序盤600m35.3の価値
ホープフルSで2番人気4着に敗れたファントムシーフが見事に巻き返し、クラシック路線へ再浮上した。生産した谷川牧場といえば、1973年日本ダービーを制したタケホープ、81年菊花賞ミナガワマンナ、94年オークスのチョウカイキャロルなど多くのクラシックホースを生産した。近年ではフェブラリーSを勝ったサクセスブロッケン、インカンテーション、ファンディーナといった重賞ウイナーや昨年のアルゼンチン共和国杯を勝ったブレークアップ、中山大障害のニシノデイジー、そして今年はシルクロードSを制したナムラクレアもいる。昨年後半からにわかに勢いを感じる。
馬主ターフ・スポートの重賞勝利は17年インカンテーションの武蔵野S以来になる。この年の皐月賞1番人気ファンディーナはフラワーC5馬身差圧勝から挑む異例のローテーションだった。ファントムシーフは共同通信杯を勝ち、再び牡馬クラシック出走権を勝ちとった。皐月賞出走ならファンディーナ以来になる。直近2年のエフフォーリア、ジオグリフが皐月賞を制した黄金ローテで挑む。
今年の共同通信杯はスタートで後手を踏んだタッチウッドが向正面からハナに立ち、序盤600m35.3だった。スローが定番の共同通信杯での記録としては速く、過去10年で序盤600m35秒台だったのは3度。15年35.2(勝ち馬リアルスティール)、16年35.8(ディーマジェスティ)、18年35.7(オウケンムーン)。このうち2頭がGⅠ馬になり、ディーマジェスティは皐月賞を制し、15年2着ドゥラメンテは春二冠を勝ちとった。今年の35.3は15年に次ぐ速いラップで、2番手から攻めたファントムシーフが押し切ったのは価値が高い。
1000m通過1:00.5は15、16年1:00.0より遅く、中盤で絶妙にペースダウンしたことがわかる。息を入れられる、いわゆるペースの押し引きができたのもファントムシーフにとって意義がある。ラスト600m11.3-11.3-11.5で34.1。差しに回った組はファントムシーフと2着タッチウッドの緩急に封じられた。
東京芝1800mで前半600m35秒台、後半600m34秒前半で上がる競馬は高度なもので、毎日王冠のラップ構成に迫る。古馬GⅡはもう少しハイラップだが、3歳2月時点での記録としては胸を張れるものだ。ファントムシーフもタッチウッドもこの流れを自力で押し切った。スローではない共同通信杯は皐月賞につながるだろう。















