デアリングタクトに死角はあるか
今週日曜に行われる秋華賞。3歳牝馬3冠レースの最終戦だ。今年は上位人気が想定される何頭かの馬について、死角が多いように感じられる。各馬について考察していこう。
デアリングタクトの強さは語るまでもないが、過去の名馬と比較するなら“ウオッカ級”だと言える。ウオッカとデアリングタクトはどちらもエルフィンSを使っているが、その時計や上がり3Fのタイムが、まさに瓜二つなのだ。
エルフィンS
デアリングタクト 勝ち時計1.33.6 上がり34.0
ウオッカ 勝ち時計1.33.7 上がり34.0
全体時計はデアリングタクトの方が速く、レースのラスト2Fラップでも11.7秒→11.4秒と加速しており、まだ余裕があったとすら判断できる。桜花賞・オークスと、馬場もペースも全く異なるレースを両方ともあっさり勝ち切っており、弱点らしい弱点は見当たらない。
極悪馬場だった桜花賞は、出走した各馬が大きなダメージを受けて、1着デアリングタクト、2着レシステンシアを除く全馬が次走で馬券圏外に消えている。それだけ消耗の激しい一戦だったが、デアリングタクトは難なくオークスも勝った。2・3着には桜花賞未出走だった7番人気ウインマリリン、13番人気ウインマイティーが食い込んでいることからも桜花賞組は反動が大きかったのだろうが、それでも勝ち切ってしまったこの馬はこの世代では1つも2つも力が抜けていると認めざるをえない。
負けるとしたら精神的な問題だろう。オークスで気になったのはパドックで最後方を歩き、発汗していたことだ。初めての長距離輸送が影響した可能性も高く、関西圏となる今回は問題ないかもしれないが、そうした精神的な弱さを抱えていることも事実だ。
クラヴァシュドールに上積みなし?
次にクラヴァシュドール。2歳戦線で活躍し、オークスでは2番人気に推された馬だが、課題となりそうなのが2000mの距離。2400mのオークスでは15着、2000mのローズSは5着と、ともに人気を裏切った。
大きな成長が見込めないのも気がかりだ。ひと夏越したローズSでは数字こそ+18㌔だったが、見た目的には細く映り、春からの成長は感じられなかった。
一度叩いた上積みもないかもしれない。2歳時は1着→2着→3着と使うごとに着順を落とし、3歳春も2着→4着→15着と同じような傾向を見せていた。同じ中内田厩舎のダノンファンタジーも、昨年ローズS1着→秋華賞8着と成績を落としている。休み明けからしっかり仕上げる厩舎なので、反対に言えば、叩いた上積みは期待しにくい。
リアアメリアはペースに注文
同じく中内田厩舎所属のリアアメリア。この馬もローズSのパフォーマンスから上昇する可能性は低そうだ。
リアアメリアの好走パターンとして、左回りが得意な可能性もある。左回りではアルテミスS1着、オークス4着、ローズS1着と安定して力を出している。右回りに替わる今回は疑いたい。
また、好走の条件にはペースも関係していると考える。前半3Fが35.5秒以上かかったレースでは3戦3勝。反対に33.7秒と速かった阪神JFは1番人気6着、34.9秒だった桜花賞も10着と大敗。ゆったり運んで脚をためるのが好走パターンのため、前半3Fが遅くなるかどうかに注目したい。ちなみ秋華賞の過去10年の平均前半3Fは35.0秒なので、筆者は人気を裏切る方に賭けたいと思っている。
マルターズディオサは折り合い不安
デビューからチューリップ賞までは全て2着以内と安定していたマルターズディオサだが、桜花賞8着、オークス10着と大敗が目立ち始めた。この大敗の原因は「テンション」にあると考える。
レースぶりを見ると、休み明けから叩いていくにつれて、折り合いに苦労している点が目立つ。使えば使うほどテンションが上がってしまい、落ち着いてレースをすることができなくなってしまうのだと推測する。
休み明けの紫苑Sで勝利し、完全復活!とも判断されそうだが、復活したかどうか決めつけるのは早計だろう。休み明け2戦目の今回、テンションが上がってしまう可能性が高いので、人気でも疑ってかかりたい。
ライタープロフィール
鈴木ショータ
競馬伝道師。競馬エイトトラックマンを経てフリーに。
オリジナルのweb競馬新聞「PDF新聞」を毎週発行。
根っからの大穴党で、馬券格言は「人の行く裏に道あり”穴”の山」