東京巧者をデータで徹底検証
日本ダービー、ジャパンカップ、安田記念など、数多くのGⅠが開催される東京競馬場。予想の上で重要になるのが適性である。同競馬場は直線が長く紛れが少ないと一般的に言われているが、府中のGⅠを6勝したウオッカをはじめ、ここを得意とする「東京巧者」は数多く存在する。
そこで今回は、種牡馬や騎手の東京適性をデータで徹底検証。ここでは同コースでの勝率から全場での勝率を引いたものを「東京巧者率」と定義し、この数値に基づいて各種牡馬や騎手の得意、不得意を見ていく(データ集計期間は、東京競馬場リニューアル後の2003年4月26日~2023年5月21日)。
芝のキタサンブラック、ダートのドゥラメンテ
まずは、種牡馬別で芝コースの東京巧者率を分析する。
驚くべきはキタサンブラック産駒だ。18.9%-12.4%=6.5%と抜けて高い値を記録。天皇賞(秋)を3歳ながら制したイクイノックスや、GⅢアルテミスSでリバティアイランドを破ったラヴェルなど、重賞戦線でも活躍している産駒が多い。
またモーリスの子も、13.1%-11.2%=1.9%とまずまずの値を記録。東京コースは同馬が現役時代に安田記念と天皇賞(秋)を制した舞台であり、その適性が産駒にも遺伝しているのだろう。
その他目立った東京巧者率を記録した種牡馬として、エピファネイア(10.6%-9.5%=1.1%)やダイワメジャー(10.0%-8.9%=1.1%)が挙げられる。
逆に、東京巧者率マイナスの種牡馬筆頭がシルバーステートだ。6.4%-10.0%=-3.6%。2023年のNHKマイルカップにも1番人気に支持されたカルロヴェローチェら3頭が出走したが、全て馬券外に敗れた。同年のダービーにもメタルスピードやショウナンバシットが出走したが、いずれも2桁着順と振るわなかった。
その他、ドリームジャーニー(4.2%-6.7%=-2.5%)やゴールドシップ(4.8%-6.7%=-1.9%)、オルフェーヴル(7.2%-8.2%=-1.0%)といったステイゴールド系の種牡馬でマイナスが目立った。
次に、種牡馬別でダートコースの東京巧者率を見ていこう。
圧巻なのは、ドゥラメンテ産駒。東京巧者率は、14.2%(東京コース勝率)–10.5%(全場勝率)=3.7%を記録。オークスを圧勝したリバティアイランドやGⅠ・3勝のタイトルホルダーなど芝馬の活躍が目立つ産駒だが、UAEダービー2着のドゥラエレーデやJBCレディスクラシックを制したヴァレーデラルナなど、ダートでも活躍馬を多数輩出している。この3.7%という値は、同産駒の芝での東京巧者率11.6%-10.6%=1.0%よりも高く、意外な結果だ。
またロードカナロア産駒も、11.4%-9.2%=2.2%と高い値を記録している。こちらもGⅠ・9勝のアーモンドアイやスプリントGⅠ・2勝のダノンスマッシュなど芝馬のイメージが強いが、JBCスプリント覇者のレッドルゼルやサウジカップを制したパンサラッサなど、ダートでも一定の活躍馬を出している。この2.2%という値は、ドゥラメンテ産駒と同様に芝の東京巧者率11.9%-11.4%=0.5%を大きく上回っている。
逆に東京巧者率がマイナス、つまり東京コースを苦手とする種牡馬についても見ていこう。
マイナスが顕著なのはオルフェーヴル産駒。5.3%-9.3%=-4.0%を記録している。同馬の産駒は川崎記念や東京大賞典、ドバイワールドカップを制したウシュバテソーロや、牝馬ながらかしわ記念を制したショウナンナデシコなど、地方、海外のダートで活躍が目立つ。近年、ダート種牡馬としての評価を上げつつあるが、東京コースでは割り引くのが賢明だ。
その他マイナスの値が目立った種牡馬として、キズナ(7.8%-10.2%=-2.4%)、ハーツクライ(6.6%-8.5%=-1.9%)、シニスターミニスター(8.3%-9.9%=-1.6%)やキングカメハメハ(9.3%-10.4%=-1.1%)が挙げられる。
C.ルメール騎手が無双
次に騎手別の東京巧者率を見ていこう。まずは芝コースについて。
圧巻なのはルメール騎手で、27.0%-22.8%=4.2%と抜けた東京巧者率を記録。また、戸崎圭太騎手(14.2%-13.9%=0.3%)や池添謙一騎手(10.1%-9.6%=0.5%)もまずまずの値だ。一方、武豊騎手(13.2%-16.5%=-3.3%)や川田将雅騎手(12.7%-16.4%=-3.7%)、M.デムーロ騎手(14.5%-17.7%=-3.2%)など多くのトップジョッキー達がマイナス値を出している。
ダートコースでもC.ルメール騎手の成績が抜けている。率は23.7%-19.8%=3.9%と大幅なプラス。その他のジョッキーのほとんどがマイナス値を記録していることを鑑みると、驚異的な値だ。また、坂井瑠星騎手も9.2%-8.2%=1.0%と比較的高い巧者率を記録している。
一方、武豊騎手(14.4%-17.6%=-3.2%)や川田将雅騎手(13.2%-15.5%=-2.3%)、岩田康誠騎手(8.9%-12.2%=-3.3%)、岩田望来騎手(6.3%-11.5%=-5.2%)など、名だたるトップジョッキー達がマイナス値を記録しており、ルメール騎手の異次元さが際立つ結果となった。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
《関連記事》
・「前走上がり2位以内の馬」で複勝率6割超 川田将雅騎手の「買える条件・買えない条件」
・2023年に産駒がデビューする新種牡馬まとめ 日本馬の筆頭・レイデオロは「ディープ牝馬」との配合で期待
・【競馬】2022年デビューの新種牡馬を振り返る リアルスティールがトップの38勝、サトノクラウンがダービー馬を輩出