「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【弥生賞】中心は底知れぬ成長力を見せたインダストリア 穴は3歳世代トップ級を相手に常に善戦のアスクビクターモア

2022 3/5 17:00山崎エリカ
2022年弥生賞_PP指数,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

弥生賞はスローペース傾向

弥生賞は皐月賞のトライアル。実績馬にとってのトライアル及びステップレースの目的は、本番をピークで出走できるように、肉体に負担をかけず、心肺持久力(スタミナや粘り強さ)を強化することが目的となる。つまり、実績馬にとっては叩き台の一戦。皐月賞に出走するにあたって賞金が足りている馬は、無理をさせず、仕掛けを遅らせる傾向がある。また、追走力のない馬は先行させる場合があるが、それらはレースを作れる馬ではないので、ペースが上がりにくいのがポイント。

過去10年の弥生賞を見ても、良~稍重馬場で行われた年でハイペースになったのはマカヒキが優勝した2016年のみ。この年は逃げなければ持ち味が生きないケンホファヴァルトがハナに立ったシャララに競り掛けてハナを奪い切って大逃げを打ったもの。このように何が何でも逃げたい馬と同型馬がいた場合はハイペースになることもあるが、基本的にはスローペース傾向。本番と同舞台で行われるが、本番と違い向正面でペースが上がらないことが多い。

今回は何が何でも逃げたいメイショウゲキリンが出走。向正面であまりに緩めすぎるとペース察知力の鋭い横山典騎手&マテンロウレオあたりに捲られてしまう可能性もあるが、同型馬不在で先行馬が手薄なここは楽に前に行けるだろう。前に行ける馬、決め手ある馬を中心に予想を組み立てたい。

能力値1~5位の紹介

2022年弥生賞_PP指数,ⒸSPAIA



【能力値1位 ドウデュース】
9月小倉の新馬戦でラスト2F11秒4-11秒1と加速する流れを差し切り勝ち、デビュー戦から高い素質を見せていた馬。その後も順当に上昇し、前々走のアイビーSは序盤内から3頭目で窮屈になり少し引っ掛かってはいたが、なだめて3列目を追走。最後の直線は楽な手応えのままラスト1Fで抜け出し、最後はグランシエロをクビ差凌いでの勝利。

前走は朝日杯フューチュリティSを優勝。2歳マイル王の座を手にした。ただ前走は逃げ馬揃いでレースが緩みなく流れた中、前半は無理をさせず中団の外目を追走、3~4角で外からじわっと動いたことで展開に恵まれた。内が荒れている馬場状態の中での外差しと立ち回りが完璧だった。

今回は前走で自己最高指数を記録した後の始動戦。当然、ここが目標ではない。実際、最終追い切りは芝かポリトラックが主流の友道厩舎がCウッドで追い切っているあたり、調整遅れが受け取れる。ここも能力で突破しても不思議はないが、不安材料のある1番人気を中心視はできない。上位評価はするが過大評価は禁物だ。

【能力値2位 マテンロウレオ】
デビュー2戦目のホープフルSでは6着に敗れたが、次走のきさらぎ賞では初重賞制覇を達成した馬。新馬勝ち直後のG1挑戦となると素質馬でも勝つのはなかなか難しい。しかし、昆調教師の「東の大舞台が目標」という強気のコメントに応える成長を見せ、前走は今回のメンバーではドウデュースに次ぐ高指数での優勝だった。

ただ、きさらぎ賞は12日間行われた1回中京開催の最終日で時計の掛かる馬場状態だった。しかも逃げたメイショウゲキリンにセルケトが競り掛けたことで、前へ行った馬には厳しい流れ。先行馬2頭から少し離れた位置にいた1番人気ストロングウェルも5着に敗れている。

つまり、後方2番手から3~4角の外から徐々に進出し、4角出口で中団まで押し上げたマテンロウレオは展開に恵まれた。外を回るロスはあったが、ペースを考えるとベストなタイミングで仕掛けており、鞍上の好騎乗だったと言える。最後の直線で少しふらついて手前換えがスムーズではなかったこともあり、昆調教師は「まだ全力では走っていない感じ」と今回も強気だが、現状では人気ほど信頼はできない。

【能力値3位 ラーグルフ】
新馬戦では出遅れ後方からのレースで、最後の直線でも伸びず9着と大敗。その後、未勝利、芙蓉Sを連勝しホープフルSでも3着と好走した馬。未勝利戦は人気薄の逃げ馬が2着に粘る前有利の流れを好位の内で流れに乗り1着。芙蓉Sは前がペースを引き上げてラスト1Fでバテたところを中団よりやや後方の外から差して1着と、この時点ではフロック感が強かった。

しかし、ホープフルSは平均ペースで流れた中、好位の内から3~4角で位置を上げていく好内容の走りで3着。デビュー戦で走っていない馬ほど軌道に乗れば強くなるものだが、同馬はまさにそのタイプ。一戦ごとに着実に成長している。これまで4戦して2度出遅れており、内枠では出遅れ位置を下げてしまう不安もあっただけに、今回外枠に入ったのはプラス。前走で自己最高指数を記録した後の始動戦で不安もあるが、警戒はしておきたい馬だ。

【能力値4位 メイショウゲキリン】
デビューから3戦はダートを使われていたが、4戦目の黄菊賞で初めて芝に挑戦し、いきなり2着と好走、高い芝適性を見せた。黄菊賞の勝ち馬ジャスティンパレスは後のホープフルSの2着馬。前走のきさらぎ賞は8番人気と人気薄だったが、3着と好走して当然だったと言える。

また前走は道中でセルケトに競られてペースを緩めることができず、結果差し馬有利の流れとなってしまった。前走は消耗度が高く、疲れが残りやすいレースだっただけに、大幅な上昇は期待できないが、今回は先行勢が手薄なメンバー構成。捲りを得意とする横山典騎手騎乗のマテンロウレオに向正面で捲ってこられると厄介だが、後続馬の仕掛けのタイミング次第では前走よりも展開が向く可能性はある。指数上位が示すように、ここでも上位に粘り込んで不思議ない馬だ。

【能力値5位 インダストリア】
デビューから2戦は芝1800mを使われ、2戦目の未勝利戦では、上がり3Fタイム2位の2着馬を0.6秒も上回る上がり3Fタイムを記録。未勝利クラスとしてはなかなか優秀な指数での勝利だった。前走のジュニアCはいきなりのリステッド競走挑戦で距離も短くなり、レースの流れに乗れるかという不安点もあった。

しかし、これまでにない行きっぷりを見せレースの流れに乗り、好位の中目を追走。少し掛かり気味になるほどの前進気勢で勝ちを意識するポジションから突き抜けたレースぶりは、大きな成長を感じさせた。前走を含めデビューから3戦連続でメンバー最速の上がり3Fタイムを記録、まだ底を見せていない点も魅力だ。

今回は初の芝2000mとなる点が不安で、できれば距離損なく走れる内枠が欲しかった。しかし、前走はデビュー2戦で見せたゲートや二の脚の甘さが改善され、底知れぬ成長力を見せ、大きな期待をしたくなる馬だ。

穴は3歳世代トップ級を相手に常に善戦のアスクビクターモア

アスクビクターモアは昨年6月のジオグリフが勝利したハイレベルな新馬戦で3着。同レースは外枠から逃げ馬に並びかけ、3角手前では先頭に立ちそこからの3着。中団の外から動いた2着のアサヒよりも明らかに内容は濃かった。好位の内にいたジオグリフと同じ位置でレースを進めていれば、差のない競馬をしたと推測される内容。

2戦目の未勝利戦ではアサヒを撃破し勝利。前々走のアイビーSでは、今回で能力値1位のドウデュースを相手に3着。内枠から好発を切って外のケッツァーを行かせて2列目の内を追走。レースはややスローペースでドウデュースに対して位置取りの優位性はあったが、4角手前から直線序盤にかけて進路がなく、仕掛けが遅れたことを考えれば悪くない内容だった。

また前走の1勝クラスは、好位の外を追走したものの、前に壁が作れずやや引っ掛かったが、3角では自然な形で2列目にいたレヴァンジルの外まで上がって行く形。同馬が4角で一気にペースを引き上げたので、アスクビクターモアも仕掛けて直線へ。最後はしぶとく伸びてクビ差での勝利だった。2着レヴァンジルは次走ゆりかもめ賞を勝利し、先週のすみれSでも逃げて2着に粘った実力馬である。

ゲートも上手く、スピードもあるせいか、新馬戦時は早仕掛けで伸び切れなかった。常に勝ちを意識し、早めの競馬をしていることが最後の甘さに繋がっている印象がある。唯一、展開を含めいい位置で競馬が出来たアイビーSは、前が壁になった。もう少し脚をタメる競馬なら、今まで以上の爆発力を披露するのではないかと見る。能力覚醒はこのレースか?

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ドウデュースの前走指数「-14」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.4秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

《関連記事》
【弥生賞】ジャスティンロックは消し! ハイブリッド式消去法で浮上したのはドウデュースと好勝負歴がある伏兵
【弥生賞】2歳王者ドウデュースが中心! 可能性秘める逆転候補はリューベック
【弥生賞】ドウデュース、小回り中距離でさらに上昇 ディープインパクト産駒アスクビクターモアが穴候補

 コメント(0件)
    SPAIAちゃんねるバナー