3つのファクターから推奨馬を見つけ出す
チューリップ賞ではドゥーラを推奨し1番人気15着。週初めの予想とはいえ反省しなくてはならない。「直線での不利が痛かった」と戸崎圭太騎手は振り返ったが、阪神JFに比べて緩い流れに対応しきれなかったのも敗因の一つだろう。スローペースなら道中動けるだろうと評価したが、実際は追走に手一杯といったところで、馬への見立てが甘かった。
今回は3月12日(日)阪神競馬場で行われるフィリーズレビューについて下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。
・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走不利データ」
・適性と素質を知るための「血統評価」
特別登録のあった28頭を検討対象とし、データは過去10年を使用する。
重要データ:前走1600m組が優勢

重要データで取り上げるのは前走距離別成績。1200m【0-0-1-34】、1400m【4-2-4-55】、1600m【7-7-5-49】で、1600m組の強さがわかる。回収率でも優秀で、単勝回収率は102%、複勝回収率は164%となっている。
これは桜花賞と阪神JFが1600mで行われることに起因している。牝馬路線はどんなレースでも3歳春までは1600mの番組に一番強いメンバーが集まりやすい。ちなみにダート路線から勝利した馬は1頭もおらず、今回は前走芝1600m組を狙ってみたい。
【前走芝1600mの出走予定馬】
・イコノスタシス
・イティネラートル
・シングザットソング
・スピードオブライト
・トラベログ
・ハートループ
・ブトンドール
・ミスヨコハマ
・ムーンプローブ
・ランフリーバンクス
・リバーラ
・レッドヒルシューズ
前走不利データ:阪神JFのミスヨコハマ
阪神JFはキャリアが重要なファクターの一つとなっていた。キャリア5戦以上の馬は【0-0-0-23】と馬券圏内ゼロ。6月のデビュー以降6戦していたミスヨコハマにとっては厳しいデータだった。一息入れたここは改めて見直したい。
前走不利データ:エルフィンSのシングザットソング
エルフィンSは頭数が揃いづらい。また馬群が固まった状態で直線を向くことも多く、差しも決まりやすいレースだ。とはいえ4角11番手以下となると話は別で【0-0-0-10】という壊滅的な数字になっている。
今年のエルフィンSは11頭立て。シングザットソングはスタートは決めたが行き脚がつかず、5馬身ほど馬群から遅れ、4角でも最後方11番手。そこから勝ったユリーシャにはマイペースの逃げ切りを許したが、本馬は上がり最速33.2の脚でチューリップ賞2着コナコースト相手に0.1秒差の3着。実力は評価したい。デビュー3戦全てで上がり最速を繰り出している末脚はここでも通用する。
血統解説:シングザットソング、スピードオブライト、ミスヨコハマ
・シングザットソング
母ザガールインザットソングは輸入繁殖。現役時代はラ・カナダS(GⅡ・ダート8.5F)を勝利している実績馬だ。とはいえ4代母Bel Shebaを根幹とするファミリーは活力があり、米二冠馬Alysheba、英スプリントGⅠ・2勝のQuiet Reflectionなどが出ている。母の叔父がAJCCとアルゼンチン共和国杯勝ちのマチカネキンノホシで日本の競馬ファンにも馴染みのある牝系だ。
成長曲線はゆったり目でスタミナとスピードがある馬が多いのが特徴。本馬もまだまだ幼い大味なレースが続いているが、素質の片りんは見せている。差しが決まりやすいフィリーズレビューなら、まとめての差し切りも期待したいが、器用さが求められる阪神内回りへの対応がどうか。

・スピードオブライト
日本での牝祖は祖母ムーンライトガーデンズ。従兄弟にはプリンシパルS勝ちで共同通信杯2着のビターエンダー、全姉には新潟千直で3勝のサラドリームがいるファミリーだ。母サイレントソニックは現役時、5勝中3勝を芝短距離であげてOP入りを果たした実績馬。スピードが売りの馬が多く、早期から活躍できるのが強みだろう。
本馬はロードカナロア×ディープインパクトだが、牝系がスピードタイプでベストは1400m前後。距離短縮となる今回は競馬がしやすくなるだろう。阪神コースへの不安もなく完成度も高いので、単純な実力なら評価したい一頭だ。アネモネSにも登録しているように、重賞3着が2回あるが賞金を積めておらず、桜花賞出走にはなにがなんでも出走権獲得が必要になる。ここは仕上げてくるはずだ。
とはいえスプリンターも揃うフィリーズレビューでは、先行する本馬にとっては厳しい流れになるかもしれない。

・ミスヨコハマ
母ミスエリカは米国産馬だが日本で現役生活を送り、芝1500mで1勝。叔父にはSoldatがいる。同馬はファウンテンオヴユースS(GⅡ・ダート9F)とウィズアンティシペーションS(GⅢ・芝8.5F)で1着という実績がある。早熟性が高く叔父のように芝ダート両方走れるパワーもあるファミリーだ。
本馬はそんな一族にカレンブラックヒル×Blameという組み合わせで、早熟性が高く粘り強いタイプの短距離馬に出た。経験豊富で先行しても差しに回っても競馬を作れる点は心強い。スローペースだった赤松賞を勝ち切ったのは予想外で、阪神1400mはベストコースと言える。また高速決着は不得手だが、あまり人気にならないなら重い印を打つことも考えたい。

Cアナライズではシングザットソングを推奨
今回のコンプレックスアナライズでは、抽選対象だがシングザットソングを推奨する。前走1600mからの臨戦という好走データ、前走不利データにも合致。そして、これまで戦ってきた相手を考えればここでは実力上位だ。まだまだこれから伸びる成長力十分な血統、ここでベストパフォーマンスとはいかないかもしれないが、現時点でも3着以内にくるだけの能力はある。
阪神内回りコースへの対応と距離短縮がキーポイントで、スタートであまり置かれないようにしたい。とはいえこれまでのレースから陣営もそれはわかっているはず。高野友和厩舎の厩舎力に期待する。ここはなんとか抽選を突破して欲しいものだ。
ミスヨコハマも好走データ、前走不利データを持ち合わせており、血統的にも合いそう。ただアネモネSにも出走登録しており、当レースへの出走は不透明。ただ出走してくれば穴馬として注目したい。
【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。現在はWEBサイト『ウマフリ』や『サラブレッド研究所』でも執筆を行い、競馬予想のほか一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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