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【札幌2歳S】データでは意外な穴馬が満点評価 「前走で未勝利勝ちの牡馬」を狙い撃て

2020 9/4 17:00門田光生
2020年札幌2歳SインフォグラフィックデータⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

勝ちタイムに注目

競馬専門紙に入社したての頃、先輩から「この札幌2歳Sで1分50秒を切ってきた馬は出世するよ」と教えてもらったことがある。なるほど、確かにダービーを勝ったジャングルポケットやロジユニヴァース、朝日杯FSで連対したコディーノやストーミーカフェなど、のちにGIで活躍した馬の名前が並んでいる。

もちろん、1分50秒を切った全ての馬がその後も活躍したわけではないが、改めてその見立ては正しいと思った次第。果たして今年の勝ち馬は1分50秒を切ってくるのか、注目である。

さて、コロナ禍の中で始まった2020年の北海道開催もあっという間に閉幕。その最終週を飾るのは9月5日に行われる第55回札幌2歳Sだ。2歳Sは札幌だけでなく、新潟も小倉も開催終盤に行われるのだが、当然ながら馬場は使い込まれており荒れた状態で行われる。昨年はゴールドシップ産駒の1、2着だったが、やはり差し馬有利の傾向となっているのだろうか。函館で行われた2013年を除く2010~2019年、過去9回のデータを基にして調べてみた。

札幌2歳S出走馬の脚質ⒸSPAIA

結果は逃げ切り1勝、先行5勝、差し2勝、そしてまくりが1勝と出た。新潟と違い、開催終盤といっても直線の短い札幌らしい数字といえるだろう。前走のレースを分析しても、先行した馬が13連対と最多。決め手より器用さが求められると考えてよさそうだ。

前走1着は外せない

札幌2歳S出走馬の前走着順ⒸSPAIA
札幌2歳S出走馬の前走人気ⒸSPAIA

キャリア1、2戦という馬が多いので当然かもしれないが、前走1着がやたらと強い。連対馬18頭中、17頭がそれに該当しているのだ。残る1頭も前走2着馬。とにかく、前走で連を確保していないと話にならない。

その前走で1番人気に支持されていた馬の成績もよく、勝ち馬9頭中8頭が該当。連対率も30%を超える優秀なものとなっている。「前走1着」は外せず、その馬が「前走1番人気」であれば文句なしだ。

札幌2歳S出走馬の前走クラスⒸSPAIA

ただし、前走1着馬が強いからといって、新馬勝ちした馬が圧倒的に強いというわけではない。むしろ未勝利勝ちした馬の方が勝率、連対率ともに上。クローバー賞やコスモス賞の前哨戦を使ってきた組の連対率も悪くなく、新潟2歳Sの時と違って新馬勝ちにこだわる必要はないようだ。

札幌2歳S出走馬の性別ⒸSPAIA

札幌2歳Sは牡馬も牝馬も同じ54キロを背負って走る。この時期は性別による能力差はないとの判断なのだろうが、このレースに関しては牡馬の勝率8.4%に対して牝馬だと3.7%まで落ちる。中距離、しかも開催最終週で荒れたタフな馬場。同斤量なら牡馬・セン馬に軍配ということか。

札幌2歳S出走馬の前走場所ⒸSPAIA

最後に、前走で走った場所を調べてみた。今回と同じ札幌を走った馬が有利かと思いきや、勝率、連対率ともに前走函館組の方が上だった。東京、新潟組からも勝ち馬が出ており、コースを経験したアドバンテージはさほどない様子。

データ的に満点のウイングリュック

何せキャリアが浅い2歳戦である。年齢などのデータが使えず限られたものから取捨選択となるが、今回の強いデータは「前走1着」「前走1番人気」「牡馬」。さらに「未勝利勝ち」「前走が函館」もあれば文句なしだ。

これら全てを満たす都合のいい馬がいるのか?という話だが、それがいた。ウイングリュックである。1200mでデビュー(3着)し、1800mに延ばした2走目で未勝利勝ち。母コスモフォーチュンはスプリント重賞を制した馬で、全姉も短距離向き。それが中距離で楽勝するのだから、やはり競馬は走ってみないと分からないものである。ともかく、ほかに全てを満たす馬がいないとなれば、軸はこれでいいだろう。

続いて相手を探していく。今回の出走馬を見ると、ほとんどが「前走1着馬」。ただ、「前走1番人気」という馬は意外にもウイングリュックとバスラットレオンの2頭しかいない(昨年は出走馬の半分が該当)。そのバスラットレオンは3つの強いデータを全てクリア。これが相手筆頭となる。

あとは「牡馬」「未勝利勝ち」を満たすヴィゴーレ、「牡馬」「前走が函館」を満たすピンクカメハメハの2頭も押さえておきたい。残りはデータ的に似たり寄ったりだが、個人的にウインルーアとコスモアシュラに注目。ウインルーアは横山武騎手がウイングリュックではなくこちらを選択。このレースは乗り替わりより継続騎乗の方が強い傾向でもあり気になる馬だ。

コスモアシュラは馬主が岡田繁幸氏。2016年の1着馬トラスト、そして2018年の2着馬ナイママ(いずれも地方所属)の馬主である。コスモアシュラは前記2頭と違ってJRA所属だが、東京でデビューした馬を札幌に連れて来て前哨戦を使ったのも、やはり公算があってのことと推測する。

◎ウイングリュック
〇バスラットレオン
▲ヴィゴーレ
△ピンクカメハメハ
×ウインルーア
×コスモアシュラ

《ライタープロフィール》 門田 光生(かどた みつお) 競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。先に中止となった川崎競馬は代替開催が行われましたが、今週の船橋競馬は中止。今回はファンとは関係ないところでのコロナ発生とはいえ、有観客開催に傾きかけた全国の主催者側にブレーキがかかるかも。残念ですが、今は開催してなんぼ。リスクを考えると仕方がないのかもしれません。