3位は17勝で池添謙一騎手。重賞などの大舞台に強いイメージがあるが、このコースの重賞では【0-0-0-7】と一度も馬券に絡んでいない。枠別成績では1~3枠【9-4-2-24】単勝回収率142%と内枠がプラス域なのに対し、6~8枠【5-6-3-36】同45%と外枠では妙味がガクンと落ちる。外枠は割引、内枠重視という方針で馬券に組み込んでいこう。
その他、鮫島克駿騎手【11-6-6-43】単勝回収率129%、団野大成騎手【6-3-5-47】同210%、佐々木大輔騎手【6-5-2-21】複勝回収率119%などが妙味の面で優秀な成績を残している。
今週末の函館スプリントSでは、横山武史騎手がキミワクイーン、武豊騎手がゾンニッヒ、池添謙一騎手がジャスティンスカイ、鮫島克駿騎手がカルネアサーダ、佐々木大輔騎手がカイザーメランジェに騎乗予定だ。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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