「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【中京記念】ベレヌス重賞初制覇! 舞台を知り尽くした西村淳也騎手が高速馬場を味方に好騎乗

2022 7/25 11:00勝木淳
2022年函館2歳Sのレース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

伏線は同条件の8R

サマーマイルシリーズ第2戦の舞台は小倉芝1800m。例年のマイルシリーズには参戦してこない中距離型や小倉巧者も集い、中京で行われる中京記念とはまた異なった顔を見せた。

マイルではない以上、小倉芝1800mだから出走に踏み切った組に利がある。そういったアプローチも多かった。舞台の特性を頭に入れ、適性を重視する。競馬はどの馬が強いのかというより、そのレースに合う馬を推理するもの。ましてここはGⅢのハンデ戦。強さを比べること自体が難しい。

この日、8Rに中京記念と同舞台である3歳以上1勝クラス芝1800m戦があった。前半1000m通過58.8、600m通過後の向正面あたりから11.6-11.2-11.4-11.7-11.9-12.7と11秒台を連発。ゴールに向かって失速するラップを描いた。

勝ったのはペースを刻んだ逃げ馬テーオーシリウス。差し馬の台頭を招いてもおかしくない失速ラップだったが、止まることはなかった。4コーナー2番手にいた2着シゲルイワイザケに1馬身半差をつけ1.46.5を記録。前半突っ込んで入ったとしても止まらない。これがこの日の小倉芝の特徴といってよかった。

スピード最優先、限界を超える末脚を繰り出さないと届かない出足勝負の馬場。テーオーシリウスに騎乗した西村淳也騎手はこの時点でそれをつかんでいた。

中盤から緩まない強気の逃げ

西村淳也騎手がコンビを組むベレヌスは今年に入って全3戦マイル戦で逃げて、6、4、2着。オープン戦でも通用する力を着実につけてきた。ただし、ここにはマイラーズCで大逃げを打ち、14番人気4着と沸かせたベステンダンクが出走しており、さらに1枠1番を引いた。ベレヌスは7枠14番。1コーナーまで距離がない1800m戦。西村淳也騎手は先手争いに集中した。

ベレヌスはゲートをうまく出て先行態勢。最内のベステンダンクも激しく先手を主張するもダッシュ力はベレヌスの方が上。一気にハナに立ち、内側へ寄せる。迷いのない手綱さばきにベステンダンクも控えざるを得なかった。抵抗されれば、1、2コーナーで馬の体力が奪われる。まずはここを制したことがポイントだった。

前半1000mは12.4-11.4-12.3-12.0-11.8、59.9。手早く先行争いにケリをつけたことで、8Rよりも遅いペースを形成。1、2コーナーで息を入れられた。

8Rをテーオーシリウスで逃げ切った経験とベレヌスの手応えを踏まえた西村淳也騎手は早々にペースをあげる。後半800m11.4-11.3-11.4-11.9と向正面半ばから積極策。息を整えるところがない流れに後続はなし崩し的に脚を使わされた。これが平坦の高速馬場を逃げ切る策。速いラップを刻んでも、最後はそう易々とは止まらない。当然、無理なくロングスパートできるベレヌスの充実ぶりも光った。

5勝中4勝が逃げ切り、そのすべてが西村淳也騎手とのコンビ。これぞまさに手が合うというもの。まるで意思が通じ合うかのような逃走劇。今後はマークが厳しくなる公算も高いが、得意の小回り、平坦であれば軽視できない。追い込みが決まるのはペースに恵まれた場合が多いが、逃げ切りは恵まれただけでは決まらない。再現性は高い。

昨年2着も10番人気だったカテドラル

2着は後方から伸びたカテドラル。昨年2着馬が10番人気と盲点だった。昨年は安田記念12着後、サマーマイルシリーズ2、1着。夏場に強いタイプで、今年もまったく同じパターン。今後は京成杯AHまでサマーマイルシリーズ続戦なら追いかけたい。上半期はスタートで遅れる場面が目立ち精彩を欠いたが、本来はマイラーらしい持続力を備え、時計勝負に強い。

3着は1番人気ファルコニア。人気を背負っている以上、ベレヌスの手応えをみれば動かざるを得ない。高速馬場で3、4コーナーを外目進出。外から勝ち馬をとらえに行く競馬をした分、ゴールでハナ差カテドラルに差された。今春は3、2、3着。器用に立ち回れて安定感がある分、あとひと押しが足りない印象だが、ここは3カ月の休み明け。秋に向けてタイトルを獲得するチャンスはまだまだある。マイルも悪くないが、ひと溜め利く1800mがベスト。今回はベレヌスが作ったマイル戦寄りの流れも同馬には痛かった。

2番人気ミスニューヨークは昨年の中京記念に続きまたも4着。小回り得意の差し馬で、最近はすっかり流れに乗れるようになった。ゴール寸前でカテドラルが外から入ってきて、狭くなる場面もあったが、1分45秒台の決着時計はこの馬にやや辛かった。もう少し上がりを要する馬場で見直したい。

2022年函館2歳Sのレース経過,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

《関連記事》
【アイビスSD】マリアズハートら今年も韋駄天S組中心! 外枠有利、サンデーサイレンス系は不振
【クイーンS】1番人気超堅実! 再出発3歳ウォーターナビレラ、古馬勢からはラヴユーライヴに注目
トップはキタサンブラックの18億7684万円 アーモンドアイは何位?競走馬JRA獲得賞金ランキング

 コメント(0件)