「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【皐月賞】過去10年で9勝「皐月賞ポジション」を狙え 東大HCが中山芝2000mを徹底検証

中山芝2000m,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

コース紹介

今週は中山芝2000mを舞台に、牡馬クラシック開幕戦・GⅠ皐月賞が行われる。2歳GⅠを制したドウデュース、キラーアビリティがそろい踏み、さらに東スポ杯2歳S圧勝から直行の異例ローテで臨むイクイノックス、共同通信杯勝ち馬ダノンベルーガ、弥生賞で初重賞制覇を飾ったアスクビクターモア、京成杯馬オニャンコポン、若葉Sを初芝で制した良血デシエルトなど目移りするメンバー構成だ。

当該コースが舞台の重賞は中山では最多の6レース。グレード順に、GⅠは皐月賞と暮れの2歳中距離王決定戦・ホープフルS、GⅡは皐月賞トライアルの弥生賞、GⅢは正月の伝統レース・中山金杯、その翌週に行われる3歳限定戦で、名馬キングカメハメハが現役唯一の敗戦を喫した京成杯、秋華賞トライアルの紫苑Sが行われる。

このコースがどのような特徴を持つのか、データで分析していく(使用するデータは2017年4月15日〜2022年4月10日)。

まずはコース形態。4コーナーの終わりに設定された地点からスタート、最初のコーナーまで400m程度続く直線で1度目の登坂。その後2コーナー前まで上り、向正面の平坦な直線を走る。3、4コーナーのきついカーブを下ると310mの直線に入り(直線距離は中央4場で最短)。2度目の急坂の先に栄光のゴールが待ち受ける。

長らく皐月を勝てない5枠

中山芝2000m・過去5年の枠別成績,ⒸSPAIA


<中山芝2000m・過去5年の枠別成績>
1枠【23-27-37-266】勝率6.5%/連対率14.2%/複勝率24.6%
2枠【20-23-28-299】勝率5.4%/連対率11.6%/複勝率19.2%
3枠【24-29-27-302】勝率6.3%/連対率13.9%/複勝率20.9%
4枠【36-31-22-312】勝率9.0%/連対率16.7%/複勝率22.2%
5枠【35-28-30-323】勝率8.4%/連対率15.1%/複勝率22.4%
6枠【34-39-26-340】勝率7.7%/連対率16.6%/複勝率22.6%
7枠【30-38-42-383】勝率6.1%/連対率13.8%/複勝率22.3%
8枠【40-27-30-429】勝率7.6%/連対率12.7%/複勝率18.4%

枠別成績では1枠の複勝率が若干抜けているが、外枠勢の好走率も悪くない。単勝回収率が最も高いのは8枠で、東京芝2000mなどのイメージに引っ張られて妙味あるオッズになっていることが多い。極端な馬場の偏りがない限り、あまり気にする必要はなさそうだ。

1986年以降の中山皐月賞では8枠が最多の8勝(勝率も1位)で、複勝率では1枠が23.4%でトップ。一方、5枠は長らく勝利に見放されており、最後に勝ったのは1985年のミホシンザン。二つ前の元号までさかのぼらなければならない。

中山芝2000m・過去5年の脚質別成績,ⒸSPAIA


<中山芝2000m・過去5年の脚質別成績>
逃げ【35-21-23-175】勝率13.8%/連対率22.0%/複勝率31.1%
先行【114-115-102-530】勝率13.2%/連対率26.6%/複勝率38.4%
差し【74-85-85-962】勝率6.1%/連対率13.2%/複勝率20.2%
追込【10-10-26-954】勝率1.0%/連対率2.0%/複勝率4.6%

脚質別成績では明確に前有利。ただ注目は逃げよりも先行勢の好走率が高い点。ある程度のポジションを取りつつ、ハナや番手を見ながら進むタイプが最も恵まれている。

皐月賞でもその傾向は健在で、過去10年の勝ち馬のうち4角4~7番手にいた馬が実に9勝を挙げている。皐月賞を勝つのは「最もはやい馬」ではなく、確実に先行勢に取り付き、直線で機動力のある脚を使えるタイプである。勝ち馬の前走における共通点を見ると、全頭が4角を2~7番手で通過して優勝している。人気が想定される馬の中ではイクイノックスがこの条件をクリアしていない。

全滅のキタサンブラック産駒

中山芝2000m・過去5年の種牡馬別成績,ⒸSPAIA


<中山芝2000m・過去5年の種牡馬別成績>
ディープインパクト【33-31-26-147】勝率13.9%/連対率27.0%/複勝率38.0%
ハーツクライ【25-21-18-148】勝率11.8%/連対率21.7%/複勝率30.2%
エピファネイア【9-9-10-54】勝率11.0%/連対率22.0%/複勝率34.1%
キタサンブラック【0-0-0-15】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%

皐月賞に産駒が出走する種牡馬ではディープインパクトが複勝率4割に迫る好成績。前走先行組に限ると【12-10-13-39】複勝率47.3%、単勝回収率125%・複勝回収率115%と安定感・妙味ともに文句なしだ。今年もキラーアビリティ・アスクビクターモアなど多くの有力馬がエントリーしている。

ディープには劣るものの、複勝率3割超えと胸を張っていいのがハーツクライ。過去10年の皐月賞では【0-1-0-13】と2020年のサリオス以外は馬券になっていないが、2014年のワンアンドオンリー・2017年のスワーヴリチャードがここで差し遅れながらダービーで巻き返した。クラシック全体を見通しながらレースを見守りたい。

またサトノヘリオスの父エピファネイアも2強に比肩する。

一方、産駒が未だ馬券に絡んでいないのがキタサンブラック。これは芝2000mの傾向ではなく、中山全体でも【1-0-1-33】複勝率5.7%と苦戦している。形態が似ている福島コースでも連対がなく、イクイノックスは過信禁物だろう。

中山芝2000m・過去5年の騎手別成績,ⒸSPAIA


<中山芝2000m・過去5年の騎手別成績>
ルメール【29-15-7-36】勝率33.3%/連対率50.6%/複勝率58.6%
武豊【4-7-5-16】勝率12.5%/連対率34.4%/複勝率50.0%
福永祐一【3-5-5-16】勝率10.3%/連対率27.6%/複勝率44.8%
田辺裕信【14-16-13-85】勝率10.9%/連対率23.4%/複勝率33.6%

騎手別成績ではルメール騎手が連対率5割超えでトップ。全体の単勝回収率96%も騎手人気を考えれば素晴らしい数字だ。ただ過去5年の皐月賞では【1-0-0-4】、2017年のレイデオロを除く4頭が3番人気以内であったことを踏まえると若干ながら信頼度は落ちる。

サンプルは少ないものの、騎乗馬の半数を馬券圏内に導いているのが武豊騎手。継続騎乗の場合は単複ともに回収率が110%を超えているのも好材料だ。ただ同ジョッキーはナリタタイシン以降皐月賞で後方から運ぶケースが多く、現在のレース傾向とは逆になっている点が懸念として残る。

関西からもう一人挙げるならば福永祐一騎手。関東馬に騎乗する場合は【1-3-3-6】複勝率53.8%、2・3着で穴を開けることがしばしばあり、複勝回収率は199%に達している。

またお膝元の関東からは田辺裕信騎手が5番人気以下で複勝率30.8%、かつ複勝回収率191%で注目したい。

中山芝2000mコースデータ,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

《関連記事》
【皐月賞】データはキラーアビリティ筆頭 逆転候補はダノンベルーガとジャスティンロック
【皐月賞】ハイブリッド式消去法の本命候補は? 「桜花賞V」川田将雅か、「常に人気以上の好走」穴馬か
【皐月賞】G1からG1へ 2戦2勝の直行ローテで先輩たちに続け、キラーアビリティ

 コメント(0件)