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【菊花賞】上がり最速が複勝率78.8%で瞬発力が問われるコース! 東大HCが京都芝3000mを徹底分析

京都芝3000mのコースレイアウト,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

コース紹介

今週は京都3000mを舞台に、GⅠ菊花賞が行われる。今年の菊花賞は3年ぶりの京都開催。2冠を目指す皐月賞馬ソールオリエンスやダービー馬タスティエーラ、前哨戦の神戸新聞杯をレコード勝ちしたサトノグランツ、破竹の4連勝でクラシック制覇に挑むドゥレッツァなど、最後の一冠をかけて豪華メンバーたちが秋の淀に集結した。

今年開催の京都3000mが舞台のレースは、今週行われるクラシック最終戦・菊花賞と3勝クラスの古都Sの2レース。今週は同コースの特徴をデータで分析していく(使用するデータは1986年以降のものとする)。

まずはコース紹介。京都3000mは外回りコースを使用。向正面3コーナー手前の上り坂からスタートし、わずか200mで3コーナーに到達する。3コーナーにかけては上り坂、4コーナーにかけては淀の名物・下り坂。無事に回り切るとホームストレッチへ突入する。菊花賞ではスタンドの大歓声があり、ここで冷静に折り合いをつけて走れるかがポイントだ。

その後は1コーナー、2コーナーと回ってバックストレッチへ。そして2回目の3コーナーに差し掛かるところで高低差4.3mの坂を再び上り、4コーナーにかけて下ってゆく。最後の直線は平坦であり、全長は403.7m(Aコース)である。


内枠有利、末脚勝負

 京都芝3000m、1986年以降の枠別成績,ⒸSPAIA


<京都芝3000mの枠別成績(1986年以降)>
1枠【9-9-7-92】勝率7.7%/連対率15.4%/複勝率21.4%
2枠【14-14-14-83】勝率11.2%/連対率22.4%/複勝率33.6%
3枠【14-12-7-95】勝率10.9%/連対率20.3%/複勝率25.8%
4枠【10-8-11-103】勝率7.6%/連対率13.6%/複勝率22.0%
5枠【8-11-16-102】勝率5.8%/連対率13.9%/複勝率25.5%
6枠【8-9-12-110】勝率5.8%/連対率12.2%/複勝率20.9%
7枠【12-14-16-136】勝率6.7%/連対率14.6%/複勝率23.6%
8枠【12-10-4-152】勝率6.7%/連対率12.4%/複勝率14.6%

枠別成績では内枠、特に2、3枠の好成績が目立つ。コーナー6つの長丁場ということもあり、ロスなく立ち回れる内枠の恩恵が大きいということだろう。外々を回すロスの大きい大外枠は複勝率が低く、割り引きたいところだ。

菊花賞の成績に限定しても、この内枠有利の傾向は変わらない。1枠は【5-4-3-53】で勝率7.7%、単勝回収率は104%とプラス域。2枠は【8-4-3-55】で勝率11.4%と、勝率2位の1枠に3.7%もの差をつける圧倒的な成績を残している。軸には内枠の有力馬がうってつけだ。

 京都芝3000m、1986年以降の脚質別成績,ⒸSPAIA


<京都芝3000mの脚質別成績(1986年以降)>
逃げ【7-9-8-75】勝率7.1%/連対率16.2%/複勝率24.2%
先行【42-38-33-196】勝率13.6%/連対率25.9%/複勝率36.6%
差し【26-29-28-311】勝率6.6%/連対率14.0%/複勝率21.1%
追込【5-9-14-272】勝率1.7%/連対率4.7%/複勝率9.3%
マクリ【7-2-4-17】勝率23.3%/連対率30.0%/複勝率43.3%

脚質別成績ではセオリー通り前有利。逃げ、先行の単勝回収率は100%超えを果たしている。好位で運んで直線しぶとい脚を使うのが必勝パターンだ。また、道中の動きが激しいこともあり、12年のゴールドシップのように向正面からのマクリが決まることも珍しくない。

菊花賞に限定すると逃げが【1-1-2-39】で勝率2.3%、追込に至っては【0-3-3-160】と1勝もできておらず壊滅的だ。極端な脚質を得意とする馬は大きく割り引く必要がある。また、全馬初めての3000mということもありスローからの瞬発力勝負になりやすい。上がり3F最速を記録した馬は【12-12-2-7】で勝率36.4%、複勝率78.8%。回収率は単複ともに280%超えという非常に優秀な成績であり、末脚自慢は素直に信頼して良いだろう。

安定感が光る名手・武豊騎手

 京都芝3000m、1986年以降の騎手別成績,ⒸSPAIA


<京都3000mの騎手別成績(1986年以降)>
武豊【13-6-9-35】勝率20.6%/連対率30.2%/複勝率44.4%
C.ルメール【2-1-1-3】勝率28.6%/連対率42.9%/複勝率57.1%
川田将雅【2-0-1-17】勝率10.0%/連対率10.0%/複勝率15.0%
横山典弘【2-5-1-14】勝率9.1%/連対率31.8%/複勝率36.4%

続いては騎手別成績を確認していこう。「長距離は騎手で買え」という格言が示す通り、特定の騎手に良績が集中している。

その中でも頭ひとつ抜けた実績を残しているのが、13勝を挙げている武豊騎手。19年のワールドプレミアや05年のディープインパクトなど、菊花賞では現役最多の5勝を挙げている。また、先行、差し、追込と、3つもの脚質で勝率20%以上を記録しているオールラウンダーだ。今年はファントムシーフで春の二冠のリベンジに挑む。

次に取り上げるのは、こちらもトップジョッキーのルメール騎手。勝率は驚異の28.6%、単複の回収率はともに150%オーバーと妙味も十分だ。菊花賞は18年のフィエールマン、16年のサトノダイヤモンドで2勝を挙げており、フィエールマンに騎乗した際は7番人気の低評価を覆して勝利した。今年はドゥレッツァに騎乗予定。4連勝の勢いそのままに、クラシックでも通用するのか注目だ。

神戸新聞杯をレコードで制したサトノグランツに騎乗予定なのは、川田将雅騎手。同コースでは2勝を挙げており、10年の菊花賞を7番人気のビッグウィークで制している。圧倒的な成績を残している中距離やマイル以下に比べ、長距離はやや見劣りする成績。これは京都コースに限ったことではなく、18年からの2500m以上の芝重賞では【0-4-2-17】と勝ちきれていない。

その他、トップナイフに騎乗予定の横山典弘騎手も、連対率31.8%の好成績。同馬は札幌記念で古馬相手に価値ある2着に入り、馬券妙味的にも面白い存在になりそうだ。

ソールオリエンスに騎乗予定の横山武史騎手はこのコース初騎乗であり、タスティエーラに騎乗予定のモレイラ騎手は【0-0-0-1】。コース経験の少なさが仇となり、伏兵に足を掬われる可能性も十分にある。

神戸新聞杯3着以内×○○で複勝率80%超え

最後に京都3000mで行われた菊花賞の条件別成績を挙げてゆく。この章では、11年から20年までの10年分のデータを使用する。

 京都開催菊花賞の条件別成績(2012年以降),ⒸSPAIA


<京都開催菊花賞の条件別成績(2011年以降)>
母父Unbridled’s Song【2-0-0-1】勝率66.7%/連対率66.7%/複勝率66.7%
神戸新聞杯3着以内×上がり3F2位以内【8-4-1-3】勝率50.0%/連対率75.0%/複勝率81.3%
前走4着以下【0-1-2-77】勝率0.0%/連対率1.3%/複勝率3.8%
関東馬【1-0-2-46】勝率2.0%/連対率2.0%/複勝率6.1%

まずは血統面から。有力馬の多くが該当するキタサンブラックやドゥラメンテ、サトノクラウン産駒は今回が京都3000m初出走、これが難解を極める一因となっている。そこで、ここでは少し視点を変えて、母父について取り上げる。母父Unbridled’s Songは3頭出走して、トーホージャッカル、コントレイルという2頭の勝ち馬を輩出しており好調。今年はハーツコンチェルトが該当する。その他、母父ディープインパクトが【1-1-0-0】で連対率100%、今年はパクスオトマニカのみが該当馬だ。

次はステップレースについて。過去10年で、8頭もの勝ち馬を輩出している神戸新聞杯組が中心。神戸新聞杯で3着以内だと【8-5-2-11】で複勝率57.7%。これでも十分優秀な値だが、さらに上がり3F2位以内だと【8-4-1-3】で複勝率81.3%。末脚が使える馬は信頼度がグンとアップする。今年はサトノグランツのみがこの条件に該当。鉄板級の軸馬といっても差し支えないだろう。

また、菊花賞は大敗からの巻き返しが非常に少ないレースだ。前走4着以下の馬は連対率1.3%、複勝率3.8%と惨憺たる成績。それほどトライアルの結果と本番の結果との相関が強いのだろう。今回はこの条件に17頭中8頭が該当。一気に候補を絞りこむことができる。

さらに、京都開催の菊花賞は関西馬が圧倒的に優位。一方の関東馬は10年間でわずか3頭しか馬券に絡んでおらず、厳しい状況だ。今年はソールオリエンスやタスティエーラ、ドゥレッツァなど有力馬の多くがこの条件に該当。ただ、菊花賞が阪神開催だった過去2年は関東馬が連勝しており、淀に戻ってもこの傾向が続くか注目である。

京都芝3000mデータ,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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