場内はGⅠレースさながらのボルテージ
ゴール前に近づくにつれて、急激に場内のボルテージが上がった。
GⅠレースさながらのそれを呼び起こした主は、オープンファイア。9月11日(日)の中京5R・芝2000m戦でデビューした栗東・斉藤崇史厩舎所属のディープインパクト産駒は、単勝1.3倍と断然の人気を集めていた。しかし、スタートでは大きく伸び上がって出遅れ。7頭立ての後方2番手からレースを進める形となった。
レースを引っ張ったサンライズジークをピースオブザライフが半馬身~1馬身差でピッタリとマークする形。前半1000mは1:06.6と超スローペースで流れた。
3角でオープンファイアの鞍上ルメール騎手は少し促す素振りを見せ、一頭交わしていく。直線に入り外に持ち出すが、開幕週で内の先行馬有利の馬場、そして前半が超スローペースだったことを考えれば、残り200mで先頭に立ったピースオブザライフの押し切り濃厚と思われた。
オープンファイアは残り100m時点では4番手だった。しかし、ラスト50m。一頭だけ違う脚を見せた。レース上がり33.9のところを33.4でまとめ、ゴール直前でクビ差捉えきった。
スタート、道中の行きっぷり、鞍上が促してからの反応と課題も多いデビュー戦だった。しかし、セレクトセールで3億3,000万円で落札されただけのことはある。そう感じさせるポテンシャルを見せつけた。
10日にはアイルランドの2歳重賞・チャンピオンズジュベナイルSではこの世代がラストクロップとなるディープインパクト産駒のオーギュストロダンが勝利。来春のクラシック候補として名乗りをあげた。
日本で世代最初にデビューし、豪快な勝ち方を見せたオープンファイアにも、今後さらに大きな期待が集まるだろう。
ここからは、2021年のセレクトセールで落札された現場でも取材し、今回のデビュー戦にも運よく立ち会えたということもあっての夢の話。
セレクトセールの上場番号は1番。デビュー戦の馬番も1番など、なにかと「1」に縁がありそうなだけに、世代のトップへと駆け上がっていく──。そんなドラマのようなストーリーがあってもいいのかなと、ふと思ってしまった。