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【函館2歳S】中1週だからこその勝利 ブトンドールの勝因、クリダームの好走要因は前走時計とハイペース経験にあり

2022 7/18 11:06勝木淳
2022年函館2歳Sのレース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

同条件新馬勝ち5頭中もっとも遅いタイムだったブトンドール

世代初の2歳重賞は中1週でここに挑戦したブトンドールが勝利、いちばん星に輝いた。このレース、牝馬の優勝は3年連続。ビッグアーサー産駒はこれがJRA重賞初制覇となった。今年も例年通り、函館芝1200新馬勝ちが1、2着。ポイントはここにあった。

先週までの函館開催5週間で芝1200mの2歳新馬戦は7鞍。もっとも決着時計が速かったのは2日目の6月12日クリダームの1.09.5。最遅タイム1.11.7を記録したカワキタマックスは函館2歳S不出走。出走中もっとも遅い記録は1.11.1。開催7日目ブトンドールと9日目アスクドリームモアの2頭が並んでいた。結果は出走中最遅のブトンドールが勝ち、最速のクリダームが2着。開催が進み、かつ雨の影響を受けた函館の芝は軟らかく、洋芝特有の力のいる状態。開幕当時はある程度速い時計が出る馬場も、開催とともに変化する。これが結果を左右した。

勝ったブトンドールは中1週の強行軍。しかし滞在競馬の北海道、中1週は他場ほどダメージがなく、実際、昨年の勝ち馬ナムラリコリスのほかに2着4頭、3着1頭と相性はいい。大事なのは間隔そのものではなく、函館2歳S当日に近い馬場状態での経験。事実、このレースの決着時計はブトンドールの新馬1.11.1より遅い1.11.8。これはこの開催新馬7鞍中最遅の1.11.7より遅かった。

明暗をわけたラスト200m13.1

さらに大切なことはレースの流れ。2着クリダームの新馬は前後半600m34.1-35.4。クリダームは番手から抜け出し、上がり600mは出走中4位の35.2。ブトンドールの新馬は35.1-36.0、3番手から上がり最速35.6だった。函館2歳Sは34.5-37.3の超ハイペース。後半600m11.9-12.3-13.1でラストはさすがにみんな脚が止まった。ブトンドールの新馬は最後200m12.3。ハイペース、ラストで時計を要する競馬を経験、そこで最速上がりを記録したことが重賞で生きた。決してスピードタイプではないが、その分、距離の融通はありそうで、現状、1400mまでならこなせるのではないか。

逃げてハイペースを演出したクリダームの新馬は最後の200m11.9。軽快なスピード型にとってこの馬場は辛かった。それでも積極策に出る馬がいないとみるや、枠の差を活かしてハナに行き、極力、前走の経験をなぞるような競馬をしたのは好プレー。その前走は上記のようなハイペースのなか、馬場を味方に粘り込んだもの。クリダームもハイペース経験があったからこその好走だった。こちらは母の父サクラバクシンオーのスピードタイプ。ハーツクライ産駒でもあり、単なるスプリンターとは限らないが、現状はきれいな馬場で軽快なラップを刻む競馬が理想だろう。

3着は最後方にいたオマツリオトコ。こちらは前走ダート1000mの新馬を道中で順位を上げ続けて0.9差快勝。決してハイペースではなかったが、ダート戦で脚を使い続けたパワーがこの日の馬場にかみ合った。スタートで遅れ、離れた最後方から上がり最速35.8。インパクト大の好走だったが、最後200m13.1が作用した点は事実。過剰に評価しないほうがいい。それでもこのキャリアで力のいる厳しい馬場状態のなか、最後まで伸びた末脚は見所十分。適性距離はもっと長い。

1番人気スプレモフレイバーは8着。同馬の新馬は4日目芝1200m、前後半600m35.4-34.5、1.09.9、逃げ切り勝ち。後傾ラップで最後600mは11.8-11.3-11.4。今回は真逆の競馬になってしまい、条件が合わなかった。函館2歳Sではこういったタイプの1番人気は危険で、できれば来年まで記憶しておきたい。いや、実は小倉2歳Sも同じパターン。夏の終わりにまた活かせる機会はある。とはいえ、凡走の原因は適性違いと明白。条件が変われば再び巻き返すだろう。

2022年函館2歳Sのレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。




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