コース紹介
今週末は秋の女王決定戦であるエリザベス女王杯が開催される。連覇を狙うジェラルディーナや秋華賞を回避してここを狙ってきた新星ブレイディヴェーグ、府中牝馬Sの勝ち馬ディヴィーナなど粒揃いのメンバーだ。20~22年は阪神芝2200mで開催されていたため、京都芝2200m(外回り)でのエリザベス女王杯は4年ぶりの開催となる。そこで、この記事では京都芝2200mについて過去10年のデータ(集計期間は2013年11月10日~2023年11月4日)を使用して徹底分析を行う。
まずはコース解説から。正面スタンド前直線入り口付近からスタート。400mほど進むと1コーナーに差し掛かる。1コーナーから2コーナーにかけては平坦で、2コーナーを回ると次は約500mのバックストレッチが待っている。向正面半ばから徐々に坂を上り、3コーナーのあたりで頂上を迎え、4コーナーにかけて下り坂が続く。最後に398.7mの平坦な直線を駆け抜けてゴール、というコース形態だ。
当該コースの重賞はGⅠエリザベス女王杯、ダービートライアルのGⅡ京都新聞杯、有力馬が集結しやすい伝統の一戦であるGⅡ京都記念の3つ。なお、阪神競馬場の改修の影響で、来年のGⅠ宝塚記念はこのコースでの開催が予定されている。
コース改修後は外枠が特に好調
<京都芝2200m・過去10年の枠別成績>
1枠【12-13-12-107】勝率8.3%/連対率17.4%/複勝率25.7%
2枠【17-8-15-110】勝率11.3%/連対率16.7%/複勝率26.7%
3枠【14-14-13-113】勝率9.1%/連対率18.2%/複勝率26.6%
4枠【8-13-15-127】勝率4.9%/連対率12.9%/複勝率22.1%
5枠【18-12-12-136】勝率10.1%/連対率16.9%/複勝率23.6%
6枠【13-16-14-147】勝率6.8%/連対率15.3%/複勝率22.6%
7枠【15-16-13-167】勝率7.1%/連対率14.7%/複勝率20.9%
8枠【17-22-20-161】勝率7.7%/連対率17.7%/複勝率26.8%
複勝率を見ると1~3枠が25~26%台、4-7枠が20~23%台となっており、やや内枠有利の傾向。これはエリザベス女王杯でも同様であり、過去10年に同コースで行われた7回中5回は1~3枠から勝ち馬が出ている。これはかなりの好打率だ。
今年も内枠の馬を狙おう……と言いたくなるところだが、コース改修後に行われた9レースでは様相が大きく異なっている。外の8枠が【4-1-2-8】で勝率26.7%、複勝率46.7%、単複の回収率も100%超えと絶好調なのだ。ただそもそもコース改修前も8枠は複勝率26.8%と高水準だ。
これは仮説に過ぎないが、改修によって芝外回りコースは4コーナーのカーブが以前より緩やかになった。そのため以前にも増して馬群がバラけにくく、内々から馬群を捌く難易度が上昇。結果、内枠のメリットが小さくなり、8枠の優位性がさらに増したのではないか。
<京都芝2200m・過去10年の脚質別成績>
逃げ【13-16-8-84】勝率10.7%/連対率24.0%/複勝率30.6%
先行【45-47-39-251】勝率11.8%/連対率24.1%/複勝率34.3%
差し【45-38-48-327】勝率9.8%/連対率18.1%/複勝率28.6%
追込【8-9-16-381】勝率1.9%/連対率4.1%/複勝率8.0%
セオリー通り、逃げと先行の数字がいい。ただ、差しも勝率や複勝率で見ると、逃げ、先行と同等の成績を残しており、他のコースに比べると差しが決まりやすい傾向にある。道中に上り坂があり、最後の直線が長いため、スローペースからの末脚勝負になりやすいのが原因だろう。
この傾向はエリザベス女王杯に限定するとさらに顕著となる。過去10年に同コースで行われた7回のうち、差しに回った馬が6勝している。上がり3F最速を記録した馬は【4-0-3-4】で単複の回収率はともに150%オーバーとプラス域。末脚自慢を素直に信頼するのが良いだろう。なお、コース改修後も差しが決まりやすい傾向に変化はない。
ディープインパクト産駒の独壇場
<京都芝2200m・過去10年の種牡馬別成績>
ディープインパクト【21-16-27-99】勝率12.9%/連対率22.7%/複勝率39.3%
キングカメハメハ【10-10-7-67】勝率10.6%/連対率21.3%/複勝率28.7%
ハービンジャー【9-12-6-71】勝率9.2%/連対率21.4%/複勝率27.6%
ハーツクライ【8-13-7-89】勝率6.8%/連対率17.9%/複勝率23.9%
差しが決まりやすいコースとあって、切れ味を武器とする馬が多いディープインパクト産駒が2位に11勝差をつけてトップ。エリザベス女王杯でも、ラキシスやマリアライトが差し切り勝ちを決めている。
キングカメハメハ産駒が離された2位。こちらは単勝回収率が129%で、妙味の面ではディープ産駒を上回っている。過去10年のエリザベス女王杯では、3着が2回あるが(13年5番人気アロマティコ、14年6番人気ディアデラマドレ)、勝ち切るまでには至っていない。
ハービンジャーは9勝で3位。このコースでは、未勝利から2勝クラスで【8-11-5-50】複勝率32.4%。1勝クラスでは単勝回収率が200%を超えており、下級条件での安定感が光る。なお、エリザベス女王杯では17年に5番人気のモズカッチャンが優勝している。
4位はハーツクライ。コース改修後の成績は【2-1-1-5】で勝率22.2%、単勝回収率158%と非常に優秀だ。また、キズナもコース改修後は【2-1-1-3】で勝率28.6%、複勝率57.1%と好調である点を押さえておきたい。
今回のエリザベス女王杯では、ディープインパクト産駒はサリエラ、キングカメハメハ産駒はククナ、ハーツクライ産駒はハーパー、キズナ産駒はローゼライトが該当。ハービンジャー産駒の出走予定はない。なお上位人気が想定される馬のでは、ブレイディヴェーグが該当するロードカナロアは【1-1-0-5】、ジェラルディーナやディヴィーナが該当するモーリスは【0-0-1-2】となっている。
<京都芝2200m・過去10年の騎手別成績>
川田将雅【8-7-10-34】勝率13.6%/連対率25.4%/複勝率42.4%
C.ルメール【8-5-1-19】勝率24.2%/連対率39.4%/複勝率42.4%
岩田康誠【7-9-7-36】勝率11.9%/連対率27.1%/複勝率39.0%
M.デムーロ【7-3-6-16】勝率21.9%/連対率31.3%/複勝率50.0%
騎手別成績では、川田騎手がトップ。単勝回収率46%、複勝回収率82%と妙味はあまりないが、14年のエリザベス女王杯をラキシスで制している。コース改修後に行われた京都新聞杯を、サトノグランツで制している点も心強い。
それに続くのがルメール騎手。平均3.3人気と支持率が高いなか、単複の回収率はともにプラス域となっている。京都開催のエリザベス女王杯では08年のリトルアマポーラ以来、勝ちがないが、16年に12番人気のシングウィズジョイを2着に激走させており、人気薄でも決して侮れない。
3位は岩田康誠騎手。このコースの重賞では、【0-5-3-9】で複勝率47.1%、複勝回収率142%。なかなか勝ち切れてはいないが、紐には必ず入れておきたい。過去10年のエリザベス女王杯では、ヌーヴォレコルトやクロコスミアで計3回の2着を記録している。
4位のM.デムーロ騎手は、複勝率50.0%という抜群の安定感だ。過去10年の京都開催のエリザベス女王杯でも【2-0-2-1】と、馬券を外したのはたった一回。16年クイーンズリング(3番人気)、17年モズカッチャン(5番人気)で同レース連覇を果たしている。
今年は川田騎手がハーパー、ルメール騎手がブレイディヴェーグ、岩田康誠騎手がイズジョーノキセキ、M.デムーロ騎手がディヴィーナに騎乗予定だ。なお、ジェラルディーナに騎乗予定のR.ムーア騎手は【0-0-1-3】となっている。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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