仕掛けに釣られた後続馬
重賞格上げ以降は秋華賞好走馬を多く出すようになった紫苑S。今年もオークス3、5、6、8、10着馬が休み明けで出走。夏に2勝クラスを勝ちあがった上がり馬こそ不在ながら、ラジオNIKKEI賞4着パラスアテナなど今年もそれなりのメンバーがそろった。
勝ったのはオークス10着以来のマルタ―ズディオサ。チューリップ賞に次ぐ重賞2勝目を手にした。同馬が好発からハナに立つ勢いを見せるや、内枠のショウナンハレルヤが先手を主張。オークスで不安視された折り合いを1~2角のコーナリングでクリア。向正面入り口でショウナンハレルヤのリードが広がったように見えるが、ペースはスタートから12.4-11.4-12.5-12.8-12.7で前半1000m1分1秒8、ショウナンハレルヤは飛ばすどころかペースダウンしており、マルタ―ズディオサが抑えた結果だった。
課題の折り合いをクリアし、4角でショウナンハレルヤが一杯になると押し出される形で先頭。中山の仕掛けを熟知している田辺裕信騎手らしく、無理にスパートしなかった。早めにショウナンハレルヤを捕らえに動けば最後の坂で苦しくなる。4角でギアを上げすぎなかったことで、後続馬はマルタ―ズディオサに合わせスパートを遅らせた。結果的にレースを完全に支配した上での勝利だった。
田辺騎手はデータでは中山と東京を比較すると大きな差はないものの、中山では仕掛けどころなど唸らせるような騎乗が多く、今回は初角での折り合いと4角のひと呼吸待った仕掛けが見事だった。ここ4年は1分58~59秒と野芝オンリーの秋の中山開幕日らしい時計が出ていたが、今年は2分2秒1と例年以上に遅い決着だった。
直前の10RセプテンバーS(3勝クラス)が1分8秒5。雨の影響があったと考えるべきで、紫苑Sの後半1000mは1分0秒3。前半より1秒5早く、デアリングタクトに迫れるかどうかは別として、本番がスローになるようならあるいはと思わせた。ただ、チューリップ賞1着から桜花賞8着という戦歴からトライアルホースである可能性も残されており、今後の状態には注視したい。