長い直線でしなやかな末脚を披露
サマー2000シリーズ最終戦・新潟記念。今年の登録馬の中にもシリーズチャンピオンの可能性を残した馬が複数頭おり、能力や適性だけではなく勝負度の違いにも注目する必要がある一戦といえるだろうが、まずは各参考レースの内容を振り返っていく。
【目黒記念】
金曜に25.0mmの降雨があったが、土日の開催には影響がなく馬場は乾燥気味。Cコース替わり初週でもあり、全体的に良好な馬場状態で開催が行われた。レースは昨年の勝ち馬ウインキートスが引っ張って前後半1000m62.5-58.3の後傾4.2秒。後傾5.9秒だった昨年ほどではないが、前有利の流れであったことは間違いない。
4着ディアマンミノルは徐々にポジションを下げていき、直線入り口では後方2番手の位置取り。それでも、直線では上がり3F33.4の末脚で追い込んで、勝ち馬から0.1秒差の4着を確保した。Princely Giftを6×5でインブリードするしなやかな追い込み馬で、平坦な長い直線で最も輝くタイプ。新潟外回りコースはベストの舞台だろう。
8着プリマヴィスタは先団馬群につけながらも粘りを欠く結果。重賞ではさらに大きなハンデが必要だ。
負けて強しの2着

【七夕賞】
土曜の開催中に微量の雨が降ったが、レースにはほとんど影響せず。水準以上の時計が出ており、内目の馬の好走が目立つトラックバイアスでもあった。レースはロザムールが気風良く逃げて前後半1000m58.5-59.3の前傾0.8秒。ただ、集団馬群はやや離れており、4番手では同59.4-58.4の後傾1.0秒と平均ペースでレースが進行した。
1着エヒトは中団外目で積極的な競馬。ルーラーシップ産駒らしい息の長い末脚で重賞初勝利を挙げた。トラックバイアスを味方につけた感もなく、結果通りの評価が必要だ。サマー2000シリーズチャンピオンに最も近い存在であることは間違いない。
2着ヒートオンビートは3200m戦からの距離短縮で終始忙しそうな追走だったが、ラストは上がり3F最速の末脚で追い込んで2着を確保。自身の上がり3Fは11.6-11.4-11.3程度と脚を余し気味でもあり、3キロの斤量差も考慮すればエヒト以上の評価が必要だろう。
過去10年で最もタフな競馬
【函館記念】
開催後半の傷んだ馬場のうえ、週中からの断続的な降雨の影響でタフな馬場状態に。内外のトラックバイアスは感じなかったが、パワーとタフさが求められる馬場状態であったことは間違いないだろう。レースはレッドライデンが軽快に逃げて前後半1000m60.1-63.5の前傾3.4秒。過去10年の函館記念で最も前傾度の強いレースであり、先行勢には厳しいレース展開だったか。
3着スカーフェイスは後方のインでジッと脚をタメ、勝負どころではスムーズに進路を確保。さすがに展開が味方した感は否めない。
5着サンレイポケットは中団外目で流れに乗り、3~4角では先頭を捉える勢い。ただ、勝負どころで手応えが怪しくなり、ラスト1Fでも伸び負ける結果となってしまった。トップハンデを背負ってはいたが、昨秋のパフォーマンスと比べるとさすがに物足りなさを感じる。年齢的な影響もありそうだ。
3頭出し友道康夫厩舎からはこの馬!
サマー2000シリーズ組ではヒートオンビートが最上位の評価。連続の2000m戦なら追走も楽になるだろう。過去10年で4勝を挙げ、今年も3頭を送り出す友道厩舎からはこの馬に注目だ。しなやかな末脚が新潟外回りに合うディアマンミノル、本記事では触れられなかったが強い4歳世代の重賞級を下してきたイクスプロージョンにも要注意。両馬ともオルフェーヴル産駒だけに、ひと雨降ればさらに楽しみが増すだろう。
注目馬:ヒートオンビート、ディアマンミノル、イクスプロージョン
※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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