直線で切れる脚がポイント
JRAヒーロー列伝コレクションのポスターでこんなキャッチフレーズの名馬がいる。「勝ち方を極めたい。」日本競馬史上初の無敗クラシック三冠馬シンボリルドルフに贈られた言葉である。その後、この偉大な記録に並ぶことができたのはディープインパクトのみ。今年はその大記録にコントレイルが挑む。
菊花賞が行われるのは芝3000mの長丁場。向正面の上り坂手前からスタートし、外回りを1周半する。スタートしてすぐに3コーナーがあるためコースロスがない内枠が有利となっていて、近10年間の菊花賞では1~3枠に入った馬が[7-2-1-50]と大きく勝ち越している。
また、長距離戦という事もありスローペースになる事が多く、直線で切れ味のある馬が台頭するケースも目立っている。上がり3ハロン2位以内の末脚で勝った経験が、過去10年間の勝ち馬に共有されている。
単勝1倍台なら勝率100%
過去10年、1番人気の成績が[5-1-2-2]で6連対だが、単勝1倍台になると[3-0-0-0]と一気に信頼感が増す。
オルフェーヴルが勝った2011年は2着に2番人気のウインバリアシオンが入り馬連330円、2012年ゴールドシップの時は5番人気スカイディグニティとの決着で馬連960円、2013年エピファネイアの時も5番人気のサトノノブレスとの組み合わせで馬連950円。圧倒的な1番人気がいる際には固い決着になっている。
近年の勝ち馬のステップレースは神戸新聞杯が圧倒的で[8-6-4-46]の成績。毎年、神戸新聞杯で3着以内の馬が必ず馬券に絡んでいる。今年は中京競馬場での開催となったが、本番でどの様な影響がでるだろうか。セントライト記念組は[1-3-1-47]の成績。過去にはキタサンブラックがここをステップレースに使っていて、連対馬には注意が必要だ。
春二冠馬の菊花賞成績
過去に皐月賞、日本ダービーを制した春の二冠馬は23頭。うち菊花賞へ駒を進める事ができたのは15頭である。いかに順調に夏を越える事が難しく、サラブレッドが繊細な生き物か分かる。三冠に挑戦できるだけでも凄い事だと改めて痛感する。
1984年にグレード制が導入された後は10頭が春二冠を制し、シンボリルドルフ、ナリタブライアン、ディープインパクト、オルフェーヴルの4頭が三冠馬に輝いた。今年のコントレイルはどうだろうか。目下のライバルだったサリオスは毎日王冠から中距離路線へ向かい不在。明らかな1強ムードである。
ライスシャワーの面影
そんな中、ヴェルトライゼンデが気になって仕方がない。1992年に無敗の三冠を目指してレースに臨んだミホノブルボンはライスシャワーに惜敗し涙をのんだ。その事が脳裏から離れない。
ライスシャワーは初めてミホノブルボンと対戦したスプリングSでは1.6秒も離されていたのだが、皐月賞では1.4秒、日本ダービーでは0.7秒、京都新聞杯では0.2秒と徐々に差を詰め、ついに菊花賞で逆転を果たしたのである。京都新聞杯では初めて上がり3ハロンタイムでミホノブルボンを上回っていた。
ヴェルトライゼンデはどうだろう。初めて対戦したホープフルSでは0.2秒差だったタイム差が皐月賞では1.2秒差まで開いてしまう。その後ダービーで0.8秒差、神戸新聞杯では0.3秒差と再びタイムを詰めてきた。前走で初めて、上がり3ハロンタイムでライバルを上回った事、2勝で菊花賞に挑む事や、騎手がコンビ5戦目という事もライスシャワーと一致している。
半兄は昨年の菊花賞馬ワールドプレミア、騎手はオルフェーヴルで三冠を経験している池添謙一騎手。一発があっても何ら不思議はない。
《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。