阪神牝馬S組優位も、前走混合GⅠ組が堅実
5月15日(日)に東京競馬場でヴィクトリアマイル(GⅠ)が行われる。4歳勢から桜花賞馬ソダシや、NHKマイルC2着のソングラインなど5頭。5歳勢は三冠牝馬デアリングタクトが復帰戦を迎える他、大阪杯の覇者レイパパレなど11頭。6歳馬2頭を合わせた総勢18頭が春の牝馬チャンピオンの座を懸けて争う。
木曜日にアカイトリノムスメが引退するという残念な出来事があったが、現役のトップ牝馬がほぼ全馬揃ったと言っても過言ではない。昨年、一昨年のような1強レースも良いが、今年のような混戦模様のGⅠも予想のしがいがあって面白い。馬券的な荒れも含め、見応えのあるレースを期待したい。

まずは過去16回分のデータから、前走レース別成績を取り上げる。最多勝は前走阪神牝馬S組で【5-7-6-88】。頭数が多い分複勝率は17.0%、複勝回収率は74%と並程度に収まっている。16回中13回で1頭以上は馬券に絡んでおり、絡まなかった09年、11年、15年も4、5着に入線するなど侮れない。今年も1頭以上は馬券に入れておきたい。
しかしそれ以上に特筆したいのは前走大阪杯組(GⅡ時代を含む)が【2-1-1-2】、前走ドバイ組が【2-2-0-2】と好調である点だ。どちらも複勝率66.7%で、この2レースから馬券になった8頭は全てGⅠ馬だった。混合GⅠを戦ってきた馬は、牝馬同士のここであればあっさり巻き返すことが可能だと分かる。大阪杯からはレイパパレ、アカイイトが参戦。ソングラインはデータのないサウジアラビアからの転戦になるが、前走で下した相手はドバイのGⅠアルクォーツスプリントでも好走しており、GⅢながらメンバーレベルは高かった。GⅠ馬でない点は不安だが、ドバイ組と同様の扱いをして良いだろう。
その他のレースでは前走中山牝馬S組が【2-2-2-15】。中山牝馬Sよりさらにレベルが落ちる傾向の強い福島牝馬S組は【0-2-2-49】と勝ち馬が出ていない。ヴィクトリアマイルを「勝ちたい」馬ではなく「出たい」馬が出走するため、ここでは低調。優先順位を落として馬券を組むべきだ。
上位人気馬の適応診断

今週の東京は雨予報。重馬場の巧拙も考えた上位人気馬の所見を述べる。
白い見た目が人気のソダシ。前走フェブラリーSで3着と久々に好走したものの、重馬場で芝並の高速決着になり生粋のダート馬がついてこられなかったことや、揉まれず2番手を追走出来たことが好走の要因になっており展開に恵まれた。3戦全勝の芝マイルに戻ってくるのは好材料だが、父譲りのストライド走法で力の要る重馬場はどうか。2走前の大敗もパワー不足によるものと考えることも可能で、精神面での脆さも抱えているため、単勝の信頼度は低め。ただ相手には入れておきたい。
ソングラインは東京で4戦2勝2着2回、左回りという括りでも【4-2-1-0】とパーフェクト。重馬場は新馬戦で一度走ったきりだが、ピッチ走法寄りで馬場自体はこなせると考える。ただ本質は1400mの馬。距離を保たせるため仕掛けを待ちたい分、前の馬が止まらない展開だと厳しい。今回強力な先行馬が多く、前半から流れてくれそうなのはプラスに働くだろう。
レイパパレは重馬場の大阪杯を圧勝し、適性は証明済み。近走は先行策でも折り合いがつくようになったが、2000mは現状ギリギリで先行策だと伸びきれていない。距離短縮は大幅プラスだろう。マイルで連勝経験もありスタミナの心配も要らないため、軸に最適。しかし今回は先述したように先行馬が多く、しかも皆強力。潰し合いになったときに垂れてしまう可能性は考えておきたい。
他にも強力な馬は多数いるものの、今回についてはソングラインとレイパパレが一枚抜けているのではないだろうか。
東京巧者で展開向く 1年前の無念を晴らす時
◎ソングライン
前走1351ターフスプリント1着。先述の通り、左回りは【4-2-1-0】と馬券を外したことがない。得意の東京ではあるものの、極端な末脚勝負だとキレ負けするため、自らハイペースを刻めるレシステンシアやレイパパレといった強い先行馬がいる環境もプラス。
◯レイパパレ
春は速い流れを先行して連続2着。2000mはギリギリで距離短縮はプラス。展開が向かない可能性が高く対抗に留めたが、連系の信頼度はソングラインと同等。
▲ソダシ
前走フェブラリーSで久々の好走も展開有利があった。桜花賞で前崩れの展開を粘っており、得意の芝マイルで巻き返したいが、重馬場適性に疑問符。馬自身の人気が高く、過剰人気する単勝は避けたいが、連系なら買っておかないといけない。
△ファインルージュ
東京新聞杯は余裕残しの2着で東京マイルは合う。ただ負かした相手が弱く一歩足りない印象。重馬場もどうか。
×マジックキャッスル
前走で後方から伸びる気配を見せたのは大きい。データ上有利な前走阪神牝馬S組。
×メイショウミモザ
前走阪神牝馬S組でデータが後押し。成長著しい。
×アカイイト
マイル適性は疑問も前走大阪杯。差し脚質で展開は向く。
デアリングタクトについて、今回は数多の名馬から能力を奪った繋靱帯炎からの復帰戦。1年以上の休養明けでのGⅠ好走例はトウカイテイオー(有馬記念)のみと厳しく、今回は無事に走れたらOK。桜花賞を勝っているが、この時は重馬場への対応が問われた特殊なレースで、出走馬のその後の成績を見てもマイルGⅠとしてはレベル低め。前走で国内GⅠでは一歩足りないグローリーヴェイズにも負けてしまった点で、アーモンドアイのような突き抜けるほどの強さはないと判断。早熟傾向のあるエピファネイア産駒、マイル適性も疑問となると、仮に怪我がなくてもこの舞台では消していただろう。
馬券はソングラインからの馬連6点、ソングラインとレイパパレ2頭軸の三連複5点で勝負。先週から入場券の販売数が増え、ゲームの影響などで競馬を始めた方の中には、今回初めて生でGⅠ観戦をするという人も多いだろう。当選された方、おめでとうございます。コロナ対策を万全に、トップホース達を間近で見て、その走りを目に焼き付けて欲しい。(文:福山)
2022ヴィクトリアマイル 予想印
◎ソングライン
◯レイパパレ
▲ソダシ
△ファインルージュ
×マジックキャッスル
×メイショウミモザ
×アカイイト
ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
25年以上の歴史がある、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えを目指す本格派が揃う。
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