感動の瞬間、再び
ご存じの通り、デアリングタクトが無敗で牝馬三冠を達成した。オークスを勝った時は「馬が強かった」というのが正直な印象だったが、今回真っ先に頭に浮かんだのは「うまく乗ったな」と。三冠達成は実力だけでなく、全てがかみ合わないと達成できないこと。最後の一戦がまさに集大成、この馬のベストレースだったのでは。ともかく、関係者にはおめでとうございますと伝えたい。
さて、牡馬三冠の中で「最も強い馬が勝つ」といわれているのが、10月25日(日)に京都競馬場で行われる第81回菊花賞。ここまで6戦6勝、前走も文句なしのパフォーマンスを見せて王手をかけたコントレイルに当然ながら注目が集まる。今年の3歳馬の中で抜けた存在なのは一目瞭然だが、果たしてデータから見ても死角はないのかどうか。今回も2010~2019年までの過去10回のデータを基にして検証していきたいと思う(特別登録時点のメンバーでの予想)。
関西馬が断然
牡馬三冠の中で唯一関西で行われるのが菊花賞。地元の利もあるのだろうが、とにかく栗東所属馬が強い。連対馬20頭中19頭が関西馬。3着にまで広げても、馬券に絡んだ30頭のうち28頭がそれに該当している。
関東馬が連対したのは2018年のフィエールマンだけで、3着も2014年のゴールドアクターだけ。両馬とも古馬になってから大レースを勝つ実力馬である。この時点で将来を予測するのは難しいが、個人的に「これは出世する!」と感じている美浦所属馬がいるならば、狙ってみるのもありだろう。
注目のコントレイルは栗東所属馬だから、まず1つ目はクリア。
栗東所属馬が強いのはデータが示す通りだが、騎手の成績は少し違う。栗東所属馬に乗った騎手を東西別に比べてみると、栗東所属騎手の勝率6.4%、連対率13.6%に対して、美浦所属騎手の勝率は11.8%、連対率は17.6%と大きく上回っている。2012年のゴールドシップ、2015年のキタサンブラックなどがそれに当たる。
前走3着以内がほぼ必須
前哨戦を使わず直接GIに使う、いわゆる「ぶっつけ本番」が主流になりつつある。先週行われた秋華賞でも、1番人気に推されたデアリングタクトはオークスからのぶっつけだった。
ちなみにこの言葉を辞書で調べてみると「下調べや準備、事前の相談なしに、直接または、いきなり物事を行うこと。また、そのさま」となっている。古きよき時代ならまだしも、放牧先の施設が充実している現代である。しかも、目標であるGIへ出走するのに全く準備なしに挑む馬はまずいない。そう考えると、この「ぶっつけ本番」という言葉はふさわしくないのかもしれない。
この菊花賞は長距離レースということもあり、前哨戦を使ってくるパターンがほとんど。中10週以上で出走してきた馬はここ10年で8頭しかいない。最も成績がいいのは中3週の【8-6-4-54】。これは神戸新聞杯を使った時の間隔になる。続いて中4週の【1-4-4-69】で、こちらはセントライト記念を使うと中4週となる。
連対馬20頭のうち、最も前走間隔が長かったのは中15週で使ってきた2018年のフィエールマン。とはいえ、基本的に菊花賞は中3週で使ってきた馬が強く、続いて中4週。久々では厳しいと考えていいだろう。
上記でも少し触れたが、最も結果を出している前哨戦は神戸新聞杯組で【8-6-4-46】。連対馬の半分以上がここを経由していることになる。ただし、かつては神戸新聞杯組同士での決着というケースも見られたが、ここ5年は神戸新聞杯組と他路線という組み合わせが続いている。とはいえ、10年連続で神戸新聞杯組が連対している事実からも、この組を外すわけにはいかない。
続くのは同じくトライアルであるセントライト記念だが、こちらは【1-3-1-47】。連対馬を4頭出しているとはいえ、神戸新聞杯組と比べると見劣ってしまうのは否めない。ラジオNIKKEI賞組からも勝ち馬が出ているが、これも上に出てきたフィエールマン。これは例外と考えていいだろう。何せ久々や関東馬などの不利なデータを覆しての勝利。こういう年に当たったら、運がなかったとあきらめるしかない。
なお、2勝クラス経由から連対馬こそいないが、5頭の3着馬が出ている。古い年から順に13、3、7、13、10番人気となっており、この組が絡めば高配当が見込めそうだ。単純計算だと2年に1回は2勝クラス経由の馬が3着に来ていることになるが、昨年は該当なし。3連系を狙うなら十分選択肢に入ってくる。
コントレイルは中3週の神戸新聞杯を使っての出走となるので、この項目も無事クリアとなる。
菊花賞における理想のキャリアは何戦くらいなのだろうか。調べてみると、キャリア3~9戦の間からまんべんなく勝ち馬が出ていた。ただ、ある程度の出走数がいて最も勝率がいいのはキャリア6戦。20頭が出走して勝率15%、連対率25%は悪い数字ではない。
コントレイルはここまでキャリア6戦。データ的にベストである。ちなみに、三冠馬ディープインパクトもキャリア6戦で菊花賞に挑んで三冠を達成している。
最後に前走着順を見ていく。掲示板に載っていればよかった秋華賞より条件が厳しくなり、好走するには前走3着以内が必要となる。4着以下から挑んだ79頭のうち、連対したのは2017年の2着馬クリンチャーしかいない。3着まで広げても2012年ユウキソルジャー(神戸新聞杯4着)、2016年エアスピネル(神戸新聞杯5着)が加わるだけ。
また、前走で2、3着から本番で連対した13頭のうち、12頭はコンマ5秒差以内であった。たとえ前走で2、3着だったとしても、勝ち馬から大きく離されているようだと厳しいようだ。
コントレイルは神戸新聞杯を勝っているからこの項目も全く問題なし。
いざ三冠達成へ
神戸新聞杯では馬体の増減が鍵と書いたコントレイルだが、無事減らすことなく出走。結果は見ての通りで、アクシデントさえなければ三冠濃厚ではないかと思わせた。
菊花賞は冒頭でも書いたように「強い馬が勝つ」といわれるレース。データからも実績馬、そして前走好走馬が活躍するという数字がより強く出ていた。コントレイルは減点なしはもちろん、好走率が高い「キャリア6戦」の馬でもある。秋華賞に続いての三冠達成は濃厚とみたい。
コントレイル以外にデータ上での有力となるのはどの馬か。最有力ステップレースの神戸新聞杯組からは2着馬ヴェルトライゼンデ。キャリア以外の項目はコントレイルと同じだし、兄が菊花賞馬なのだから舞台設定も文句なしだ。
続いてはバビット。神戸新聞杯組と比べると分の悪いセントライト記念組だが、それ以外は特に減点なし。コントレイルと同じキャリア6戦というのも魅力。
3着候補の2勝クラス経由組だが、ここ10年で3着に入った5頭の共通点は(1)前走勝ち(2)前走2200m以上、そして気になったデータでは(3)5頭中3頭がキャリア8戦、ということ。この3つの条件に当てはまるのは抽選対象のアリストテレスだけ。ここ10年、2勝クラス経由組が2頭以上馬券の対象になったことはないので、ここからはアリストテレスのみを選出。
あと付け加えるならガロアクリークとサトノフラッグか。ともに美浦所属でセントライト記念組だから少し割引なのだが、着順や着差ほど致命的な減点ではなく、連なら十分可能性はありそうだ。
◎コントレイル
〇ヴェルトライゼンデ
▲バビット
△ガロアクリーク
×サトノフラッグ
×アリストテレス
《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
昔の菊花賞は母系にリアルシャダイの血を引く馬を狙うとよく高配にありつけました。しかし、今は母系より父がディープインパクトか、そうでないかの方が重要視されているような。血統解析も時代とともに変わっていくということなのでしょうか。