今年の「重賞未勝利馬」は?
近年のエプソムCは重賞未勝利馬が強い。とにかく強い。17年のダッシングブレイズから昨年のジャスティンカフェまでなんと7連勝中。しかも18、19、20年、そして昨年の4回は重賞未勝利馬のワンツースリーフィニッシュだった。対照的に重賞勝ち馬が勝ったのは16年のルージュバックが最後。その後は2着ですら、21年のサトノフラッグと22年のガロアクリークの2回しかない。ちなみに近7年で重賞ウイナーは平均5~6頭。平均出走頭数は約16頭なので、出走割合は極端に少なくなかった。
ただ「今年も重賞未勝利馬を買おう!」となるところだが、残念ながら候補が多過ぎる。今年の登録19頭のうち、重賞ウイナーはヴェルトライゼンデ、セルバーグ、タイムトゥヘヴン、レーベンスティールの4頭のみ。他の15頭は重賞未勝利馬なのだ。
というわけで近7回の勝ち馬7頭の戦歴を振り返ることにした。すると2つの「共通項」が見えてきた。
勝ち馬の条件は2つ
<近7年のエプソムC覇者の重賞実績&東京実績>
17年 ダッシングブレイズ 【0-0-0-6】【2-0-0-5】
18年 サトノアーサー 【0-2-1-2】【0-0-1-1】
19年 レイエンダ 【0-1-0-2】【1-0-0-2】
20年 ダイワキャグニー 【0-0-2-10】【7-0-1-8】
21年 ザダル 【0-0-1-3】【1-0-1-1】
22年 ノースブリッジ 【0-0-1-2】【2-0-0-2】
23年 ジャスティンカフェ 【0-2-0-4】【1-1-1-2】
※レース当時の成績。競走中止を除く。着度数は左から「重賞成績」「東京成績」
1つ目は重賞実績である。重賞勝ち馬が苦戦傾向にあるとはいえ、実績がなさ過ぎるのも考え物。17年のダッシングブレイズを除く6頭には重賞で3着以内の実績があった。
もう一つは東京実績だ。18年のサトノアーサーを除く6頭には東京で勝利経験あり。サトノアーサーにしても、東京では2戦してダービーが10着、前走のメイSが0秒2差の3着と無難に走っていた。したがって東京でまともに走れていない馬では厳しいといえるだろう。
今年エントリーしている重賞未勝利の15頭をチェックすると意外な事実が判明した。重賞で3着以内の実績があるのはシルトホルン1頭だけなのだ。東京実績はどうかというと、8戦して【2-2-1-3】の勝率25.0%、連対率50.0%と優秀。昨年10月のオクトーバーSが2着、前走のメイSが3着とOPでの好走歴もあるから頼もしい。
確かに、シルトホルンにワンパンチ足りない印象を受けるファンも多いだろう。しかし、そんな馬が勝つのがエプソムC。昨年のラジオNIKKEI賞では相手がスムーズさを欠いたとはいえ、レーベンスティールに先着しているのだから確実に力は足りている。自身6回目の重賞チャレンジ。今度こそ悲願のタイトルに手が届くことを期待したい。
《ライタープロフィール》
逆瀬川龍之介
国内の主要セール、GⅠのパドックはもちろん、時には海外のセリにも足を運ぶ馬体至上主義のライター。その相馬眼を頼りにする厩舎関係者、馬主は少なくない。一方、マニアック、かつ実用的なデータを駆使して、ネット媒体や雑誌などにも寄稿するなど、マルチな才能を持っている。
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