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先週日曜、東京競馬場で福永祐一騎手がJRAでの最終騎乗を終えた。歴代4位となるJRA・2636勝という金字塔と、無敗の三冠馬コントレイルら様々な名馬との思い出をわたしたちに残してターフを去る。サウジカップデーへの参戦を置き土産に、3月からは調教師としての開業へ向け新たなキャリアをスタートさせる名手のさらなる活躍が待ち遠しいところだ。 福永騎手の引退と同時に、2月28日をもって5人の調教師が定年により引退となる。五十嵐忠男、池添兼雄、大江原哲、橋田満、南井克巳調教師（五十音順）それぞれについて、成績や主な管理馬を見ながら名伯楽の歩みを振り返っていく（成績は2023年2月19日現在）。
五十嵐忠男調教師は1973年に騎手としてデビューし、通算176勝をマーク。主な騎乗馬には雪のためダート変更となった中日新聞杯を大楽勝したアスコットエイトがいる。1994年の開業から調教師に転身、JRA重賞を16勝と精鋭集う栗東のトレーナー陣営で確かな位置を守り抜いた。
管理馬を一頭挙げるならテイエムプリキュア。2005年の阪神JFで熊沢重文騎手を背に差し切って2歳女王に輝きながらその後24連敗を喫し、引退レースとして臨んだ日経新春杯で、かつての後方待機のスタイルをかなぐり捨てる逃げの手で復活を果たした。49kgという軽ハンデ、低評価に抗うかの走りには3年前に栄光を極めたGⅠ馬としてのプライドを感じさせた。そして輝きはここで終わらず、秋の京都・エリザベス女王杯でクィーンスプマンテともうひと花を咲かせることになる。
池添兼雄調教師は長男・池添謙一騎手、次男・池添学調教師と親子で活躍。騎手時代は主に障害騎手として重賞7勝を挙げ、開業初年度の1999年暮れ、阪神3歳牝馬Sに送り出したヤマカツスズランでGⅠ初出走・重賞初勝利を同時に達成する離れ業を披露。同馬は翌年に骨折して春のクラシックを棒に振ったものの、秋華賞では7番人気ながらティコティコタックの2着に食い込んで2歳女王の意地を見せた。同馬はその後もクイーンS、マーメイドS快勝と牝馬重賞戦線をにぎわし、5歳冬には笠松の全日本サラブレッドカップを勝って芝・ダート両重賞制覇を達成している。
大江原哲調教師は騎手時代に2年連続JRA最優秀障害馬に選出されたシンボリクリエンスの主戦を務め、同馬とのコンビで1992年の中山大障害春秋制覇を達成した。調教師としてはJRA重賞2勝。1勝馬ながらデイリー杯2歳S、共同通信杯、大舞台の皐月賞でも2着に入り、2009年のダービー卿チャレンジトロフィーを勝ったタケミカヅチ、二足歩行のさまから往年の名馬になぞらえて「平成のシンザン」と称されたミュゼスルタンが新潟2歳Sを鮮やかな追込で制している。
橋田満調教師はパッシングショットでのマイルCS勝ちを皮切りに、アドマイヤベガ、アドマイヤコジーン、アドマイヤグルーヴ、アドマイヤマックス、スズカマンボ、スズカフェニックスと数々のGⅠ勝ち馬を手がけた。代表馬のサイレンススズカは自らアメリカで見出した快速牝馬ワキアの子で、GⅠ勝利こそ宝塚記念の1勝にとどまったが、競走馬はどこまで速くなれるのか、どこまで強くなれるのか、ホースマンが追い求める永遠の問いにひとつの可能性を提示した稀代の逃げ馬である。積み上げたJRA重賞勝利は実に63、GⅠ勝利は11。長らく日本調教師会の会長を務めた本邦屈指のトレーナーだった。
南井克巳調教師は騎手時代からタマモクロスでの春秋天皇賞制覇、オグリキャップとのマイルCSの激闘、ナリタブライアンでの三冠達成など類まれな剛腕を武器に1980～90年代の日本競馬を彩り、JRA通算1527勝を記録。前述したサイレンススズカで唯一のGⅠ勝ちを決めたのも南井師である。2000年に騎手デビュー時所属の工藤嘉見厩舎を引き継ぐ形で開業し、初年度からウイングアローで第1回ジャパンCダートを制覇。その後もタマモホットプレイ、タマモベストプレイ、タマモプラネットといった「タマモ」軍団での重賞勝ち、近年ではダート中長距離で強さを誇示したメイショウスミトモ、きさらぎ賞を勝ったサトノフェイバーなどを管理した。
以上5人の調教師が第一線を退き、3月1日には上原佑紀調教師（美浦）、緒方努調教師、小栗実調教師、西園翔太調教師（栗東）の計4人が新規開業を迎える。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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