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【セレクトセール総括】2日間で史上最高額225億円を記録 注目されたディープインパクト産駒は意外な結末に

2021 7/14 13:30三木俊幸
2021年セレクトセ―ル結果,インフォグラフィック,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

1億円超えは52頭

近年は落札金額が高騰し、その影響で平均価格も上昇するなど金銭感覚が麻痺してしまうほどのセレクトセール。今年は最終的な結果を見ると、1歳部門で落札された総額は116億3,800万円、当歳は109億2,300万円万円といずれもレコードを大幅に更新し、2日間合計では225億6,100万円という盛況ぶり。1億円以上で落札された馬は1歳が28頭、当歳が24頭で合計52頭もいた。また落札率も高く、1歳が93.4%、当歳が92.6%とかなり高かった。

注目のディープインパクト産駒の結果、そして最高価格はいくらで誰が落札したのか、振り返っていく。

スイープトウショウの2020は2億円

早朝から雨が降る中で始まった1日目の1歳セッション。注目は何と言ってもディープインパクトの最終世代となる4頭に注目が集まった。トップバッターに登場した1番のゴーマギーゴーの2020。最初ということでやや重い空気が場内に流れる中、2億円からスタート。テンポよくとは行かなかったものの、最終的には3億円で長谷川祐司氏が落札した。

2頭目に登場したディープインパクト産駒は52番ワッツダチャンセズの2020。同馬がまだ厩舎で待機しているところに訪問し、追分ファームのスタッフと少し話すことができた。やはり期待は大きく、以前社台スタリオンでも働いていたという方からは「特に斜め後ろから見るとディープにそっくり」と語っていた。

セレクトセール2021に上場されたワッツダチャンセズの2020,ⒸSPAIA

ワッツダチャンセズの2020ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

馬房から出されると数人のスタッフによって丁寧に準備が整えられ、皆の思いを背負って出発。結果は8,000万円からスタートして最終的には1億2,000万円で廣崎利洋HD(株)が落札した。

唯一社台系以外の牧場から上場された130番ジュエルメーカーの2020。8,000万円からスタートしたが、金額は上がらず主取となってしまった。

外は薄暗くなった19時過ぎ、1日目の最後に登場したスイープトウショウの2020。最高額はこの馬になるのではないかと見られていた。オークショニアから「1ビット、よろしくお願いします」との声がかけられると「2億!」の声が上がりそこからスタートすることに。しかし、その後誰一人として手をあげず──。そのまま池田豊治氏が落札した。2億円という金額は決して安くないが、期待が大きすぎただけに思わず拍子抜けしてしまう結末だった。

初日最高額は3億円

セレクトセール2021に上場されたファイネストシティの2020,ⒸJapan Racing Horse Association

ファイネストシティの2020ⒸJapan Racing Horse Association

1日目の最高額は先述の1番ゴーマギーゴーの2020、100番ファイネストシティの2020(父ロードカナロア)の2頭がマークした3億円。ファイネストシティの落札者はサイバーエージェント代表の藤田晋氏で、今話題の“ウマ娘”を運営するサイゲームスは子会社にあたる。

2億6,000万円で3番目の高額落札馬となったのは、241番ギエムの2020(父シルバーステート)。ショウナンの冠名でおなじみの国本哲秀氏が購買している。2歳が初年度産駒ですでに4勝をあげる活躍を見せてはいるものの、ここまで高額になる馬が出るのは意外な印象を受けた。

以下、ロードカナロア産駒の38番エピックラヴの2020が2億4,000万円で(株)ダノックスに、96番クイーンズリングの2020が2億2,000万円で金子真人ホールディングス(株)によって落札されている。

2日目の最高価格はキズナ産駒

セレクトセール2021当歳馬の一斉展示の様子,ⒸSPAIA

一斉展示の様子ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

2日目は天候が回復。晴天のもとで朝8時から当歳馬の一斉展示が行われ、その後にセリがスタートした。この日最初の上場馬となったのは、ファイネストシティの2021(父レイデオロ)。5,000万円からスタートして最終的には1億5,000万円という金額で(株)ダノックスが落札した。

レイデオロ産駒は16頭が上場され、最も高値だった334番モルガナイトの2021はホウオウの冠名でおなじみの小笹芳央氏、403番リンフォルツァンドの2021は国本哲秀氏によって、それぞれ1億8,000万円で購買されている。1億円超えは5頭と高評価だった。

セレクトセール2021で最高額で落札されたセルキスの2021,ⒸSPAIA

セルキスの2021ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

最高価格となったのは、上場番号428番セルキスの2021(父キズナ)。4億1,000万円で落札したのは小笹芳央氏だった。小笹氏は、「毎年絶対に落札したい馬がいるが、今年はこの馬だった。3億円を超えたあたりからドキドキワクワクしていた」とコメント。栗東・矢作芳人厩舎に入厩予定となっている。

(株)ダノックスが3億7,000万円で落札した398番ヤンキーローズの2021(父ロードカナロア)、三木正浩氏が2億8,000万円で落札したラヴズオンリーミーの2021(父ハーツクライ)など、実績のある種牡馬の産駒を上回る評価だっただけに、2年後どのような走りを見せてくれるのか楽しみだ。

その他では、初年度産駒のブリックスアンドモルタルも464番ランズエッジの2021が1億500万円で大野剛嗣氏に、379番マンハッタンセレブの2021が9,000万円で(株)NICKSによって落札されるなど評価が高く、来年以降のセリでも注目したい存在となりそう。

“ウマ娘”効果で爆買い

最後に2日間で多くの金額を投資した馬主トップ5についても見ていく。トップは1日目に15億4,100万円(12頭)、2日目に8億2,600万円(6頭)、総額23億6,700万円を使った藤田晋氏。12億6,000万円で2位となった(株)ダノックス、10億5,700万円で3位の金子真人ホールディングス(株)といった常連組を大きく上回る金額。最後に上場された541番アイムユアーズの2021も1億5,000万円で落札するなど、藤田氏による爆買いは最後の最後まで続いた。

9億3,400万円で4位だった小笹芳央氏は、1歳は1頭のみ(3,400万円)のみの購買だったのに対し、当歳馬は1億円以上が3頭と狙いを定めての参戦だったのが窺えた。

5位は8億400万円だった三木正浩氏。1歳、当歳とも積極的に参加し、ラヴズオンリーミーの2021に加え、一際目立つ好馬体の持ち主だったJustify産駒の344番カレドニアロードの2021を1億3,500万円で落札するなど、要所で存在感は見せ付けていた。

今回取引された馬たちは金額に見合う活躍ができるのか、またビッグレースを勝つことはできるのか。答えが出るのは数年後となるが、夢を持って購入された馬たちが1頭でも多く競馬場で活躍する姿が見られることを期待したい。


ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在は競馬ライターとしてだけでなく、カメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場で取材活動を行っている。