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【アルテミスS】1戦1勝馬からはマラキナイア有力  リバティアイランドには不安要素あり?

2022 10/23 17:04勝木淳
アルテミスSインフォグラフィック,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

狙うならキャリア2戦

アルテミスは古代ギリシャ神話に登場する狩猟と純潔の女神のこと。かつては豊穣と多産の神として信仰されたという。純潔の女神アルテミスの名にふさわしく、無敗でここを突破したのはレース創設10回で17年ラッキーライラック、19年リアアメリア、20年ソダシの3頭。このうち2頭が阪神JFを勝利した。

反対に新馬を負け、ここを勝った馬は5頭、残る2頭は新馬こそ勝利したものの、その後どこかで負けてここで重賞制覇を飾った。牝馬路線はとかく天才少女のイメージが強いが、アルテミスSは戦歴に黒星がある馬も強い。マイルの頂点を競う古馬たちが走る東京芝1600mは2歳牝馬には簡単ではなく、負けを糧に経験を積んだ馬にも利があるということか。データは重賞格付け時代を含めた過去10年間のものを使用する。


過去10年アルテミスS人気別成績,ⒸSPAIA


まずは人気別成績から。1番人気は【4-2-0-4】勝率40.0%、複勝率60.0%、2番人気【2-4-1-3】勝率20.0%、複勝率70.0%。キャリアが浅く、事前評価が割れがちではあるものの、基本はこの1、2番人気はそれなりに強力。一方、そういったレースだけに6、7、9、12番人気が各1勝ずつと、人気をひっくり返す結果もみられる。4~7番人気の複勝率も高く、各馬丁寧に検討したい。


過去10年アルテミスSキャリア別成績,ⒸSPAIA


2歳戦の目安はキャリア。その成績はキャリア1戦【2-3-1-39】勝率4.4%、複勝率13.3%、2戦【7-5-6-45】勝率11.1%、複勝率28.6%と1戦1勝はそこまで目立たない。新馬即重賞通用はよほどの完成度がないと難しい。とはいえ3戦【1-1-0-23】勝率4.0%、複勝率8.0%と数字は落ちるので、2戦を中心に1戦を検討していきたい。


リバティアイランドに黄色信号点滅

ではキャリア1戦とそれ以上ではどんな傾向があるのか。前走戦歴から探っていき、出走予定馬のなかから好走ゾーンにハマる馬を見つけたい。


過去10年アルテミスS前走新馬組コース別成績,ⒸSPAIA


まずはキャリア1戦組から。前走新馬だった馬のそのコース別成績を出すと、阪神芝1600m【1-1-1-1】勝率25.0%、複勝率75.0%と目立つ。今年の日程でこれに該当するのは6月2週間と10月の新馬のみ。6月の芝1600m新馬は初日1鞍。勝ったのは牡馬のファントムシーフだった。これを除くと新潟芝1600m【1-1-0-10】勝率8.3%、複勝率16.7%、東京芝1400m【0-1-0-2】複勝率33.3%と数字としては頼りない。前者はリバティアイランド、デインバランスなどが該当する。新馬戦上がり31.4と圧倒的な才能を披露したリバティアイランドは上位人気必至。ここを突破できるか。注目したい。

ラヴェルの前走新馬芝1800は【0-0-0-7】とゾッとする数字だが、これは北海道と関東圏でのもの。小倉芝1800mだった馬は出走ゼロ。これではデータとして否定材料にはなるまい。きょうだいのナミュール、ヴェスターヴァルトは東京コースが得意。条件好転ととりたい。

マイルの新馬戦ならマラキナイアもいい。中京芝1600mは【0-0-0-1】とこちらもサンプルが少なく、判断つかないが、そのレース内容は好位から上がり最速34.7とセンスと性能の高さを感じる。


過去10年アルテミスS前走新馬組コース別成績,ⒸSPAIA


では前走新馬についてもう少し。距離関係なく、その位置取り別成績は逃げ【0-0-0-5】、先行【2-2-1-17】勝率9.1%、複勝率22.7%、中団【0-1-0-13】複勝率7.1%、後方【0-0-0-4】。基本的に先行した馬の成績がいい。スローが定番の新馬戦で後ろから競馬をするようだと、重賞で苦戦を強いられるという仮説が立つ。新馬なら直線だけで逆転できても、重賞で同じ手だと、よほど強烈な決め手がないと難しいということだ。

キャリアが浅いうちは展開を味方につけ、流れに乗れる馬を評価したい。中団から差したリバティアイランド、ラヴェルよりマラキナイアや時計平凡でもデインバランス、ニシノコウフクの一発が面白い。ただし、前走新馬新潟芝1600mの成績自体がそこまで強調できないことを忘れたくない。


過去10年アルテミスSキャリア2戦以上組前走クラス別成績,ⒸSPAIA


冒頭で書いたように、アルテミスSは戦歴に黒星がある馬でも好走できるレース。そこでキャリア2戦以上の傾向をみよう。前走クラス別成績は前走未勝利【5-3-3-21】勝率15.6%、複勝率34.4%が目立つ。


過去10年アルテミスS前走未勝利組距離別成績,ⒸSPAIA


前走未勝利組の距離別成績は1600m【2-2-2-12】勝率11.1%、複勝率33.3%、1600m超【3-0-1-5】勝率33.3%、複勝率44.4%がいい。前者はディナトセレーネなどが該当する。


過去10年アルテミスS前走未勝利芝マイル組上がり3ハロン順位別成績,ⒸSPAIA


前走芝1600m未勝利戦組は上がり3ハロン順位で明暗くっきり。上がり1位は【2-1-1-6】勝率20.0%、複勝率40.0%で2位【0-1-0-3】複勝率25.0%、ないし4、5位【0-0-1-1】複勝率50.0%が好走パターン。ディナトセレーネは2位タイなので、やや強調しづらい。

残る出走馬が当てはまる1勝クラスないしオープン・Lは【1-3-5-44】勝率1.9%、複勝率17.0%。ここはミシシッピテソーロの1400m【0-1-1-18】複勝率10.0%。アリスヴェリテの2000mは出走なし。その前走野路菊Sは中京芝2000m。阪神芝1800mの野路菊Sも【0-0-0-2】。

上記データを参考に今年は例年以上に新馬組をしっかり見極めたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


アルテミスSインフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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