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サクセスブロッケン・ビートブラックなどのGⅠ馬、元プロ野球選手所有馬も活躍中 華麗なる転身を遂げた誘導馬たち

2020 8/27 06:00三木俊幸
誘導馬サクセスブロッケンのイメージ画像ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

JRAの競馬場に所属している誘導馬は99頭

パドックで止まれの合図がかかってから本馬場に入場するまで、隊列の先頭と最後尾を歩く誘導馬。しかし役割はそれだけでなく、放馬してしまった馬を落ち着かせることや、観客のお出迎え、馬と触れ合うイベントなどに参加することもあり、多岐に渡っている。

現役時代とは正反対で、何事にも動じずにゆっくり歩くということを求められる誘導馬の仕事。今回は地道なリトレーニングを経て、競馬場で第二の馬生を歩んでいる誘導馬たちにスポットライトを当ててみた。

誘導馬といえば芦毛が多いというイメージが強いが、実際にはどのような割合となっているのかというデータを調べてみた。

JRAの競馬場所属の誘導馬 毛色割合ⒸSPAIA

全10場に所属している誘導馬は合計99頭(2020年8月16日現在)。その中で全体の44.4%にあたる44頭が芦毛で最も多く、イメージしていた通りの結果が見られた。次いで17頭で全体の17.2%が鹿毛、16頭で全体の16.2%が黒鹿毛という割合となっている。

競馬場別では、東京競馬場に所属している誘導馬が13頭と最も多く、函館競馬場の7頭が最も少なかった。中山競馬場では12頭中8頭にあたる66.7%、中京競馬場では10頭中6頭に当たる60.0%が芦毛と多くの割合が特に多かった。

これら誘導馬の中には、現役時代に重賞を勝利した馬が含まれており、その数は23頭。現在所属している競馬場に所縁のある馬も多い。ここからは現役時代に活躍した馬や印象に残っている馬たちを競馬場ごとに紹介していく。

誘導馬8年目にして大役に抜擢

サクセスブロッケン血統表ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

【東京競馬場】
13頭の誘導馬が所属する中で最も知名度が高いのは、2009年のフェブラリーSなどダートGⅠ3勝馬のサクセスブロッケン。無観客競馬となった今年の日本ダービーでは、誘導馬歴8年目にして初めて大役を任されて、2013年のNHKマイルCの覇者マイネルホウオウとともに先導役を務めた。

2019年から誘導馬となったタールタンは重賞勝ちこそないものの、現役時代には根岸Sで2着になるなど、東京ダートでは[3,4,3,7]と堅実な成績を残した。

誘導馬デビューして間もない頃、東京競馬場の検量室前を通ってパドックへ向かう途中、現役時代に同馬を管理していた吉村圭司調教師の姿を見かけた。向かった先は、パドック裏にある誘導馬の待機場所。

最も得意な競馬場だった東京競馬場で誘導馬として活躍する姿を見て、嬉しそうな顔をしていたのが印象的だった。当時は初心者マークをつけていたタールタンだが、その後すぐに外されるなど、誘導馬としての素質は高そうだ。

【中山競馬場】
2013年の中山記念など重賞3勝しているナカヤマナイトは、ナカヤマフェスタの帯同馬としてフランス遠征も経験している。ステイゴールド産駒らしく、気性難を抱えていた馬ではあるが、立派に誘導馬として活躍中。引き締まった馬体は今なお健在だ。

3歳時には京成杯と弥生賞を勝利、クラシック戦線でも皐月賞3着、日本ダービー4着、菊花賞5着という成績を残したマイネルチャールズは2011年から誘導馬に転身。現役時代に勝利した弥生賞など重賞レースでも先導役を務め、主力として活躍している。

2頭のニューフェイスが加わった阪神競馬場

【京都競馬場】
9頭中重賞を勝利しているのはビートブラックのみ。2012年の天皇賞・春を14番人気で制したGⅠ馬ながら種牡馬にはなれなかったが、2015年から京都巧者のステイヤーにふさわしい第二の馬生を送っている。キャッチコピーは「番長」、黒光りする青毛の馬体からはGⅠ馬の風格が漂う。

2020年に誘導馬の仲間入りを果たしたのは、リーゼントロック。現役時代は矢作芳人厩舎に所属し、50戦6勝と息の長い活躍を見せた。またプロ野球のDeNAで活躍し、現在は2軍監督を務める三浦大輔氏が所有していた馬としても知られている。

【阪神競馬場】
阪神競馬場には2020年、2頭の誘導馬が加わった。2014年のジャパンダートダービー馬のカゼノコと2017年のエプソムC優勝馬のダッシングブレイズだ。2頭とも7月の阪神開催で無事、誘導馬デビューを飾った。華麗にエスコートする姿を現地で見れる日を楽しみにしたい。

それ以外にも現役時代に話題を集めていた馬が在籍している。その名はショーグン、現役時代の最高馬体重はなんと640kgと超巨漢馬。小さすぎる牝馬として人気のメロディーレーンとは約300kgもの違いがある。ゼッケンには漢字で「将軍」と書かれており、逞しい馬体は目を見張るものがある。

写真映えするヒプノティスト

【福島競馬場】
2009年の福島記念を勝利しているサニーサンデー、2014年の目黒記念優勝馬で9歳まで現役で活躍したマイネルメダリストの2頭の重賞ウィナーが所属している。

その他では、ヒプノティストにも注目。栗毛の馬体に美しい金髪のたてがみがトレードマークで、金子真人HDの勝負服を身に纏い現役時代は3勝をあげている。晴れた日に撮影すれば写真映えすること間違いなし、覚えておいて損はないだろう。

【新潟競馬場】

ダークシャドウ

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ダークシャドウは2011年のエプソムCと毎日王冠を連勝し、天皇賞・秋でも2着に好走。その後は京都記念、札幌記念、函館記念でも2着となるなど、勝ち切れないレースが続いたが、ターフを駆け抜けた姿は今でも多くのファンの心に残っているはずだ。

オースミムーンは2013年の東京ハイジャンプなど、障害重賞6勝の活躍馬。ナリタクリスタルは2011年と2012年の新潟記念を連覇、ユールシンギングは2014年の新潟大賞典を勝利するなど、所属馬9頭中4頭が重賞勝ち馬と豪華な面々が揃っている。

【中京競馬場】
主場4場以外では最も多い10頭が所属。2013年の目黒記念勝ち馬のムスカテール、2014年の東京ハイジャンプなど重賞2勝しているサンレイデュークに加えて、2015年のファルコンSでは14番人気という低評価を覆し、波乱を演出したタガノアザガルなど、人懐っこい性格の馬たちが揃っている。

【小倉競馬場】
重賞勝利の実績があるのは、2009年の北九州記念を勝利しているサンダルフォンのみ。やや地味な印象の顔ぶれだが、2010年の天皇賞・春で3着となった経験があり、名前も小倉競馬場にふさわしいメイショウドンタクや誘導歴16年のベテラン、ミッドナイトキッスにも注目だ。

12歳まで現役だったサイモントルナーレは函館競馬場で活躍

【札幌競馬場】
マイネルスケルツィは2006年のニュージーランドTと2007年の京都金杯を勝利し、獲得賞金は2億8,000万を超えるなど、堅実に走る馬だったという印象がある。マイネルレーニアは2歳時に京王杯2歳Sを制するなど早くから活躍。父グラスワンダー譲りの栗毛の馬体が目を引く。

また2011年の新潟2歳Sで上がり32.7を使って勝利したレースが衝撃的だったモンストールが新たに仲間入り。2014年に引退してから時間は経っているが、その姿を再び競馬場で見ることができるのは嬉しい限りだ。

【函館競馬場】
7頭と少数精鋭の函館競馬場。唯一の重賞馬にして最古参のモンテクリスエスでも、誘導馬デビューは2014年と比較的新しい顔ぶれが名を連ねる。12歳まで現役を続け、78戦ものレースに出走した経験があるサイモントルナーレ、キャリア45戦のティーエスネオなど息の長い活躍をした馬も多いので、名前を聞いて懐かしいと思うファンもいるのではないだろうか。

ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在は競馬ライターとしてだけでなく、カメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場で取材活動を行っている。