接戦に強い騎手は誰だ!
「強い」という言葉の定義は人それぞれ違うだろう。ナリタブライアンのクラシックシーズンのように他を寄せ付けない圧倒的な着差をつける走りを「強い」と評する人もいれば、2000年に8戦全勝したテイエムオペラオーのようにゴール直前にグッと抜け出し、ライバルを捻じ伏せる勝ち方をそう形容する人もいる。
ゴール前の接戦として今でも語り継がれている1996年のスプリンターズSを例にとると、フラワーパークとエイシンワシントンが1200mを戦い切ってついた着差はわずか1cmだったと言われている。コース取りをはじめ、少しでも騎乗にズレがあれば結果も逆になりえる。そんな騎手の技量が問われる“接戦”にフォーカスして、オペラオーのようにタイム差なしの接戦で勝負強さが光るジョッキーをデータで探ってみたい。
タイム差なし勝利数ランキング
まず、着差0.0秒=タイム差なしの勝利数をランキングにすると下記のようになる(期間は2012年9月1日から2022年9月16日まで)。
1位 戸崎圭太 312勝
2位 川田将雅 310勝
3位 C.ルメール 300勝
4位 福永祐一 274勝
5位 M.デムーロ 250勝
トップは戸崎圭太騎手。2013年に大井から中央競馬に移籍すると2014年から3年連続のリーディングジョッキーに輝いた。2019年に右肘開放骨折の大怪我を負うも、治療とリハビリを経て大舞台に戻ってきた。直近1年間でも30勝とトップの成績だ。
勝負強い騎手ランキング 川田将雅騎手&M.デムーロ騎手が好成績
次に少し目線を変え、ゴール前の競り合いに強い騎手を調べてみた。計算方法はタイム差なしで1着になった回数と、同じくタイム差なしで2着だった回数の差とした。
1位 川田将雅 +62(1着310回・2着248回)
1位 M.デムーロ +62(1着250回・2着188回)
3位 田辺裕信 +34(1着214回・2着180回)
4位 幸英明 +26(1着191回・2着165回)
5位 池添謙一 +23(1着157回・2着134回)
上位の二人が大きく抜けた成績を残している。川田将雅騎手は2021年安田記念の8番人気ダノンキングリーや、2017年安田記念のサトノアラジン、2015年宝塚記念のラブリーデイなど、GⅠ・13勝も含まれている、凄い数字といえる。
M.デムーロ騎手は今年に入ってからダート戦での僅差勝ちが目立つ。1着が10回に対し2着が4回で+6の成績。特にダートの1200m戦では4、5番人気あたりの馬で競り勝つケースが多いことも覚えておきたい。
1番人気の馬で勝ち切れるジョッキーは誰だ!?
トップジョッキーになればなるほど、有力馬からの騎乗依頼が増えるのが自然の摂理。1番人気馬に騎乗する機会も多い中で、しっかりと勝ち切っているのは誰だろうか。まずは1番人気でのタイム差なし勝利数を見ていく。
1位 C.ルメール 151勝
2位 川田将雅 136勝
3位 戸崎圭太 124勝
4位 福永祐一 104勝
5位 M.デムーロ 100勝
近年、リーディングを争っているトップジョッキー達が上位を独占。ところが、トップのC.ルメール騎手はタイム差なしの入線で【151-163-23-5】と実は競り負けるケースの方が多く、この条件での勝率は44.2%という意外な結果だった。
では、勝ち星ではなく勝率で再度ランキングしなおしてみると、どうなるだろうか。ここでは直近10年で50回以上、1番人気の馬でタイム差なし入線したことがある騎手のみとした。
1位 田辺裕信【59-28-4-1】勝率64.1%
2位 幸英明【40-20-4-0】勝率62.5%
3位 石橋脩【32-22-1-0】勝率58.2%
4位 内田博幸【59-38-5-0】勝率57.8%
5位 M.デムーロ【100-70-6-1】勝率56.5%
今回はあえて着度数まで掲載して勝率を出した。勝率では田辺裕信騎手が64.1%でトップ。1番人気馬に乗って競り負けることが少なく、叩き合いでは一番信頼できることが分かった。
驚いたのは3位の石橋脩騎手だ。55回タイム差なしの接戦を経験したうち、3着以下はたったの1回だけという安定感。当然、全勝というわけではないが1着32回、2着22回という成績。特に差し馬での活躍が目立ち、ケイデンスコールとのコンビで制した2018年新潟2歳Sのような、大外からシッカリと脚を伸ばす競馬が目立つ。切れが持ち味の差し馬で1番人気に支持されているときは、積極的に狙ってみたい存在だ。
《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレース、競輪の記事を中心に執筆している。
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