先週末は一転して先行馬が活躍
春のGⅠ戦線でも活躍が期待される古馬たちによる一戦、AJCC(GⅡ・芝2200m)。最終週となる中山競馬場の芝コースを味方にできるのはどの馬なのか、先週末の馬場傾向と出走各馬の適性からレースを分析していく。
先週末のクッション値は土曜日が10.4、日曜日が10.5と引き続きやや硬めとなっていた。しかしゴール前の含水率は土曜日が10.2%、日曜日が10.7%となっており、これまでの傾向からは、土曜日の方が速い上がりが出やすい馬場状態だったと分析する。
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実際、土曜日の1600mで争われた3歳新馬戦ではオメガロマンスが上がり33.5を使って差し切っている。2日間を通じての勝ちタイムについては、下級条件のレースが多かったにせよ、平均からやや遅めだったと言えるだろう。
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コーナー通過順位から脚質の傾向について振り返ると、土曜日前半は後方からの差しが決まるレースがあったものの、レースが進むにつれて先行有利の馬場となり、2日間の合計10レース中6レースの勝ち馬が4角2番手追走だった。
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加えて各馬が直線で通ったコースを調べると、差しが決まった土曜日の3歳新馬戦は内から3頭分、菜の花賞は内ラチ1頭分を空けており、徐々に内が悪くなっているのかと思えた。しかしその後の7レース中5レースの勝ち馬が内から3頭目以内を通って勝利していることからも、内外の差はほとんどないと言っていい。
先々週は差しが届きやすい傾向で、先週は先行馬が残る傾向と何とも読みづらい馬場ではあるが、今週末は2日間とも雨予報が出ている。昨年12月からの連続開催最終週、雨の中でレースが進んでいき、AJCCが行われる頃には外差しが決まりやすい馬場になっているのではないかと想定する。
上位3頭は道悪実績あり
AJCC出走馬の中でピックアップしたいのはアリストテレス、サトノフラッグ、ヴェルトライゼンデ、ウインマリリン、ステイフーリッシュ、モズベッロ、ノーブルマーズの7頭。そこから先週までの馬場傾向、今週末の天気、出走馬の適性を考慮した結果、以下の予想とした。
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本命はサトノフラッグ。中山コースでは重馬場の弥生賞ディープインパクト記念を勝利、良馬場ながらかなりの時計・上がりを要する馬場だったセントライト記念で2着となっている実績を評価。後方からレースを進めるも、4角ではある程度の位置まで押し上げることができる脚質、道悪もプラスに働く。
対抗はモズベッロ。2走前の宝塚記念はレース前に激しく降った雨の影響で、稍重という発表以上に力のいる馬場状態だった。1、2着馬には離されたものの、後方から追い込んで3着と好走した点からも今回の馬場は向きそう。前走をひと叩きされての上積みも期待できる。
3番手は堅実な走りをみせるステイフーリッシュ。なかなか勝ちきれないが、2200mの重賞は【1-2-2-0】、道悪で時計・上がりのかかる馬場も全く苦にしない。ここも馬券圏内に好走する可能性は高い。
菊花賞でコントレイルをあと一歩のところまで追い詰めたアリストテレスだが、今回は4番手とした。能力は申し分なく、あっさり勝たれても不思議ではないが、ベストパフォーマンスが発揮できる舞台は、直線の長いコースの良馬場の持続力勝負でタイプだと考える。
穴で押さえておきたいのはノーブルマーズ。8歳を迎え、近走成績は振るわないが、昨年の京都記念は道悪でステイフーリッシュと0.1秒差の4着。前走のカシオペアSも8着ながら勝ち馬とは0.4秒差、やや短い1800mでも内容は悪くなかっただけに、距離延長と道悪という条件であれば、激走の可能性もある。
なおヴェルトライゼンデとウインマリリンの2頭については、今回無印とした。ヴェルトライゼンデは、小回りの中山コースでもホープフルSとスプリングSで2着と結果を残しているが、父ドリームジャーニーほどの器用な立ち回りができるタイプではない。2200mという距離は歓迎材料だが、広いコースの方がより良いタイプだと見て今回は見送る。
ウインマリリンについては、切れる脚が使えるタイプではないので中山コースは合っているが、フローラS、オークス、エリザベス女王杯とある程度の高速馬場で結果を残してきている。それだけに先週の馬場状態ならば印を回したかったが、内が悪い道悪馬場になることを考慮した。
▽AJCC予想▽
◎サトノフラッグ
○モズベッロ
▲ステイフーリッシュ
×アリストテレス
☆ノーブルマーズ
ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在は競馬ライターとしてだけでなく、カメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場で取材活動を行っている。