上位6頭まで差がない激戦トライアル
弥生賞ディープインパクト記念は波乱決着に終わり、やはりクラシック初戦に向け、中山の壁が立ちはだかった。小回りのなかでも勾配がある中山は異彩を放つ存在であり、牡馬クラシックはまず中山適性が試される。圧倒的な力で乗り切れるならまだしも、そこまで抜けた存在でなければ中山への対応力が必要だ。
トライアルも当然、中山をクリアしないことには先へ進めない。このスプリングSもペッレグリーニ、ウォーターリヒトら中山初出走組の適性を見極めよう。データは過去10年分を使用する。
1番人気は【1-4-2-3】勝率10.0%、連対率50.0%、複勝率70.0%と連軸向きながら単勝はちょっと危ない。実力拮抗の年が多く、舞台は1コーナーまで205mと短い中山芝1800m。いわゆる紛れが起こりやすい。さらに今年もAコース4週目で当日はインが荒れる公算大だ。早めにレースが動けば乱戦になりやすい。
2番人気以下は、5番人気【3-1-0-6】勝率30.0%、複勝率40.0%など、6番人気までは互角といえる。上位6頭まで差がない。そんなイメージだ。
キャリアの傾向をみると、計画的なローテの2戦が【3-2-1-11】勝率17.6%、複勝率35.3%と一歩リードも、5戦【3-1-2-13】勝率15.8%、複勝率31.6%などある程度経験を積んだ馬も勝負になる。他場の重賞で負けて中山で激走する、隠れ中山巧者を見つけよう。
カギは前走1勝クラスの取捨
今年のメンバーならウォーターリヒトがイメージに近い。京都の重賞で17番人気3着、10番人気2着。本来は瞬発力重視の京都でも、この冬はタフな馬場状態が続き、そこでの好走は中山適性を予感させる。
ドレフォン産駒はこのコース【0-0-1-7】で3着は今年の中山記念ジオグリフだけだが、ヴィクトワールピサは【12-8-7-74】勝率11.9%と好相性。同馬は2010年皐月賞馬であり、同年有馬記念を勝った。トリッキーなコースを苦にしない。京都2戦の走りに母の父ヴィクトワールピサの影響を感じるウォーターリヒトは中山もこなすだろう。
キャリア2戦以上の前走クラス別成績を出すと、前走GⅢは【2-2-1-30】勝率5.7%、複勝率14.3%と思ったほどよくない。大半は共同通信杯で、同じ中山の京成杯は【0-1-0-12】複勝率7.7%と伸びない。唯一の2着は京成杯4着だったアライバル。新潟2歳S2着の実績馬だった。京成杯3着のコスモブッドレアは続けるだろうか。中山芝1800m向きの先行力が備わっており、マイペースならしぶとい。
ウォーターリヒトの前走きさらぎ賞は【0-0-1-2】。3着は17年のプラチナヴォイス。重馬場だったきさらぎ賞で先行し、スプリングSでは中団からマクって、前走4着から巻き返した。
今年もカギは前走1勝クラス【7-5-3-37】勝率13.5%、複勝率28.8%だろう。その距離内訳は1800m【3-0-0-11】勝率、複勝率21.4%、1800m未満【1-1-1-10】勝率7.7%、複勝率23.1%、1800m超【3-4-2-16】勝率12.0%、複勝率36.0%。1800m以上の距離経験がひとつの目安になる。
前走1勝クラス1800mは1着【3-0-0-6】、2着以下【0-0-0-5】と2勝目をあげていることが条件。セントポーリア賞を勝ったペッレグリーニ、若竹賞1着ルカランフィーストらが該当する。
セントポーリア賞は前半1000m通過1:02.6、上がり600m33.7と東京らしいスローの上がり勝負になった。ペッレグリーニは発馬直後、接触しながら挽回し、好位にとりつき抜け出した。切れ味より位置取りで勝負するタイプであり、中山に対応できる予感はある。
若竹賞は雨の影響から不良馬場で行われ、前半1000m通過1:01.1、上がり600m37.8とタフな競馬になった。ルカランフィーストは後方から大外を豪快に伸びた。かなりの道悪巧者で中山云々ではなく馬場状態によりそうだ。荒れ馬場歓迎もやはりひと雨ほしいところだろう。
一方、前走1勝クラス中山芝1600m1着は【0-1-1-1】複勝率66.7%。シックスペンスは前走1800m組ほど推せないが、好走する可能性は高い。ひいらぎ賞2着ポッドテオは次走ジュニアCで3着、3着アトリウムチャペルは春菜賞3着、4着ドリーミングアップは東京の平場3着。ハイレベルとはいわないが、決して低レベルでもない。シックスペンスの2戦2勝はきっちり評価しよう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬中心の文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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