傾向解説
上半期を締めくくるグランプリレース・宝塚記念。今年は2022年年度代表馬イクイノックスを筆頭に強力4歳勢が集結。他の世代も多路線から有力馬が登録してきており、バラエティー豊かな顔ぶれが並びそうです。本記事では血統面を中心に、宝塚記念で求められる適性を整理していきます。
最初に取り上げたいポイントは中距離でのハイペース戦という特殊性について。JRAで行われる芝2000m以上の古馬混合GⅠ(牝馬限定戦を除く)は、ほとんどが前後半1000mで後傾1.0秒前後のラップを刻みます。しかし、宝塚記念だけは過去10年の平均が前後半1000m60.0-60.0の±0.0秒。スタート直後の直線が長いことや内回りコースという点が影響して、JRAの芝中長距離GⅠとしては非常に特殊なペースで流れるレースとなっています。
<前後半1000mの平均ラップ(過去10年)>
大阪杯(GⅠのみ):60.0-59.1(後傾0.9秒)
天皇賞(春)(京都):60.7-59.7(後傾1.0秒)
宝塚記念:60.0-60.0(±0.0秒)
天皇賞(秋):60.2-58.8(後傾1.4秒)
ジャパンC:60.5-59.3(後傾1.2秒)
有馬記念:61.0-60.2(後傾0.8秒)
そのため、実績面でも速い流れを経験してきた馬の方が良く、距離延長や前走初角5番手以内の馬の好走率や回収率が高いのはそのためです。特に人気薄での好走馬の多くがこれに該当しており、2020年は天皇賞(春)で先行して凡走した2頭が2、3着、2021年は鳴尾記念を逃げ切ったユニコーンライオンが7番人気2着と穴を開けています。
<前走距離別成績(過去10年)>
距離延長【4-6-5-55】勝率5.7%/連対率14.3%/複勝率21.4%/単勝回収率46%/複勝回収率100%
同距離【0-0-0-1】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/単勝回収率0%/複勝回収率0%
距離短縮【6-4-5-57】勝率8.3%/連対率13.9%/複勝率20.8%/単勝回収率69%/複勝回収率77%
<前走初角番手別成績(過去10年)>
5番手以内【4-5-5-36】勝率8.0%/連対率18.0%/複勝率28.0%/単勝回収率63%/複勝回収率130%
6番手以下【4-3-3-62】勝率5.6%/連対率9.7%/複勝率13.9%/単勝回収率60%/複勝回収率66%
血統面ではヨーロッパの主流血統であるNureyev≒Sadler's Wellsに注目。日本では重過ぎるきらいがある欧州血脈ですが、消耗戦になりやすい宝塚記念ではむしろ必須の重要血脈といえるでしょう。特に血統表の奥に隠れるようになってきた近年では、同血脈をクロスした馬の好走が目立ち、昨年も1着馬タイトルホルダーがNureyev≒Sadler's Wellsの5×4、3着馬デアリングタクトがSadler's Wells≒Nureyevの4×5を持っていました。これらに限らず、ヨーロッパの底力のある血統には要注意です。
<血統別成績(過去10年)>
Nureyev【6-4-5-46】勝率9.8%/連対率16.4%/複勝率24.6%/単勝回収率102%/複勝回収率106%
Sadler's Wells【3-1-1-16】勝率14.3%/連対率19.0%/複勝率23.8%/単勝回収率165%/複勝回収率61%