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【中山金杯】ラーグルフ、4歳で再上昇! 同時計決着の最終レースとの違いとは

2023 1/6 10:49勝木淳
2023年中山金杯のレース結果,ⒸSPAIA

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器用な立ち回りをみせたラーグルフ

縁起物の金杯。東はラーグルフが1番人気に応えて重賞初制覇を飾った。思えば2歳でこのコースの芙蓉Sを勝ち、賞金加算。さらにホープフルS3着でクラシック戦線に名乗りをあげた好素材。皐月賞8着はイクイノックスから0.5差。夏に条件戦からリスタート。2勝クラスを勝つも、菊花賞トライアル・セントライト記念は5着に敗れ、3勝クラス甲斐路Sを勝ってオープン入り。ちょっと回り道をしながらも、地道に力をつけてきた。その経験が中山金杯でも活きた。

レースは逃げ馬不在、先行勢が外枠に入る微妙な状況。スタート直後はウインキートスが行きかけ、探り合う形。結局フェーングロッテンが昨年白百合S以来の逃げを打った。隊列が徐々に整っていく展開のなか、ラーグルフは枠なりにインの中団につけ、1コーナーで内に入りすぎないように1列外に持ち出し、囲まれない位置を確保。いつでもどこからでも動ける形をつくった。器用な立ち回りは経験の賜物だ。

ペースは必要以上に速くならず、前半1000m1:00.6はスローペースに近い。中山で遅い流れになると、残りは立ち回り勝負。だが、後半1000m11.8-11.9-12.0-11.4-12.5と早めにじわりとペースが上がる形になったため、ロングスパート勝負の側面も加わり、最後200m12.5でレースはもつれた。

じわりと加速したフェーングロッテンは4コーナーから坂下11.4で後ろを離して勝負を決めたかったが、ここでついてきたのがラーグルフだった。進路をしっかり確保し、スムーズに末脚を繰り出す。手順は完璧だった。もちろん鞍上の戸崎圭太騎手のスマートな騎乗も大きいが、なによりラーグルフが自在な立ち回りを身につけたからこその競馬。父モーリス譲りの成長力と持続力で4歳にして重賞初制覇。さあ反撃はここからだ。

同時計決着の最終を勝ったローシャムパーク

2着クリノプレミアムは戦歴通り中山の持久力勝負に強い。今回は好発がアダになったようで、序盤から折り合いを欠いた走り。さらに勝負所で外のラーグルフに進路を塞がれ、内に行くと、番手のレッドランメルトがヨレて進路なし。外にやや強引に切り替えてスペースができたのはゴール前200mを切ったところだった。そこまで追い出せなかった分、最後12.5で目立つ伸びをみせた。スムーズならと悔やまれる。やはり中山は合う。

3着フェーングロッテンは久々の逃げだったが、コントロールの効いた絶妙なペース。後半持続力勝負に持ち込み、残り400~200m11.4で勝負を決めたかった。今回は相手が悪かった。逃げ差し自在の立ち回りでいかにも小回り向き。ただし、最後の200mで鈍ったあたり、ベストは1800mではないか。

4着アラタは馬体重+24キロの影響か、勝負所の11.4でラーグルフに置かれてしまった。それでも直線はしぶとく伸びた。そもそも外を回ると届かないCコース替わりで終始外を回る競馬。4着は力の証明だ。

5着はマテンロウレオ。こちらも最後の直線は馬群に突っ込む形で進路なし。クリノプレミアムの動きに合わせて上手く進路は確保できたが、やはりスペースを作ってからゴールまで短すぎた。瞬発力に長けたタイプではないので、力を出し切れずにゴールした印象がある。

最後に勝ち時計2:00.2は中山金杯としては水準級の記録。これとまったく同じ時計で決着した続く2勝クラスの最終を勝ったローシャムパークは忘れないでおきたい。中山金杯前後半1000m1:00.6-59.6に対し、最終は1:00.5-59.7なので、ペース差はほぼなし。ローシャムパークは余裕ある走りでこれを勝利した。セントライト記念でラーグルフに先着した好素材だけに、次も注目しよう。

一方で中山金杯のレベルが低いというのは早計。上記の通り中山金杯は残り1000mから11秒台が続くロングスパート合戦。最終は最後の600m11.8-11.4-11.9の上がり勝負で、適性が違った。重賞と条件戦ではラップ構成の厳しさが違う。


2023年中山金杯のレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。

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