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【NHKマイルC】注目は朝日杯FSで能力の高さ見せたトウシンマカオ 3走前にきっかけ掴んだタイセイディバインも侮れない

2022 5/7 17:30山崎エリカ
2022年フローラS_PP指数,ⒸSPAIA

東京芝1600mは総合力が問われる舞台

東京芝1600mは最初のコーナーまでの距離は約542mあり、枠順による有利不利は少ない。しかし、NHKマイルCは距離不安のあるスプリント路線馬が多く出走し、それらが先行することが多い。3角手前の上り坂で一旦ペースが緩み、4角で再び加速する傾向があり、テンが速く、中が緩み、終いが速い。前後半イーブンのペースになることが多い。

差し、追い込み馬はペースが緩む3~4角の外から動いてくるので、差しが決まるときの大半は外差し決着になる。しかし、結局のところ3~4角から動いても最後までバテない、総合能力の高い馬が上位争いに食い込んでくる。

過去10年の逃げ馬の成績は1着3回、2着1回、3着1回。一方、追込馬も1着2回、2着2回と活躍しており、良馬場の場合はどの位置からでも通用している。今回は7枠からジャングロが逃げると予想され、同馬の鞍上は平均ペースでの逃げを得意とする武豊騎手。今年も総合能力が問われるレースになると見て、予想を組み立てたい。

能力値1~5位の紹介

2022年NHKマイルC_PP指数,ⒸSPAIA



【能力値1位 ジャングロ】
昨年暮れの中京2歳Sでは逃げて圧勝。同週に行われた朝日杯FSに出走していれば、上位入線に値する好指数を記録。次走のマーガレットSでは外のショウナンマッハがダッシュ良く内に切り込み、頭を上げ位置を下げる不利があった。しかし、好位の外で折り合い、直線で抜け出して勝利した。

前走のニュージーランドTではいつもの逃げ戦法。レースの流れは直線で外から差してきたマテンロウオリオンに向いたが、ジャングロは並ばれてから最後にひと伸びして勝利。着差以上に強い内容だった。マーガレットSでは逃げずとも結果を出しており、ここにきて本当に強くなってきた。

近走の走りが再現できれば、当然今回もチャンスは大きい。今回は東京芝1600mで距離が不安視されているが、そこは問題ないとみる。問題があるとすれば前走のレース内容が強すぎたこと。自己最高指数を記録し、優勝した疲れがどれだけ残っているかだろう。過信はできないが、当然有力と評価すべき存在だ。

【能力値2位 マテンロウオリオン】
デビュー2戦目の万両賞では、メンバー中で断トツの上がり3F33秒4で勝利した馬。当日は外差し馬場。出遅れ最後方で脚を温存し、直線で外に出しての勝利だったため、この時点ではまだ能力は半信半疑だった。しかし、シンザン記念ではスタートを決めて2列目の内から押し切る堂々の内容で勝利。高い能力の持ち主であることを強烈にアピールした。

前走のニュージーランドTは2着。最内枠から徐々に控えて中団で脚を温存。展開的にはかなり恵まれ、出来れば優勝したいところではあった。しかし休養明けだったこともあり、最後に息切れした結果となった。今回は上積みを期待したいところだが、前走でかなり走っているので、多少疲労残りの懸念はある。

ただ今回は東京コースで持ち味の末脚を存分に発揮しやすいことは確か。今回はプラス面、マイナス面が混在している状態と言えそうだ。鞍上のマジックに期待したい。

【能力値3位 プルパレイ】
3戦目にアスター賞を勝利した馬。この時点では倒した相手がそこまで強くなく、指数もそこまで強調できなかった。その後トップクラス相手の重賞ではやや苦戦したが、これは想定どおりだった。しかし、外差し有利の馬場&展開となった朝日杯FSを3番手の馬場の悪い内から8着に粘ったことは、着差以上にキラリと光った。

その輝きをさらに感じたのは次走のクロッカスS。出遅れ一頭だけ最後方から強烈に追い込み2着。前走のファルコンSも最内枠から出遅れたが、中団まで位置を挽回し、3~4角で3列目から内の狭いところを捌いて抜け出し優勝した。

ここにきて急速に想定以上の成長を見せていることは間違いない。前走は前半が速い流れのなか、序盤ムダな脚を使っているだけにスタートを決めてしっかり脚をタメれば、もう一段階上のギアがある可能性は十分ある。

【能力値4位 セリフォス】
昨年6月の新馬戦を好内容で勝利し、その後の活躍を予感させた馬。その後は順調に上昇し、新潟2歳Sではなかなかの好メンバー相手に完勝。叩き台のような感じで使われたデイリー杯2歳Sも制し、盤石な態勢で朝日杯FSに出走した。

同レースでは4番枠からやや出遅れ、そこから押して好位の内目まで挽回していく競馬。4角で中目を通して出口で外には出せたが、ペース的に厳しく負けて強しの2着だった。

総合的に考えて、芝マイルの舞台で能力を出し切った場合、今回の出走メンバーでは一番強いと評価できる存在だろう。ただ今回の問題はその朝日杯FSから直行だということ。競走馬はレース間隔をあけた方が良いこともあるが、今回のこの馬はピークに至っていないと判断する。それでも高い能力で好走は期待できると見るが、過信は禁物だ。

【能力値5位 キングエルメス】
新馬戦をなかなかの好タイムで勝利した馬。その疲れが残ってクローバー賞では1番人気を裏切る結果となったが、京王杯2歳Sでは一気の巻き返し。高い能力の持ち主であることをアピールした。

前走のアーリントンCは骨折休養明けながら差のない3着。もちろん万全のデキではなかったと見る。レース前半ではジャスパークローネを前に行かせたが、同馬の鞍上がブレーキを掛けたことで、キングエルメは頭を上げ左右に振るなど、スムーズさを欠く場面があった。スムーズさを欠いたなかでの3着、高い能力を感じさせた。

ただ高い能力の持ち主ほど、気で走ってしまうところがあり、休養明けで中途半端に好走した馬は、次走で順当に上昇しないこともある。将来性が高い馬であることは確かだが、今回は不安点もある。

【能力値5位 タイセイディバイン】
デビューからずっと芝の中距離戦を使われ、5戦目に未勝利勝ちを決めた馬。特に3着以下を引き離し、ポッドボレットとのマッチレースとなった4走目の未勝利戦2着はなかなか強い内容だった。きっかけひとつで重賞でも通用する力はあると分かっていた。

素質開花のきっかけとなったのは3走前のあすなろ賞。雨の影響でタフな馬場になったなか、早め先頭から勝ちに行く競馬で6着。実質かなり厳しいペースの競馬で、馬にとって相当ハードだったはず。それで目覚めたのか、近2走は距離短縮もプラスに働き連続2着。

特に前走アーリントンCは、14番枠からまずまずのスタート切って押しながらの追走。序盤で先行争いが激化したなか、好位の中目で我慢。3~4角の外から2列目まで上がり、直線で一気に先頭に立つ競馬。そのまま押し切りを図り、しぶとく粘ってクビ差の2着。レース内容は外から差し切ったダノンスコーピオン以上だった。芝の短距離戦のキャリアは浅く、まだ上昇が期待できる。順調の強みを生かせば上位食い込みもあり得る馬だ。

穴は朝日杯FSで素質開花のきっかけ掴んだトウシンマカオ

トウシンマカオの新馬戦は好発を決め行きっぷり良く好位の中目を追走、ラスト1Fで抜け出しての完勝だった。なかなかのセンスを感じていたが、2戦目の京王杯2歳Sでいきなり2着した走りには驚かされた。想定を超える上昇力、成長力だった。

あまりにも一気のパフォーマンス上昇は疲れを残しやすいだけに、朝日杯FS当時はそれなりに疲れがあった状態と見ていた。2列目の外を追走、直線では一旦先頭に立つ場面もあり、外差し各馬に取り付かれてもしぶとく粘った。先行馬にとって厳しい流れだったことを考えると、驚きの走りだった。

次走クロッカスSは順当勝ち。前走のファルコンSは他馬よりも斤量が重く、直線では好位の内目でレースを進めたものの、ラスト1F地点まで進路がなく敗れてしまった。しかし、実力負けではない。

今回は得意の東京芝、ここまでのレースぶりからキレよりも長く良い脚を使うタイプと見る。よって距離は1400mよりも長い方が良いように感じる。朝日杯FSで見せた優秀なレース内容から、今回普通に走ればこの馬が好走することは必然だと見る。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ジャングロの前走指数「-17」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.7秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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