中山芝1800m三連戦
3月の中山は芝1800mの重賞が立て続けに3レース施行される。フラワーCはその三連戦の最終戦にあたる。好走傾向をつかめれば、1枠1番に入ったスタニングローズの勝利は読めたのではないか。
初戦中山牝馬Sは前半1000m通過1.00.2、後半5ハロン連続11秒台が続く持続力勝負になり、外から8枠クリノプレミアムが1.46.8で差し切った。次戦スプリングSは雨の影響を受けたやや重で行われ、前半1000m通過1.00.8、1枠から逃げたビーアストニッシドがマイペースを守り、残り400~200m11.3でケリをつけた。勝ち時計は1.48.4。中山牝馬Sのように後半厳しければ、外から来る差し馬、反対に緩い流れの瞬発力勝負になれば、インを通る先行型に利がある。
天候が回復し、芝が良に戻ったフラワーCは組み合わせ的に緩い流れになる公算が高く、3歳牝馬同士だけに古馬のレースのように後半シビアなラップ構成も考えづらい。2番人気で勝利したスタニングローズの競馬は事前の見立てに合致した理想的な競馬だった。
昨秋の疲れをとり、その経験を武器に
発馬こそ遅れ気味だったが、その後1コーナーまでの立て直しが見事で、インの3番手、ポケットに入って1コーナーへ。ここが勝因といってもいい。芝1800mは1コーナーまで距離がなく、出遅れるとリカバリーが難しい。スタニングローズは致命的ではなかったものの、ゲートで遅れており、位置を下げる恐れはあった。鞍上の冷静な立ち回りが理想的な競馬を作った。
前半1000m通過は1.01.3で最終戦にしてもっとも遅い流れ。レースが動いたのは一旦後方にいたデインティハートが仕掛けた4コーナー手前あたり。スタニングローズはポジションの差を利用して外から来る馬をやり過ごした。スプリングSと同じく残り400~200mで最速11.4を記録。ここで外から動いた組は最後の坂で苦しくなった。スタニングローズは直線に向いてから満を持してスパート、距離ロスのない前半の運びがあったからこそ、鋭く伸びた。
母ローザブランカの母はローズバド。ご存じロゼカラーの牝系、バラ一族の末裔だ。この一族は祖母や母のように3歳春後半から秋にかけて強くなる。スタニングローズは2歳秋に牡馬相手のマイル重賞に連続出走するなどイメージはやや異なる。きっとノーザンFの育成力もあっただろう。その2歳秋の経験を生かし、同時に疲労を上手にとったことで3歳春に重賞を勝てた。陣営は「超回復」とそれを表現するが、欲しいものは手に入れ、いらないものを遠ざける、このローテは見事だった。バラ一族はまだまだここから強くなる。祖母ローズバトはオークスで猛然と追い込んでレディパステルの2着だった。距離はこなせる。
器用さみせたニシノラブウインク
2着9番人気ニシノラブウインクは逃げたコルベイユの背後の番手追走。こちらも流れとしては理想的な競馬。最後の直線では早めにコルベイユが下がり、一旦先頭。ゴール寸前までよく粘った。これまではやや消極的な競馬も多かったが、この積極策は今後に向けて収穫あった。この競馬ができれば、2勝目は近いのではないか。
3着1番人気シンティレーションは乾いたとはいえ、やや力のいる馬場状態だったことが響いた様子。スタニングローズの後ろに位置し、競馬としては悪くなく、こちらも武史騎手らしくデインティハートらの仕掛けにつられず、一旦待って仕掛けた。弾けなかったのは前半の追走で体力を消耗してしまったからか。それでも3着確保は力の証。もっと体力がつけば重賞でもいずれ通用する。
先に動き、結果としてレースのポイントになったデインティハートは5着。スタートで遅れ、前にとりつけなかったため、後半で早めに仕掛けざるを得なかった。どちらかというとスタミナを生かしたいタイプ。早めに仕掛けて厳しい流れに持ち込むという作戦だったが、急坂で末脚が鈍ったように、現状ではそれに応えられるほどの力がない。キツい競馬をしたあとなので、疲れをとりつつ、次の目標に進んでほしい。
3番人気6着パーソナルハイはスタートが悪く、中団後ろから。3コーナーで先に反応が悪くなったようにコーナーが鋭い中山は合わなかった印象。食い下がるように前を追いかけるも、最後の直線ではシンティレーションに内に押し込められ、接触する場面もあった。これら反応の悪さは競馬場への適性なのかどうか、今後見極めていきたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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